おもにおっと。 (読切)

★★★★★
ちと甘めですが。
去年月刊スピリッツに掲載された『おもにおっと』の続編。
...なんですが、何故か山崎先生が原作に回り、作画が岡村アユム先生に。

まずは絵。料理は別格にせよ、その他の背景も山崎先生らしくきっちりしているのですが、
キャラ絵はまだこなれた感じがない印象を受けます。
おもにおっと

以前の読切ではこう書いたんですが、
『おもにおっと』 月刊スピリッツ 2014年12月号 p563 山崎智

『おもにおっと。』 月刊スピリッツ2015年12月号 p589 原作:山崎智史 作画:岡村アユム

うーん、正直こなれた感が無いという点では大差無いような気が...
個人的には山崎先生の方が上手いように見えますし。
何か別の事情でもあるんでしょうか?


『おもにおっと。』 月刊スピリッツ2015年12月号 p596 原作:山崎智史 作画:岡村アユム

内容的には独り言から小芝居に変わってさらに良くなっていると思います。
まぁ個人的な好みにより近くなっただけかもしれませんけどもw


ただ、『だがしかし』『お酒は夫婦になってから』『味噌汁にカンパイ!』辺りと比べちゃうと
明らかに劣るのも事実で。

 そして消費者視点だと、選択肢が増えれば一作品あたりに選別する時間は反比例で減ります。その結果、キャラの魅力を感じる前にキャラの記号で、ストーリーの魅力を感じる前に設定やシチュエーションでふるい分ける。この傾向が顕著なのがエロ漫画で、一部の人気作家以外ほぼ読切なのは昔からですが、エロシーンをより早く出す傾向にありますし、1ページ目にヒロインが登場しない作品はほぼありません。
(中略)
 現在サンデー唯一の希望といえる『だがしかし』は時代に適応した作品と言えるでしょう。インパクトのあるキャラ、ポーズ、シチュエーション等、「画像ひとつで良さが伝わる」ことはネットでの拡散にも好影響をもたらします。
『サンデーラブコメを語る本』 p14-15 GRGR

この切り口で漫画を読み直すと、キャラ描写が正直物足らないんですよね。
もちろん少年誌と青年誌では事情が異なるかもしれませんが、
お酒は夫婦になってから』が1週間も経たずに重版決定した辺りからして、
それほど大差は無いとは思ってます。
お酒は夫婦になってから』 第1話 p6 (1巻p8) クリスタルな洋介

画像ひとつでその作品やキャラの魅力が伝わる。
記号化されたキャラならそこまで拘る必要無いのかもしれませんが、
(ちーちゃんは「ツンデレ」の記号はあります)
こういった場面が作れる内容なのにも関わらず、あまり効果的じゃないんですよねぇ。


『おもにおっと。』 月刊スピリッツ2015年12月号 p600 原作:山崎智史 作画:岡村アユム

1話目だとこのシーンって事になるんでしょうけど、
『味噌汁にカンパイ!』 ゲッサン2015年7月号 p501 笹乃さい

『味噌汁にカンパイ!』のこのシーンと比べると、キャラの魅力を引き出せているか?
と考えるなら微妙でしょう。
より嫁さんの視点に近い方が臨場感が出るでしょうし、
その後の寝言つぶやくシーンも例えば頬をつっつくとか、
何かしらの仕草を入れる余地はあるでしょう。
その前のシーンも、嫁さんが仕事で疲れたことを描写していれば、
よりこのシーンで安らぎが伝わったと思います。
個人的には寝顔を見せるよりは、真剣に料理をしているシーンにして、
手さばきなどでダンナの格好良さを引き出した方が、読者へのフックになったと考えます。
「職場ではイロイロ言われたけど、家に帰ったら格好いいダンナさんが待っている。
 こんなに萌えることはない」
ってのがこの漫画の女性読者に対する最大のアピールポイントだと思うんですけども。


そもそも、2話でダンナがキリリとしてるシーンって、
『おもにおっと。』 月刊スピリッツ2015年12月号 p600 原作:山崎智史 作画:岡村アユム

1.2話目共に一コマしか無いんですよね。正直勿体無い。


あと、2話目に関して。
『おもにおっと。』 月刊スピリッツ2015年12月号 p601 原作:山崎智史 作画:岡村アユム

例えば買い物行くのはストレス解消の為だとして、実はダンナの方がストレスが溜まっていた。
ヨメはそれに気づいてたのでダンナを連れ出していた、といったシナリオなら、
ひとつほっこりする場面が作れたと思います。
前の読切でも指摘しましたが、夫婦が上手く行ってる様を描くなら、
相性の良さを描くのがベストでしょう。その辺りの気配りが足らないように思います。


何にせよ、コメディ部分は前作同様に連載取れるポテンシャルがあると感じているので、後は
キャラの魅力をどう引き出すか。
それを1枚の絵でどう表現するか。
課題はここだと思います。