(週刊少年サンデー)編集長のあいさつ #1

このブログは2009年4月1日からスタートし、
全ての作品ではないとは言えゲッサン創刊号から批評を書き続けているので、
この話題に触れない訳にはいかないでしょう。


というかですね。正直市原さんがサンデーの編集長になったと知った時は
機動警察パトレイバー』 8巻 p186 ゆうきまさみ

こういう心境でしたねw


週刊少年サンデー2015年38号 p497

読者の皆様へ


 いつも少年サンデーを応援していただきありがとうございます。このたび7年ぶりに僕の故郷
である週刊少年サンデーに帰って参りました。そのご挨拶とこれからの少年サンデーの大方針
を読者の皆様にお伝えするためにこのページを割いてもらいました。
 週刊少年サンデーは今後、生え抜きの新人作家さんの育成を絶対的な使命とします。この方
針に反対する行動をとる編集部員は容赦なく少年サンデー編集部から去ってもらいます。「新人作
家」さんとは、一度しかない人生で自らの才能を信じて漫画という正解のない大海原に徒手
拳で挑もうとするとんでもない勇者です。その伴走者たるべき漫画編集者にもとてつもなく強い
責任と覚悟が求められます。その任に耐えられないと僕が判断した編集者はこれからの「チー
ム・サンデー」には必要ありません。そして今年7月の大きなチーム改編で僕の元に集まってくれ
た新生・少年サンデー編集部員は全員、その覚悟を持っているメンバーたちだと信じています。
 その一方で、僕が考える理想の少年サンデーは新人作家さんだけで作れるわけではありま
せん。少年サンデーの歴史を力強く支えてくださった中堅・ベテラン作家さんの力もまた絶
対に必要です。伝統と革新の絶妙なバランスこそが雑誌の「雑」の部分を魅力的に形成する原
動力だと僕は確信しています。
 今秋以降、少年サンデー本誌もサンデー超増刊号も大改革が始まります。多くの連載作品が
誌面を去り、代わりに才能溢れる新人・若手作家さんが次々と誌面を賑わすことになります。半
年後にはさらに改革の速度を上げていきます。読者の皆様におかれましては是非、少年サンデ
ー再建の目撃者になってください。
 この改革の中枢として、新人賞の一次選考・新人作家さんのデビュー読切から大ベテラン作
家さんの新連載企画にいたるまで少年サンデーの「漫画」に関わるすべての意思決定は編集長
である僕がただ一人で行います。僕の独断と偏見と美意識がすべてです。当然これは、今後の
少年サンデーの運命の責任は僕一人が背負うという覚悟の表明でもあります。
 僕は少年時代から生粋のサンデーっ子でした。ジャンプっ子だったこともマガジンっ子だった
ことも一度たりともありません。小学生、中学生、高校生時代、あれほど僕を支えてくれた「週刊
少年サンデー」。今こそ僕は漫画編集者人生のすべてをかけて少年サンデーに恩返ししなけれ
ばなりません。それはまた同時に、少年サンデーの歴史を築いてきた多くの偉大な漫画家さんた
ちといつの時代も少年サンデーを愛してくださる読者の皆さんへの恩返しでもあります。皆様に
おかれましては是非「サンデーっ子仲間」として、これから始まる僕の恩返しの行方にご期待い
ただければ幸いです。


                                     週刊少年サンデー編集長  市原武法


                    新井利幸 村上正直 鈴木  翼 荻野克展 袖崎友和 横山真義
                    板谷真人 和田裕樹 瓜生昭成 大嶋一範 前田一聖 石渡 誠
                    萩原啓佑 杉田千種 塩谷文隆 小倉功雅 山田大樹 安達佑斗
                    町田尚太 原  俊介 森脇健人 吉田有里

「今秋」のルビが「こんあき」になっていたり、
「僕の下」(または「僕の許」)となるべき所が「僕の元」になっているのはご愛嬌。


最近巷の話題になっているこの声明文、
確かに週刊少年サンデーの編集長が声明を出すことは異例中の異例ですが、
世界で5本の指に入る市原ウォッチャー(自称)としては何の不思議もありません。
(少なくとも市原さんに「サイン下さい」なんて言ったのは私以外に2人しかいないはずだw)
何せ、ゲッサン創刊号にも市原さんの声明文が載ってたんですから。


市原さんの経緯等を書いてたのですが、えらい長くなったので後回しにするとして、
今回の声明文の要点としてはこんな所でしょうか。

新人作家の育成に重点を置く
編集者もそれに倣う(反対する人は追放する)
中堅やベテランを駆逐する訳ではない
読者は今後に期待して欲しい

この辺りも市原さんがゲッサンでやってきた事とほぼ同じなので、市原ウォッチャーとしては
特に目新しくもないのですが、
個人的に注目したのは、2013年の編集部と較べると今回の異動で様変わりしている点です。

in
村上正直 スピリッツ副編集長→週刊少年サンデー副編集長
荻野克展 スピリッツ→週刊少年サンデー(デスク?)
大嶋一範 杉田千種 安達佑斗 原俊介 森脇健人 吉田有里


残留
副編集長 新井利幸
デスク 鈴木翼 板谷真人 袖崎友和 和田裕樹
瓜生昭成 横山真義 前田一聖 石渡誠 萩原啓佑 塩谷文隆 小倉功雅 山田大樹 町田尚太


out
鳥光祐 編集長→ゲッサン編集長
則松 副編集長→サンデーGX(?)
坪内崇 副編集長→スピリッツ編集長代理
冠茂 デスク→スピリッツ
out(裏サンデー?)
石橋 梅原 五十嵐 小林翔 鈴木稔
out(異動先不明)
副編集長 熊谷
デスク 近藤 武藤 和田
飯塚

鳥光さんは実質降格。
副編集長4人のうち、1人を除いて異動。さらには4人体制から2人体制に。
このうち坪内さんはこちらも発行部数が減少しているスピリッツへの異動、
さらには編集長代理への昇格なので、恐らくスピリッツの再建を任されたのだと思います。
則松さんは若木先生のインタビューでは「GXの編集長になる予定」という話だったのですが、
8/19日発売のサンデーGXでは編集長が石川さんのままだったので、
恐らく編集長代理か副編集長だと思われます。
本当にGXへ異動したかは確認できてませんが、担当していた『今際の国のアリス』のスピンオフ作品
『今際の路のアリス』がGXで新連載になったので、恐らく間違いないでしょう。
裏サンデー週刊少年サンデーから切り離したと見ていいのでしょうか?
そして、今まで裏サンデーの編集者は週刊少年サンデーとの兼任でしたが、
裏サンデー専属になったと見ていいのでしょうか?


サンデー編集部へ異動した編集者さんのうち、
村上さんはゲッサン創刊時にゲッサン副編集長だった、言わば市原さんの懐刀。
2013年にスピリッツへ異動になってましたが、呼び戻される形に。
荻野さんはかつてヤングサンデーで『アオイホノオ』『おやすみブンブン』等
スピリッツでは『DRAGON JAM』『アリエネ』を立ち上げたり、
佐藤秀峰先生の短編集で名前が上がっているように、かなり有能な編集者さんのようです。


といったように、割と本気で市原さんに託したような人事になっているのではないでしょうか。
というか、編集長が声明文を出すよりもよっぽど異例の人事です。
市原さん自身のサンデー改革の意気込み以前に、上層部が本気でヤマ師に賭けた気概が感じられます。


ちなみに前田(M田)さんはスピリッツで『このSを、見よ!』『うきわ』
等を立ち上げていたようですが、恐らく2014年にサンデーへと異動されたようです。
『姉ログ』担当してますし。


また、ナタリーの記事も注目です。
週刊少年サンデー特集、新編集長・市原武法インタビュー

──市原さんが編集長になったことで、編集の方針としてどういったところに変化が生まれるのでしょうか。


改革の中枢として、新人作家さんの読み切りのネームから連載企画のネームまで、全部僕1人でOKかボツかを決定することにしました。普通マンガ雑誌の編集部には月例賞に送られてきた作品を読む班があって、一次選定もその班が行うんですが、それも全部やめまして。月例賞の選定も含めて、マンガに関わるすべての決定は僕1人だけでやります。


──おお。


今も作家さんたちへの挨拶に回っているところなんですが、「サンデーはどういう基準でマンガを選んでいるのかわからない」という声をよく聞くんです。なので「今後は僕の独断と偏見と美意識で決めます」ということを明確に伝えています。「これからのサンデーの運命に関しては、どんなことが起きようとすべて僕の責任です」と。つまらなくなった場合にも、それは全部僕のせいです、と。


──それって勇気のいる判断だと思うんですが、プレッシャーは感じないんですか?


感じないですね。


──編集長として葛藤したりとか。


葛藤なんて何もないです。つらいとか悲しいなんて気持ちも一切ない。楽しいですよ、毎日。まあ、睡眠時間は厳しいですが(笑)。


──(笑)。実際問題、週刊マンガ誌のすべての企画を1人で目を通すというのは、物理的に可能なんですか?


可能です。それしかやらなければいいんです。なので本来編集長がやるべきさまざまな業務は、心強い味方である副編集長2人に任せています。

以前、2015年7月19日『爆笑問題の日曜サンデー』での発言を聞いて



GRGR 「ウチはもう新人のデビュー読切から、ホントに大物の作家さんの新連載の企画まで、全て僕が独りで決めることに月曜日に決めました。僕独りの美意識で全部決めてやろうと思いました。」おお独裁だ。正直感心はしないけど、再建を任されたからにはこのくらい責任を背負わないとなのかもな。 link
こうつぶやいたのですが、独裁とは全ての決定権をリーダー一人に集約させることです。 今の日本では強いリーダーシップと独裁を混同したり、あえて混同して批判する傾向があるので、 独裁的というイメージが広がることは強いリーダーシップを期待できると思われる面もあるかも知れませんが、 市原さんの場合は誌面に掲載する決定権のみに集中し、 他の権限は副編集長に渡すという、ある意味独裁とは正反対の立場だと言えるのではないでしょうか。 特に雑誌の顔でもある表紙の選定は編集長がやる事が多いと聞いたことがありますが、 市原さん的にはそんなステータスなんぞ要らねーって事なんでしょうw じゃぁ市原さんは何をやりたいのか。

──それでは作家との打ち合わせの段階から、市原さんも関わっているんでしょうか。


ええ、僕はどんなところでも介入します。1人できちんとした打ち合わせをして、きちんと企画したマンガを僕のところに届けられる編集者はうちの編集部にはまだ少ないので、もっと鍛えなきゃいけないと思っていて。なので、打ち合わせだろうが飲み会だろうが、作家さんとのコミュニケーションは自ら取ると決めています。


──作家の数も膨大だと思います。


300人ぐらいですかね。新人さんも含めて、今のサンデーに向けてバリバリやっていただいてる作家さんの数は。その方々のネームや原稿はすべて読ませていただいたので、自分の中にはその300人の戦略図は完全にできあがっています。僕が才能を信じている人たちは無理やりにでも抜擢する、そういうシステムにしようかなと思っていますね。


──大勢の作家と打ち合わせをするというのは、時間も体力も相当消費するのではないのでしょうか。


マンガ家さんと打ち合わせをする時間っていうのは僕にとって快楽なので、それに関してはなんのストレスもないです。サンデーの編集長になってやるべきことというのも明確に持っていましたし。方針については編集部に異動してみて現場を見てから考えようと思っていた部分もありましたが、実際何ひとつ僕の考えていたこととズレがなかったので、あとは実行に移すだけだった。なので就任から1週間くらいで結構な本数の打ち切りを決めました。今は毎日打ち切りを宣告しているような状態です。

「マンガ家さんと打ち合わせをする時間っていうのは僕にとって快楽なので、それに関してはなんのストレスもないです。」
ここで顕著に表れています。
個人的には今回の市原さんの行動が独裁的ではないと分かったので多少和らいだものの、
今までの編集長と仕事内容をガラリと変える事自体は正直感心はしません。
市原さんが編集長であり続けるなら話は別ですが、そういう訳にもいきませんから。
ただ、そうせざるを得ない事情があるのは理解できましたし、支持もします。

1人できちんとした打ち合わせをして、きちんと企画したマンガを僕のところに届けられる編集者はうちの編集部にはまだ少ないので、もっと鍛えなきゃいけないと思っていて。

編集者がきちんと企画を上げられるのにも関わらず、読切や連載決定の権限を独裁的に決めるのは
問題だと考えています。
ただ、編集者の力量が足らないなら話は別で。
作家と同時に編集者も育てる。実際にゲッサンでも新人編集者を3人育ててましたし。
結局のところ、現場に力が足りないからこそ独裁的に行くしかないって事なんでしょう。
そして、市原さんのやりたい事ってのは、上からあれこれ指示するのではなく、
現場で指揮を執ることなのでしょう。
...ますます独裁とはイメージがかけ離れていくんですがw