動物がお医者さん!? EPISODE:19(最終回)

ちょっとネタモノだったので、キャラ作りはどうしてもストーリーに後付けになってしまっていたんですけど、
4巻ぐらいからは中々いい感じにキャラが回ってきてますので、キャラについては是非是非4巻を。
『アダチ区民放送局』 2012年9月15日放送 0:57:22 〜 0:57:34

『アダチ区民放送局』を聞いて一番嬉しかったのはこの箇所ですね。
このブログでキャラ描写について指摘したことと関連があるかは分かりませんが、本当に良くなってるなと。
今回個人的に一番素晴らしいと思ったのはこのシーン。
『動物がお医者さん!?』 サンデーS 2012年11月号 p760 富士昴

言うまでもなく、このシーンとの対比です。
『動物がお医者さん!?』 サンデーS 2012年8月号 p492 富士昴

セリフはほぼ同じなのにも関わらず、状況などで全く違う印象を読者に与える。
どう違うかはあえて言いませんが、セリフに力があるからこそ効果的な演出だと思います。


ストーリー展開もキャラ描写と咬み合ってます。
さすがに萌え要素は入れる余地がありませんでしたw が、それ以外で以前批判した点は完璧にクリアしたと見てます。


「共感」については#18でも書いたように「共感」と「受容」というキーワードでも示されてますし、
理事長と更紗の父親がどういう心境だったかはきちんと表現されています。


『動物がお医者さん!?』 サンデーS 2012年11月号 p785 富士昴

「ロールプレイ」についてはここで「役割」というキーワードでも示されてますし(別に明確に示す必要は無いんですが)、
理事長と更紗の父親の立場の違いも明快に表現されています。


さらに、この作品に対する批判では書いてませんでしたが、
『動物がお医者さん!?』 サンデーS 2012年11月号 p778 富士昴

この描写はこのブログで何度も書いてる「関係の履歴」です。
このロジックも単に出すのではなく、一番最初にセラピーをした誠二のことを出し、
『動物がお医者さん!?』 サンデーS 2012年11月号 p767 富士昴

一度「全ての生き物は平等で尊い」とミスリードさせてるのがまた素晴らしい。
そして、このシーンはコミュニティ描写でもあるんですよね。
「いろんな人に、人と動物の繋がりを考えさせてくれる」というセリフもそれを暗示してます。

後はコミュニティちゃんと描ければもう完璧。もう本誌レベル。

#3の段階でこう書いてましたが、正にそういった演出です。


理事長と更紗の父親の立場の違いは、キャラ描写でもあるんですが、以前書いた多様性の意味とも関わってます。

知識体制がこの資源を有効に扱うならば、少なくとも二つのことをなし遂げうるに違いない。先ず第一に、この体制下では生産的な対立が起こるだろう。然るべき場所、然るべき時期において、新たなアイデアが触発されて出てき、新たに討論が繰り広げられ、こうして思想の研究のための実り多い議論設定が行われる。第二に、この体制は、それが培った対立を解決できるのでなければならない。先ず培養してから次に選別しなければならない。どの新しいアイデアが研究に値するか、どの議論が継続する価値があるか、どの信念が「一般的受容」と当然の利用の正式範囲に入れられるかが、決められなければならない。この選別は、仕事の半分のうちでもより困難なほうである。我々は皆、毎日朝飯前に三つの新しいアイデアを持つことができる。問題は、それがほとんどと言っていいくらい下らないアイデアであるということである。困難なのは、誰がいいアイデアを持っているかを突き止めることである。対立意見を効果的に述べ、そこから選択するという平和的方法が欠けている場合は、幾百万という我々のアイデアはただそこにあるだけで、それぞれが自己の優位性を主張するが、決定の仕様がなく、収束することもなく、ただ分裂と漂流あるのみである。
表現の自由を脅すもの』p106 Jonathan Rauch著 飯島良明訳 角川選書

『動物がお医者さん!?』 サンデーS 2012年11月号 p784 富士昴

天敵がいるからこそ生物は進化する。意見の対立があるからこそ思想が進化する。
進化論が現代の科学的思考の礎になっているので、綺麗に収まるのは当然と言えば当然なのですが、
これに加えてキャラの個性をきちんと出し、なおかつちゃんと作品に落とし込んでいる。
ここまでやられると私としては脱帽するしかないですわw


残念ながら、アダチ区民放送局の宮崎さん達が望んでいた「誰と誰がくっ付くんだよ!」という所は描写されませんでしたが、
そういった演出を望んでいる方には是非次回作にご期待を、といったところでしょうか。
ということで、少ししたらその辺りをちょこっとだけ書いてみます。