201210 #1

1年ぶりの本誌雑感。『ささみさん@がんばらない』に関しては来週追記します追記しました。
まずは新連載の3本、次に新世代グランプリの読切5本。
連載作品について雑感はコチラで。


ささみさん@がんばらない
ガガガ文庫で好評続刊、今冬アニメ化のライトノベルのコミカライズ。
作画の西川彰先生はクラサンに読切が4作品掲載されましたが、
絵の見栄えはするものの内容がベタで連載持つには今ひとつ足らない印象でした。
読切作品のうち、『クロとビャク』は今でも読めます。


ささみさん@がんばらない週刊少年サンデー2012年46号 p211 原作:日日日 キャラクター原案:左 作画:西川彰

何故かは分かりませんけど、どうも読みにくい。
背景はちょっとうるさい気はしますけど、それが原因じゃないっぽいんですよね...
とは言え、絵は滅茶苦茶見栄えしてますし、デフォルメも良い感じですし、
原作未読ですがコミカライズにも問題なさそうです。
アニメでどれだけ人気出るかは未知数ですが、ある程度売上を確保してくれる期待は持てそうです。


ファンタジスタ ステラ

ファンタジスタ 1 (小学館文庫 くG 1)

ファンタジスタ 1 (小学館文庫 くG 1)

個人的には『ファンタジスタ』は最も優れたサッカー漫画のうちの一つだと思ってますが、
(他には『GIANT KILLING』『フットボールネーション』『オレンジ』)
その『ファンタジスタ』が日本代表・本田圭佑の原案協力で帰って来ました。
しかしまーあの時代はACミランとか日本人ではありえなさ、だったのですが、
今や香川がマンチェスター・ユナイテッドですからねぇ...
連載終了時点はおろか、2年前でも考えられない進歩ですわ。


『SAMURAI SOCCER KING』の創刊号に草場先生のコメントが載ってましたが、
本田選手は本当に『ファンタジスタ』が好きだったようで、以前対談した時にも
「あのシーンが〜」といったような、何度も読み返してないと出てこないようなコメントが
あったらしいです。
そんな好きな漫画に自分が登場する、ある意味選手の夢が叶ったような作品ではありますが、
読者が置いてけぼりにならないかはちょっと心配ではありますね。
まぁコレで本田ファンを少しでも取り込めたらいいんですが...


ファンタジスタ ステラ週刊少年サンデー2012年45号 p6 草場道輝 原案協力:本田圭佑

試合のシーンはもちろんWC2010のデンマーク戦ウルグアイ戦が元ネタなんですが、

トーナメント1回戦の相手がパラグアイで1-1だったり、デンマーク戦で本田が2G1Aだったり微妙に変わってます。
というか、本田はデンマーク戦で2本とも蹴りたかったんだろうなと(苦笑)


本田が主人公なのか、今まで通り徹平が主人公なのか、両方とも主人公なのかは分かりませんが、
草場先生の前作『LOST MAN』もサッカーシーンではさすがという所を見せてくれていただけに、
今作も期待できるんではないでしょうか。
フィクションとリアルとが混然としてる感じが、思ったより面白さを増幅させてる印象を受けました。
C-WWWの深沢さんがつぶやいてましたが、確かに『ドカベン』的ですね。


○ 姉ログ
『姉ログ』 週刊少年サンデー2012年42号 p18 田口ケンジ

さよなら絶望先生』や、サンデーSの『青いね芝くん!』もそうですが、妄想膨らませる作品は面白いですね。
このテの作品はいかに暑苦しさをデメリットにしないようにするかが課題となると思ってるのですが、
『姉ログ』は姉が妄想することによって暑苦しさを回避しつつデレに繋げてます。


既にマンネリ気味なのが気になります。
まぁマンネリでも6p漫画なのでさほど問題ないかもしれませんが、読者層が広がらない恐れも。
45号では視点を変えましたが、これ以外にもいくつかパターンが欲しい気はします。
とは言えモノローグがコンセプトの漫画なので、バラエティ出すのは難しいのかもしれませんけども。


○ はねけん! (読切) 奥原聡
★★★★☆

第68回(2011年前期)新人コミック大賞に『僕らの漫画奮闘記』で入選

入選作はまんま作者の立場を反映しすぎて、個人的にはノれなかった作品でした。


『はねけん!』 週刊少年サンデー2012年42号 p173 奥原聡

『はねけん!』も個人的にノれなかったという意味では共通してますが、
今回はピュアすぎてノれなかったので、ストレートな作品が好きな人には刺さるんじゃないでしょうか。
漫画の出来自体は悪くないですし、絵柄も大分読み易くなってます。


熱血漫画を描きたいんでしょうし、そうなると基本的にバトルかスポーツって事になりますが、
可愛らしい絵柄とバトル・スポーツは基本的に相性が悪いのが少し気がかりです。
GAN☆KON』『最後は?ストレート!!』なんかもそうですが、あんまり成功例思いつかないんですよね。
何かしら解決策を考えておかないと、本紙連載くらいまでは届くかもしれませんが、その後が苦労しそうです。


高校野球の途中ですが (読切) 葛城一
★★★★☆
略歴はサンデーS2012年11月号の記事参照。



くずしろ/葛城一
この前の高校野球読切は4コマの時との差別化図りたくてベタになってもいつものアレな部分極力抜いて描いてみたデトックス漫画だったけど、多分あんな感じの漫画は向こう3年は描かない気がする…と進行中の漫画とストックのネタを眺めて思う。
link
本人もこうつぶやいてるように、この人の持ち味である毒を抜いた作品でした。 高校野球の途中ですが』 週刊少年サンデー2012年42号 p208 葛城一 個人的にはそこに物足りなさを感じたのですが、この方がウケそうな気がするのもねぇ...(苦笑) 画力自体はあるのですが、動きのある絵は苦手っぽいので、現時点ではスポーツやらない方が無難でしょうか。 サンデーSの記事にもちょっと書きましたが、以前載った読切は 『セーラー服を纏った教祖様』 週刊少年サンデー2012年10号 p299 葛城一 眼帯外すと人の黒歴史が見える主人公の話でしたが、キャラ、ストーリー展開、意外性と完璧でした。 こういうクセのある漫画を描いていると「もっとインパクトを!」となりがちで、 読者と距離が離れてしまう恐れがあるので、こういったデトックス作品を描くことには意味があると思います。 出来れば作品の中でそういった緩急を付けられるようになるといいんですが。 ハナヨメわらし (読切) 峰浪りょう ★★★☆☆ モバMANで活躍中の作家さんらしいです。現在『ヒメゴト 〜十九歳の制服〜』連載中。 『ハナヨメわらし』 週刊少年サンデー2012年43号 p239 峰浪りょう 絵、内容共に猪熊しのぶ先生っぽいなーという印象を受けました。 絵柄はともかく、内容的に猪熊先生の作品は受け付けないので、この作品も同様。 単にベタ、生ぬるい作品が好きな人にはウケるでしょうけど、何か一工夫欲しかったのも事実。 雰囲気はあるんですけどね。 宇宙コンビニ業務日誌 (読切) 小田智仁 ★★★☆☆

東京工業大学芸術学部マンガ学科在籍
第70回(2012年前期)新人コミック大賞に『ワールドワイドスワン』で大賞。

どんな作品かは忘れてしまいましたが、クラサン掲載時に「コレが大賞?」と私がつぶやいてますね。


『宇宙コンビニ業務日誌』 週刊少年サンデー2012年44号 p173 小田智仁

インパクトのあるキャラと、ベタな内容。
このギャップが... マンガの面白さに繋がってるかと言われると微妙。


絵はかなり良いと思います。見栄えもしますし、不自然に感じるところは一切無いですし、
キャラデザも素晴らしい。
内容的にもテンポや緩急あるのはいいです。ただ、肝心の内容が面白いか?と言われるとちょっと。
キャラクターのインパクトがあるのはいいんですが、それ無しでも面白いと思わせるような内容ではないなと。
作画でなら即戦力級ですけど、内容的にも基礎は出来てますし、
ぜひストーリーにもインパクトというか意外性を盛り込んでオリジナルで勝負して欲しいですね。
まぁ非現実的日常を描いた作品だからってのがあるので、割り引く必要はあるかもしれませんけれども。


それでも僕は変身する (読切) 森田滋
★★★☆☆
前作『ウルフ×ウルブズ』でさんざん作画に関してdisってましたが、かなり改善されてます。
新選組秘闘 ウルフ×ウルブズ』 週刊少年サンデースーパー増刊号2011年12月号 p83 森田滋

「首から上と下を別々のレイヤーに描いて、繋ぎ方を間違えた」ような感じだったんですが、
『それでも僕は変身する』 週刊少年サンデー2012年44号 p279 森田滋

今回はほとんど違和感なし。
心なしか見栄えの良さも磨きが掛かったように思えてきます。


ただまー内容的にはちょっと...
基本的にリア充は漫画読まないので、そんな主人公だと共感が得られにくいというのがまずひとつ。
連載をする際にはイケメンなのにモテない所でどうにかしようという戦略があるのかもしれませんが、
(女性ファンを掴むにはいいんですけども)個人的にはこの設定では難しいんじゃないかなと思います。
以前The Structure of "The World God Only Knows" #1でも書きましたが、
主人公のタイプは主に「着せ替え型」「コスプレ型」の2種類に分類されます。
今のパターンだとこの折衷型になるでしょうが、「共感できず、なりたいとも思わない」という
悪い面だけが出てるように思えます。この辺りは『神セカ』の桂馬は非常に上手くやってるんですけども。
モテない人間だという描写をしつつ、イザというときには決める。フツーはこうするんですけどねぇ。
もちろん、桂馬のようにしなければならない訳ではありませんが、
あえて逆を狙うなら、どういう設定を加えるべきかを考える必要があるでしょう。


設定的にも「リア充」「リア貧」というキーワードを使ってる以外はベタですし、
「ラブコメを享受できない主人公」って意味では『神セカ』と同じなのですが、
どうもそれが面白さに繋がる構造にはなってないように見えます。
あと、必殺技には名前が絶対必要でしょう。


色々考えて描いてるような気はするのですが、スタートラインで判断を間違ってる印象を受けます。
コメディ描写は相変わらず悪くなかったんですけども。