The Structure of "After School Saicoro Club" #1

twitter中道裕大
一時期amazonで在庫切れだったらしいですが、再入荷したようです。
前作『月の蛇』はかなり部数が絞られていましたが、
同じ作家で、かつB6小版からB6版になって値段も上がっているためか、
あまり刷って貰えなかったんじゃないかと想像します。


掲載位置が比較的アンケートに反映されるゲッサンにおいて
(『信長』『本屋』『長井』は例外ですが)
安定して前の方に掲載されている事を考えると、人気自体は結構あるという予測は立ちます。
少なくとも同時連載の4作品の中では一番でしょう。
個人的には増刷掛かってもいい気はするんですけど、少部数の作品って意外と掛からないんですよね...


既に各サイトで取り上げられているので、リンク貼っておきます。

コミックナタリー「放課後さいころ倶楽部」中道裕大インタビュー
ボードゲーム研究室! 第83回「放課後さいころ俱楽部・中道裕大さん(前編)
ボードゲーム研究室! 第84回「放課後さいころ俱楽部・中道裕大さん(後編)
アキバblog 放課後さいころ倶楽部1巻
Table Game in the World 放課後さいころ倶楽部
Table Game in the World 『放課後さいころ倶楽部』1巻発売

あと、中道先生は月1回千葉の松戸でボードゲームのオフ会を開いているので、
興味ある方は行ってみるといいんじゃないでしょうか。



各話の批評に関してはゲッサンの記事に書いてるので、
ブログ内を『放課後さいころ倶楽部』で検索するなり、「ゲッサン」タグで絞り込むなりして頂ければ。
#1は、インタビューに関して。

やっぱり、アナログゲームが一番グッと来たからマンガでやりたくなって。編集部と話をしたんですけど、知名度がないからってあまりいい顔はされませんでした。


──あ、そうなんですか。


それでアナログゲームの連載は一旦ボツになったんですよ。じゃあ、そのホビーというカテゴリーの中で、女子高生たちがいろいろやっていくマンガはどうだろうという話をしたら、ではそのネームを作ってみてという感じになって。それが作品のスタートですね。


──じゃあ1話目のネームができたときは、特にアナログゲームをやっていくとは決まっていなかったんですか?


そうですね。だから1話目では実はゲームをしていなくて。あれはこれからいろんなホビーをやっていくよっていう1話目だったんですよ。あれ以降はアヤがとにかくいろんなものに興味を持って、何を見ても「やりたい!」ってなるという。だから毎回、新しいホビーを持ってる人と出会っては、「私もやらせて」みたいな感じで飛び込んでいって、それに引っ張られて内気なミキもやる、というふうに進んでいく予定だったんです。


──確かに1話目には、全くゲームが出てきません。


で、2話目でボードゲームをするところまではうまくいったんですが、3話目がつまらないってゲッサンの編集長にずっとダメ出しをされて。


──じゃあ3話目は、もともとアナログゲームの話ではなかったと。


そうなんです。だから3話目は、本当にいろいろやりました。それこそ壁を登ったり、茶道をやったり、ただ単にカラオケに行こうっていうのもあったんですが全部ダメで。それで編集長から、「君はアナログゲームが好きなんだから、それ1本でいけばいいんじゃないか」って言われて。こっちもそれが一番やりたいことだったから、願ったり叶ったりでありがたかったです(笑)。
コミックナタリー「放課後さいころ倶楽部」中道裕大インタビュー

この中に、納得する点、納得した点、がっかりした点の3つがありました。


納得する点は、もちろん「知名度がないからってあまりいい顔はされませんでした」という点。

正直マイナーなジャンルなので、アンケートは心配ですがw

私も連載始まる前の記事で、こう危惧してましたし。
で、ここからがっかりしたって所に繋がるのですが。

以前ゲッサン編集長は、作家が一番好きなものを描かないと、
面白い漫画は生まれないという哲学を語ってくれました。
その意見には個人的には全面的に賛成です。
作家が好きなものを作らずに、何を作るのか。何が作れるのか。


ならば、変わりゆく興味の対象のなかで、今何が一番自分の中で面白いと感じるのか、
きちんと見極める必要がありました。
去年一年描くことから離れて、自分の興味を持ったことを思いつく端からやってみて、
今回の連載企画が生まれました。
webゲッサン 中道裕大先生より 第1回

連載スタートした時のゲッサンHPにこのような文章が載っていて、さすがゲッサンだなーと感心していたんですが、
3話目(恐らく4-5話目のこと)が上手くいかなくなって初めて
編集長からアナログゲーム一本で行こうという話になったと。
編集部というのが前担当のM上さんのことを指すのかどうか分かりませんが、
地味だからそれを避けようとしてたってのは正直ガッカリでした。
今でも表紙に「漫画力絶対主義!!」と小さくですが書いてあるのは何なのかと。
ジャンルが地味なら、それをどう派手にするか、もしくは地味でも売れる漫画をどう作っていくか
考えるのが編集者の役割だと思うんですけどね。
もちろん、派手なジャンルにシフトするってのも一つの方法ではありますし、
結果論としてはアナログゲーム一本になったから良かったとは言えますが。


で、納得したのはアナログゲーム漫画の筈なのにゲームが一切出てこなくて何じゃコレ?
感のあった第一話。こういう裏事情があったんですね。
個人的にはあまり面白い回という訳ではありませんでしたが、
アナログゲームに全く興味の無い人間を引き込むには、悪くない回だったとは思います。怪我の功名?


で、意外だったのは

中道   ぶっちゃけ今までやった中で、その回(8-9話)が(アンケート)一番良かったんです。
3人   へー
中道   一番反応が良かった回で。ただ、個人的には一番心配な回でもあったんです。
カワサキあっ、分析のシーンとかが載ってるからでしょ?
中道   分析のシーンもさることながら、初めて委員長がメイン張るっていう。
       俺の中でミキとアヤは女の子らしい華のある子やけど、
       ミドリ独りで頑張れる?みたいな部分はあった訳なんですけども。
       蓋を開けてみたらその回がアンケートは一番良いって言う。
第84回「放課後さいころ俱楽部・中道裕大さん(後編) 8:12〜8:52

放課後さいころ倶楽部ゲッサン2013年8月号 p98 (1巻 p160) 中道裕大

個人的にはもちろん8-9話は今までで一番面白かった回でしたが、
カワサキさん同様、ロジックが出てるからアンケート的にはちょっと下がるかもなぁと思ってました。

私はこういうロジックが大好物ですが、
数学苦手な人にとっては見たくもないシーンでしょうし。
まぁ、こういうロジカルな回は1巻に1話くらいが妥当だとは思いますけどね。

だからこそ、8-9話の記事でこう書いたんですが。
ただまぁ何がウケたのかは分かりませんけども。
中道先生はミドリのキャラ人気に不安があったように、私はロジックが敬遠されるかもと思ってましたが、
どちらか、もしくは両方の懸念が払拭されたと思うのは危険かもしれません。
この回は色んな要素が加味されつつ、相互補完的になっていましたから。
放課後さいころ倶楽部ゲッサン2013年8月号 p110 (1巻 p172) 中道裕大

最後のエピソードも良かったですし、
カワサキさんが熱弁していた、アレックス・ランドルフのエピソードも素晴らしかったですしね。
この辺りは連載を通じて探っていく必要はあるでしょうね。
とは言え、メインキャラ3人は外せないですし、ロジックもたまーには必要にはなりますけど。


ということで、本題である漫画自体の批評は#2以降に。
この漫画の良さはいくつかありますが
1) キャラがメイン
2) 「楽しい」の演出
3) 駆け引きの面白さ
個人的にはこの3点かなぁと思ってます。
特に1) 3) は前作『月の蛇』で課題がクリア出来てなかった点なので、
作者が成長した、もしくは扱ったジャンルが合ってるのかなぁと。


The Structure of "Afterschool Dice Club" #2 に続きます。