ゲッサンmini 6 (ゲッサン201403別冊付録)

ゲッサンmini 6 (ゲッサン2014年3月号別冊付録) p1

そこそこ可愛らしくそこそこ見栄えのする美里あずさ先生の表紙。
そこそこ良いです。一応裏表紙に繋がってます。


からかい上手の高木さん
相変わらず安定の面白さ。
最近は『ふだつきのキョーコちゃん』もかなり面白くなって来てはいますが、
それでもまだ個人的には『高木さん』の方が面白いというか、本誌の作品含めてもベスト3に入る感じ。


からかい上手の高木さんゲッサンmini 6 (ゲッサン20143年3月号別冊付録) p9 山本崇一朗

一般的に見ると最大のウリはキャラ萌え...
高木さんの仕草・表情に加えてシチュエーションだと思いますが、
高木さんが絶対見せない表情を、想像で補ってる辺りはいいですね。
個人的には最後に『歩いて下校』のキャラが再び登場したのも嬉しかったです。


で、面白さは相変わらずでしたが、
個人的にはクオリティに関しては今までで一番素晴らしかったんじゃないかと思っています。
ドコが素晴らしかったか言うと、このシーンという事になるのですが...
からかい上手の高木さんゲッサンmini 6 (ゲッサン20143年3月号別冊付録) p15 山本崇一朗

私の見方が正しいという保証はどこにもありませんが、
同じような事を考えた人ってどれくらいいるんでしょうかね?
正直、説明して共感して貰える自信がありません。

一度目はただ単に凄い記録を出したとだけ。
そして、二度目はどういう経緯かをちゃんと読者に伝わるように描きながら。
こういう風に「情報に差を付ける」ことによって、単なる天丼より深みが増すと思います。
(中略)
こういう、「読み直すと新たな発見がある」タイプの漫画は、
少なくとも単行本を買った際の満足度が上がるような気がします。
ゲッサン201312

以前『ふだつきのキョーコちゃん』の記事でこう書きましたが、
上のシーンは正に「読み直すと新たな発見がある」ための描写だと思います。
という事で、まずは一度今回の話を読み返してみて下さいw





では具体的にいきます。
以前から書いてるように (例えばmini 3の記事) 基本的にこの漫画は西片くん視点...
からかい上手の高木さんゲッサンmini 6 (ゲッサン20143年3月号別冊付録) p11 山本崇一朗

つまり一人称視点がメインで描かれています。
上の画像だと、西片くんのモノローグや、ロッカーを西片くん視点で描いてるのがそれに当たります。
もう一つの視点は三人称視点... 別名「神の視点」と呼ばれるもので、
単純に言うと一人称視点以外は三人称視点です。
今回だと、最後の5pが三人称視点と言えるでしょう。


西片くん視点で描かれているので、当然読者は西片くん視点で漫画を読み進めていきます。
そこで先ほどのシーン。
からかい上手の高木さんゲッサンmini 6 (ゲッサン20143年3月号別冊付録) p15 山本崇一朗

このカーテンちょっと透けるから全部見えてたんだよ。


西片の行動を思い出しただけで…

この二つのセリフがミソです。


「西片の行動を思い出しただけで…」というセリフは、
今までの西片くんの行動を読者に読み返すことを促しています。
どう読み返すのか。
それが「このカーテンちょっと透けるから全部見えてたんだよ。」
つまり、隠れてる高木さん視点で読み返すことを促してる訳です。


からかい上手の高木さんゲッサンmini 6 (ゲッサン20143年3月号別冊付録) p11 山本崇一朗

西片くん視点で読んでいると、このシーンは「ドコに高木さんがいるんだろう?」という
ある意味ミステリーな描写ですが、
高木さん視点で読んでいると、このシーンは「何もないところに話かけてらウフフ」
といったコメディに早変わりします。
この違いが、先に述べた「読み直すと新たな発見がある」描写という事になります。
これが出来るのも、モノローグを使ってるので一人称視点ではあるものの、
絵的には三人称視点でも読み進めることができる (絵的に西片くん視点なのはロッカーのコマだけ)
という映像作品の特長があるのではと考えます。
高木さん視点で見ようとすると、西片くんのモノローグ等を頭の中で消去する必要はありますが。


これは作品のテクニックですが、大事なのはテクニックを使うことではなく、
それをきちんと作品の面白さに繋げられるかどうか。
その為には、「このテクニックを使って面白い漫画を描こう」というスタンスではなく、
(試行錯誤する分にはそれもアリだとは思いますが)
あくまでテクニックは選択肢のうちの一つであることが重要だと考えています。


ももくり会長副会長 ゆずチリ
★★★★★

受賞作の『雨女晴れ男』含めて3作共素晴らしい内容なので、これは本物でしょう。
私から見れば素質に関しては疑いようがないです。
ゲッサンmini 5

3本続けて本物なら、4本だとどう表現していいか悩みますw
もう読切を描く意義があまり感じられないので、そろそろ短期連載やってみては...?

ノローグの上手さは、一人称視点でないと話が描けないのとコインの裏表のような気もしますけども。
ゲッサンmini 5

唯一の懸念材料はココだったんですが、それも払拭されましたし。


ネームだけ描いて、例えばマツセダイチ先生や瀬戸ミクモ先生辺りの見栄えする作家さんが作画したら、
ゲッサン本誌でもアンケート上位に入りそうです。
まぁ瀬戸ミクモ先生の線は無いのかもしれませんけども。


個人的にゆずチリ先生の特長は、
以前にも書きましたが「枷の掛け方、外し方」「心理描写」だと思ってます。
今回は「対比」を前面に出してきました。もちろん今までの作品にも対比はあったんですが。


やりたい事はいっぱいあるけど、やり方が分からないモエカ。
やりたい事は分からないけど、決められた事ならやり方が分かるコウイチ。
私的に解釈すると、モモカPDCAサイクルのDo (実行) 、コウイチはPlan (計画) に、
ちと強引ですが、大木先輩がCheck (チェック・精査) にあたる、といった感じでしょうか。


構造的にはモエカとコウイチ、二人のキャラクターが対比になっている上に、
互いの欠点が枷であり、互いの長所が枷を外すことに繋がっています。
このような構造があれば漫画が面白くなるという訳ではなく、
ももくり会長副会長』 ゲッサンmini 6 (ゲッサン20143年3月号別冊付録) p47 ゆずチリ

枷を外す際、いかに意外性、達成感、爽快感などを出して漫画の面白さに繋げるか。
ここをきちんと描けてるのがゆずチリ先生の最も素晴らしい点だと思ってます。
このシーンなんかも、コウイチの発言で今まで見えなかった世界が広がっていく感じが出てますし。


で、この作品には「対比」がもう一つあって。
ももくり会長副会長』 ゲッサンmini 6 (ゲッサン20143年3月号別冊付録) p19 ゆずチリ

「擬人法」...人と物の対比です。
こういう学校で勉強するような内容が漫画を楽しむ際にも役に立ちますから、
学生・生徒の人はちゃんと学習していた方が良いですよ!
とオッサンが自分の過去に後悔しながら言っておきます。


「物には住所がある」という擬人法は、このシーンだけ見れば単純な暗喩ですが、
物語全般を通してみれば別の比喩にもなっています。
すなわち、キャラクターの役割。このブログで言うところの「ロールプレイ」です。
お互いと自分の役割を認識してなかったが故に、モエカとコウイチは揉めていました。
ももくり会長副会長』 ゲッサンmini 6 (ゲッサン20143年3月号別冊付録) p52 ゆずチリ

それを自覚し、互いを認め合ったことにより、生徒会の運営が上手く回っていく。
上の画像はお互いの意思やキャラクター、役割を尊重し合っている描写でもあるのですが、
「これ、プレゼント」「ありがとう。大事にするわ」といったような内容の会話を、
実に見事に漫画の展開へとマッチさせたセリフだと思います。
コウイチがハサミをプレゼントするというのも、花やぬいぐるみなど女性が喜びそうなものなどではなく、
実用的な物だという点が、いかにも男性的な思考をコウイチがしている描写になっていて密かにツボ。


いやー正直脱帽ですわ。このブログを書いてる期間に読んだこのレベルの新人読切作品って
『閂誠の魔法使い指南書』『言葉遣いに気をつけろ!』『レジチョイサーよしえ』
記事にはしてませんが『セーラー服を纏った教祖様』 くらいしか思い当たりません。
評価は一応クラサンレベルで上限の★5にしてますが、
心情的には★8.5は付けてもいいくらい。10じゃないのは絵の見栄えですw


うるさいせかい 原作:かんばまゆこ 作画:美里あづさ
★★★★☆
ちと甘めですが。まずは重箱の隅をツッコミ。
『うるさいせかい』 ゲッサンmini 6 (ゲッサン20143年3月号別冊付録) p52 原作:かんばまゆこ 作画:美里あづさ

専門家でも無いんで確信は無いんですが、
最近はモンケン (鉄球) で解体する事はほとんど無いはずです。
まぁモンケンだと見栄えするってのはあるんでしょう。
あとシロアリ。シロアリは当然ながら木材を食い荒らす訳ですが、
木の柱をコンクリートでコーティングするって事あるんですかねw
そんな事言い出すとペンギンのぬいぐるみがあの紙袋に入ってるのも...


それは置いといて。
『うるさいせかい』 ゲッサンmini 6 (ゲッサン20143年3月号別冊付録) p58 原作:かんばまゆこ 作画:美里あづさ

こちらも擬人法、と言っていいのかどうかw
かんば先生的には作品の幅を広げるためにこういったネームを書いたのかもしれませんが、
かんば先生の絵柄だとミスマッチなので、これを自分で作品にするには中々厳しそうです。
そこで作画に話はもひとつだけど可愛らしい絵柄が特長の美里あづさ先生にしてもらう。
基本的にはこういったコラボレーションはあまり感心しないのですが、
(その割には上で推奨してますけど)
少なくともこの作品に関しては良い役割分担が出来てると思います。
miniでは実験的なことができる余地があるからというのもありますね。
「この漫画がコケたら戦力外通告される」といった切羽詰まった状況ではないですしw


個人的には伏線が無い作品にはどうしても物足りなさを感じてしまうんですが、
優しい雰囲気が爽快感に繋がっているとは思います。
やはりかんば先生的にはギャグのみで押す作品よりは、コメディ等を織り交ぜつつの方が良さそうです。
まぁ、いかに雰囲気をブチ壊さないようにするかといった辺りは難しいかもしれませんけども。
美里先生にとっても他人のネームを漫画にすることで、いい刺激になるといいんですが。


義父との遭遇 小林安曇
★★★☆☆
かなり甘め。
ゲッサンmini 6 (ゲッサン20143年3月号別冊付録) p88

正直言って、漫画よりもこのコメントの方が面白いという...
作品名で出落ち、ギャグももひとつ (フクロウは少しマシ) 、ミスリードもほとんど無し。
枷は一応掛かってるなぁくらいで。
せめて最後に「本当は父親が欲しかったんだ」と自覚する描写があれば、
もう少し達成感は出せたと思うのですが。


『義父との遭遇』 ゲッサンmini 6 (ゲッサン20143年3月号別冊付録) p95 小林安曇

絵の見栄えはしませんが、違和感のある描写がある訳でもなく、
地力はあるように見えます。絵に関しては伸びる余地がかなりありそうです。


小山愛子
★★★★☆
『夜』 ゲッサンmini 6 (ゲッサン20143年3月号別冊付録) p124 小山愛子

このシーンだけだと、ちょっといい話だなで終わりますけど、
『夜』 ゲッサンmini 6 (ゲッサン20143年3月号別冊付録) p121 小山愛子

この描写があるからこそ意外性が出て面白い訳で。
たった4pの漫画でも、やっぱ伏線ってのは大事だなぁと思いました。
その間の寝静まった雰囲気もいいです。


Pizza Coopers 森茶
★★★★☆
かなり辛目ですが。
何でボール投げて営業妨害すんねんそれ器物破損じゃねーか等でリアリティの無さを感じてしまったり、
伏線は張ってるものの意外性が薄いので物足りなかったりとかいった
個人的な好みで若干評価を下げるのですが、
『Pizza Coopers』 ゲッサンmini 6 (ゲッサン20143年3月号別冊付録) p142 森茶

ガスマスクが象徴してるように、今更『Dr.スランプ アラレちゃん』に感化されたかのような
躍動感のある絵にワクワク感がありました。明るい感じの内容ともマッチしていますし。
ギャグは正直微妙って言えば微妙でしたが、「耳だけのところが…」はちょっとおもしろかったです。
『BULLET ARMORS』が終了して以降、読切作品はもひとつパッとしなかったので心配してたんですが、
森茶先生復活の兆しが見えたように思えます。むしろその方がワクワク感ありましたねw


魔法少女マッスル♡マミ♡ Mizumo
★★★☆☆
あえて間違った事をやってみた感。奇を衒いすぎたというか。
魔法少女マッスル♡マミ♡』 ゲッサンmini 6 (ゲッサン20143年3月号別冊付録) p163 Mizumo

奇を衒ったと言っても、正直『仮面のメイドガイ』の2番煎じだという印象は拭えませんがね...くくく。

仮面のメイドガイ(1) (カドカワコミックスドラゴンJr)

仮面のメイドガイ(1) (カドカワコミックスドラゴンJr)

せめてこー可愛らしいしぐさなのに萌えない、という辺りまで踏み込んで、
萌えと萎えとの境界線でせめぎ合えばもうちょっとアレな感じになったと思うのですが。


一応、萌えと萎えの境界線は出しているのですが、
魔法少女マッスル♡マミ♡』 ゲッサンmini 6 (ゲッサン20143年3月号別冊付録) p194 Mizumo

これは逆効果。
一応オチにはなってますし、物足りなく感じるのは確かにそうなんですが、
オチの物足りなさにも繋がっちゃってるんですよね。
基本的な所はしっかりしてるだけに、勿体無い作品でした。