放課後さいころ倶楽部 #19-20

今回は19+17=36p。
放課後さいころ倶楽部ゲッサン2014年3月号 p204 中道裕大

小悪魔ロリっ娘が登場。
個人的には嫌いなタイプのキャラではあるのですが、
こういうキャラもいるというのは、とてもとても大切なことだと思います。

前も書きましたが、個人的は綺麗系が一人欲しいなぁ。ロリ系もいるといいとも思います。
ゲッサン201305

マラケシュ』の回 (2-3話) で既にこういう事を書いていたので、
嫌なキャラが出てきたなーというよりは、ようやく出てきたかという感じ。
やっぱ記号の強いキャラってのは必要だと思うですよ。


そのレンですが、いいキャラしてますね (苦笑)
まずは表情が豊かなところがキャラにマッチしてます。アヤ以上にコロコロ変わりますね。
それ以上に面白いなーと感じたのは、
放課後さいころ倶楽部ゲッサン2014年3月号 p211 中道裕大

ミドリは自分と同じ望みを当然持っていると考えていたり、
放課後さいころ倶楽部ゲッサン2014年3月号 p219 中道裕大

レンのミドリに対する評価はともかく、「やっぱ私の後を継ぐのは」というセリフが端的に示してるように、
次の会長は自分で決まりだと確信していたり、
毅然とした態度や冷静な判断力を自分も持ってると思い込んでる辺りが。
『ちろり』 ゲッサン2014年2月号 p566 小山愛子

先月の『ちろり』に自分では大人だと思っていても周りから子供だと思われてる事に苛立っている
少年が出ていましたが、アレの女の子バージョンというか。


で、ココが面白いと思う読者がどれだけいるかは分かりませんが、
個人的にはレンとミドリの見方のギャップがかなり面白かったです。
放課後さいころ倶楽部ゲッサン2014年3月号 p219 中道裕大

レンとしては親切心で会長に推したのでしょうが、ミドリは望んでではなく渋々引き受けていたり、
放課後さいころ倶楽部ゲッサン2014年3月号 p238 中道裕大

ミドリはレンのカリスマ性は認めても、自分と似た人間だとはこれっぽっちも思っていなかったり。
こういうキャラ描写がしっかりしてる辺りはさすがです。
『ころクラ』はボードゲームの漫画ではあるのですが、一番重要なのはキャラだと改めて思いました。
いかにボードゲームに引きこむか?ということ考えれば、
キャラのファンになってもらい、読んでるうちにボードゲームにも興味が出てくる...
という風に、キャラ萌え自体が撒き餌になると思うんですよね。
撒き餌に吸い寄せられた読者が出てきた後には、かえしの付いた釣り針が必要になってくるので、
その辺りはいずれ書ければなぁと。
このブログで言うところの「関係の履歴」の話なので、別の記事で言及はしてるのですが。


個人的に1話完結だけではなく、そろそろ2〜3ヶ月で1つの話を作って欲しいと思ってたんですが、
話自体は1話完結でゲーム1作品を取り上げるという形態は変わってないものの、
ストーリー的には次に繋がるような内容だったのはちょっと嬉しかったです。

『ガイスター』は正に「昇華するような案」と言えるでしょう。
「昇華するような案」は対立する意見から導き出そうとすると簡単に見つかりませんが、
実は抜け道があります。
『ガイスター』のように、二つの要素を併せ持つものを要素に分解して、
その要素同士で対立させるのです。
元々一つに纏まったものを二つに分けてる訳ですから、元に戻せば昇華する形になります。
対立する時には「違い」に注目し、妥協・昇華する時には「同じ」に注目する。
(今回のシナリオはそういう展開ではありませんが)
哲学にしろ何にしろ、こういう構造はいくらでも存在するので、上手く組み込めば
より達成感のあるシナリオを作ることが出来るんではないかと。
ゲッサン201310

以前の『ガイスター』回はゲーム自体が「昇華するような案」でしたが、
今回はシナリオ展開で昇華する案を出していく為の伏線と言っていい回でした。
...正直なところ、上に引用したカラーページを見た瞬間にその後の展開が見えたんですが、
上手いことミスリードさせてるなぁと感心しました。
あえて情報の差を作って対立する構造に持っていく...
このブログで言うところの「キャラへのミスディレクション」でストーリー展開するなんて事は、
少なくとも『月の蛇』では読んだ記憶がありませんし、
『ころクラ』でもストーリー展開は割とストレートだったので、
作品の質が上がってきたのかな?という気がしました。
まぁ作品の質が上がれば面白くなる、とは限らないところが漫画の難しい所なんですけどもw


今回のゲームは『ニムト』

Amigo ニムト

Amigo ニムト

以前 中道裕大先生トークライブ&ボードゲーム会でも取り上げましたが、
その時の中道先生のサイン色紙争奪戦で使われたゲームであり、
個人的にも一番最初に遊んだ思い入れのあるゲームです。
『UNO』を除けば、カードタイプのアナログゲームで最もポピュラーな作品ではないでしょうか。
作者はヴォルフガング・クラマー。
サカオタ的にはクラマーと言えば「日本サッカーの父」デットマール・クラマーですが、
放課後さいころ倶楽部ゲッサン2014年3月号 p221 中道裕大

ボードゲーム界のクラマーも似たような存在。しかも日本限定ではなく世界的な。
代表作は書ききれないくらい沢山あります。
個人的には『エルグランテ』を一回やってみたいなぁと。
京大SLG研で横でやってるのを見て、「やってみたい」と言ったら
「初プレイだと2時間くらい掛かるから辞めといた方がいいよ」と言われた苦い記憶が。
そう言えばあの人たち、『ニムト』やった後に『エルグランテ』やろうと言ってたのは、
ひょっとして作者繋がりだったんでしょうかねw


話が『ニムト』から逸れたついでに、今回一番感動したシーン。
放課後さいころ倶楽部ゲッサン2014年3月号 p233-234 中道裕大

ゲームは国境や世代を超えて、人々をつなぐ橋である。

コレですよコレ。

今はまだ蜘蛛の巣の縦糸を張る段階ですが、
キャラがある程度増えていけば、横糸を張って網にしていく段階へと入っていけると思います。
キャラとキャラとが点から線に、線から面に...
人と人との関係性を築きあげ、その延長上でコミュニティを築いてゆく...
ボードゲーム業界に必要なのはこの「結束型」から「橋渡し型」への転換ですが、
放課後さいころ倶楽部』でもその辺りを描ければ、より面白い作品になると思います。
The Structure of "After School Saicoro Club" #3

以前『ころクラ』の記事で、これからの展望に関して期待を込めてこう書きましたが、
正にそんな内容。正直コレを読んだ時には胸が熱くなりました。


で、こういう話を見たら「本当に言ったんかいな」と疑ってかかるのが私の癖でw
試しに「kramer Brucke(=uはウムラウト付き、ドイツ語で「橋」)」
などで1時間ほど掛けて色々検索してみてもhitせず。
ネット上ではソース無いのかなぁと諦めていたら...

ナオエ :『ニムト』の作者と言えばクラマーなんですけども。
     以前、中道さんにお世話になったお礼にと思いまして、
     僕あのー「自分に出来る事は何やろう?」と思って、前々からちょっとたまにやってた
     「クラマーのインタビュー記事翻訳プロジェクト」ってのをやってたんですね個人的に。
ヨシダ :そんなのしてたんやw
ナオエ :で、そこで翻訳したものを、ぜひ「クラマーってこういう人なんですよ」
      というのを知っていただきたく、中道さんにこう、送りつけたんですよ。
(笑い)
中道  :ホントね、すごい貴重な記事を本当に有難うございました。
ヨシダ :それはもう、ナオエさんから一方的にですか?
中道  :そうです。メールで頂いて。(笑い声)「要りますか?」みたいな感じでしたよね。
カワサキ話聞いた時に吃驚しましたよ。ナオエさん何で急にアグレッシブになってんの?と。
ヨシダ :送りつけたという表現がぴったりですねw
中道  :でも「是非お願いします」という事で、送っていただいて。
ナオエ :で、最新話の中ですね、恐らく僕の送ったものを見て頂いて、
      描いて頂けたなと感じれるものがありまして。僕はもう……
カワサキそれはナオエさんの勘違いじゃないですか?
(笑い)
中道  :いやアレはねもう、だからナオエ訳ですよ。クラマー。
カワサキえ、ホントにそうなんですか?
中道  :いやマジでね、結構マンマで。マンマ載せさせて頂きました。
ボードゲーム研究室! 第98回「放課後さいころ倶楽部?巻・中道裕大さん(後編)」 39:44〜41:11

ボードゲーム研究室!』でこんな情報が。
思わずフォローしてないのにも関わらず、イキナリtwitter上でナオエさんに「訳下さい」と頼んだところ、


naoe @GRGR_ 出典はOpinionatedGamersというサイトのインタビューシリーズですね。訳は読み返すとやはり恥ずかしいのでご勘弁ください(^◇^;) link
こういうお答えが。おかげでソースを見つける事が出来ました。 ナオエさん、本当にありがとうございました! この話自体もいい話だなぁと感動。 今号のゲッサンの記事や、The Structure of "After School Saicoro Club" #3互酬性について触れましたが、「自分に出来る事は何やろう?」と思う辺りは、 正に互酬性です。 話はさらにズレますが、そろそろ『ボードゲーム研究室!』に対して、 「敷居が高い」の誤用を誰か突っ込んでもいい頃だと思いましたw 恐らく「ハードルが高い」という事を言いたいんでしょうけども... 半分だけ話を戻して。クラマーがインタビューではどう答えていたのか。

WK: I think games are important for human beings. Playing games is older than writing and reading. Playing belongs to our life as sleeping, eating, drinking, working and praying. I will bring new good games to the people and I try to make playing games more popular. Games are bridges which bring people together over nations and generations. Each game is a little own world and helps kids to learn a lot about our social life and helps to understand better the real life.


These are enough reasons to invent games, but the true reason is that I have to invent games; I am compelled to invent games.
The Art of Design: Interviews to game designers #7 – Wolfgang Kramer

Games are bridges which bring people together over nations and generations.
確かにこう言ってます。nations 自体は国々という意味ですが、over nations and generationsを、
「国境や世代をも超えて」と訳してるのはなるほどなぁと。
何気に「ゲームは本よりもずっと古い歴史を持っています。」というセリフも、
Playing games is older than writing and reading.
と被りますし、
「ゲームが人類の営みからは切り離すことのできない、とても大切なものだと考えているんです」も、
Playing belongs to our life as sleeping, eating, drinking, working and praying.
が元ネタだと思われます。
いやー本当にクラマーこんな素晴らしい事言ってたんやー感動するわーで
終われば綺麗だったんですけど、
最後の一行を見て思わず「おいおい」と突っ込んでしまいました。


These are enough reasons to invent games, but the true reason is that I have to invent games;
I am compelled to invent games.
英語が得意ではない私がテキトーに訳すと、

「これらはゲームを創作するには十分な理由だ。でも私がゲームを創作せざるを得ない本当の理由はこれだ。
私はゲーム創作に取り憑かれている。」

要するに、オチに繋げるため、その前に格好つけた事言ってみたという感じでしょうかw


それはともかく、『ニムト』は鉄板ですわ。
基本的にはカウンティングと確率計算が必須のゲームだと思ってるのですが、
放課後さいころ倶楽部ゲッサン2014年3月号 p231 中道裕大

絶対安全とまでは言わなくとも、確率が低いと思ってるカードでドボンするのが
『ニムト』の醍醐味だと言えるでしょう。
少しでも慣れればレンのような状態で49は出さないでしょうが、
放課後さいころ倶楽部ゲッサン2014年3月号 p232 中道裕大

例えばこのシーン。
既に出たカードは場にある7,9,11,17,19,29,30,49,55,66,71,73,91の13枚と、
回収された48,23,24,27,32,35の6枚を足して19枚です。ええ、19枚なんです。
4ターンが終了したので、手札は6枚。
なので、どこにあるか分からないカードは104-19-6=79枚、
他の3人のプレイヤーが持ってるカードは6*3=18枚となります。



ここで、仮にレンが36を持ってたとします。

※注: ココ読み飛ばして貰って構いません。
30より大きく、36より少ないカードのうち、まだ場に出てないカードは31,33,34の3枚。
レンがこれらのカードを持ってないとすると、
31を3人のうち誰かが持ってる確率は18/79≒0.228。
3枚とも誰かが持ってる確率は18*17*16/79*78*77≒0.010
2枚持ってる場合は18*17*3/79*78-0.010≒0.139となります。
2枚持たれてる場合でも、同じ人が2枚持ってる確率が大体1/3あるので、
31.33.34を他の3人のうち2人が持ってる確率は0.139*2/3=0.093程度、
3枚の場合は1人が3枚持ってる場合、1人が2枚の場合、3人とも1枚の場合で計算するのは
面倒なのでしませんが、
36を出してドボンするカードを他の3人が持ってる確率でさえ10%程度しかない...
という計算にはなります。
ましてや、次のターンに2人が同時に該当するカードを出すとも限りませんし。
単純な確率で言えば、2人が該当するカードを共に出す確率は1/6*1/6=1/36≒2.8%です。

要するに、ドボンする可能性のあるカードを持たれてる確率が10%程度、
次のターンにそれらのカードを出される確率は単純計算だと3%弱。
相手がランダムに手札を捌いていたとすれば、36を出してドボンする確率はたったの0.3%...
1000回やって3回ある程度の確率です。


でもゲームではそれが起こりうる
もちろん相手がランダムに手札を捌いていないって事もありますが。
計算上は90%安心だと思ってるカードでドボンするってのは結構ショッキングですw
このゲーム、厳密に計算は出来なくても、ある程度どのくらいの確率かを把握していると、
ゲーム自体を有利に進められますし、
何より確率が低いと思ってた時にドボンした時のショックがより一層感じられると思います。


で、先ほど19枚と念を押しましたが、
プレイ開始時に4枚カードが並んであって、
4人でプレイしているので、1ターン毎に4枚場にカードが並ぶ訳ですから、
場のカードと引き取ったカードを足すと4の倍数にならないとオカシイ訳です。
1枚どこいったw
放課後さいころ倶楽部ゲッサン2014年3月号 p228 中道裕大

まぁこの段階で場に11枚なのがオカシイんですけどねw


個人的にはレンがこのゲームに対して「怖い」としか思わせてないのが若干不満ですが、
その辺りは後で「あのスリルをもう一度味わいたい」的な演出がされるものだと勝手に思ってますw