The Structure of "Can animals cure us? #6

検索でこのページに飛んできた人は(いないでしょうけど) The Structure of "Can animals cure us!?”#1 からどうぞ。
最後です。


9) 批判した点の改善
サイン会で富士先生にお会いした時にブログ見てますよとは言われませんでしたし(聞いてもいませんが)
担当さんが見て漫画に反映されてるとはちょっと考えにくいので、このブログからフィードバックはされてない
という前提で書きます。
何にせよ、#3,4で指摘した点はいくつか改善されているとみます。
#5に関してはこれからという感じでしょうか。
て言うか、やっぱり個人的に好きな作品を褒められるってのは気持ちいいですねw


9-a) 問題点 動きのある絵
褒める前に、残された問題点を。
動きのある絵に関しては正直まだまだだと思います。
(これに関しては指摘するのみで、代案出してませんでしたが)
まぁアクション漫画描く訳ではないので、そこまで要求されるスキルでは無いんですけども。


『動物がお医者さん!?』 サンデーS 2012年8月号 p481-482 富士昴


さらに格闘だとその知識も必要になりますしね... まぁ私もそれほど知識無いんですが。
下の画像の星乃の蹴り自体は軸もしっかりしていて、非常にバランスが取れて、かつ美しいです。
この辺りはセンスだなーと思います。だから問題なんですけども。


打点が高い蹴りとなれば踵落としか回し蹴りですが、2コマ目で分かるように踵落としでしょう。
どこが問題か動画見てもらった方が早そうですね。


身体の向きと、蹴った後に脚が残ってるのが主な問題点。
恐らく止め絵として美しく見せようとしてしまったがために、動きのない絵になってしまってるんですよね。
格闘のリアリティ的な問題は置いておくとして、動きのない絵な理由はこの辺りにあるような気がします。
素人考えですが、軸は保ちつつ、動く方向を考えてバランスを崩せば割とらしくなるような気はします。
まぁ一番いいのは動画なりを見て参考にする事でしょうけど。


9-b) 改善点 「ロールプレイ」「多様性」
#3で挙げた改善点ですが、既に#5で触れています。
犬派と猫派の対立や、理事長の功利主義的立場がそれです。
#5で触れてなかったシーンでは、ここが素晴らしかったです。
『動物がお医者さん!?』 サンデーS 2012年8月号 p474 富士昴

長い間付き合ってる星乃と美空の立場の差を関係の履歴を元に演出。



fujisubaru
お気に入りの指南書の一つ読んでたら、「キャラを作者の考えの代弁者にさせてはいけない。キャラの意見に耳を傾けろ」と書いてあって、それ全然できてねーやと思った。
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以前は渚無双というか、渚がストーリーを引っ張っていって、周りのキャラはそれに釣られるだけというパターンだったんですが、 このようにキャラの立場がしっかりしてると、キャラが動くようになるんですよね。 しかも、キャラの演出なのにも関わらずストーリーの邪魔をせず、むしろ後押しする。


若木民喜
色々な現象の総合だけど、具体的な症例は、「キャラ」より「お話」の比重が大きくなる、機能性でキャラを考え始める、展開にこだわる、オチから逆算して話を考える、アバンに凝るetc RT @hatology: @angelfrench いい漫画病とはどんな病なのですか?
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若木民喜
以下のようなことはテクニックとしては大事だから一度は通らないといけない道ではあるけど。
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以前にも引用したつぶやきですが、何事もバランスなのでやりすぎると良くないのは確かですけども、 少なくとも問題点は解決されたと思います。 9-c) 改善点 「キャラ目線」 #4の「共感」については、抽象化に関しては問題なかったので、「キャラ目線」だけが改善すべき点でした。 まぁコレも記事を書く前のEPISODE:14(6月号掲載分)で既に改善されてたのですが。 『動物がお医者さん!?』 サンデーS 2012年6月号 p703 富士昴 その時触れていたこのシーンの前後がそうですね。


fujisubaru
やっぱりこのネタでキャラに気持ちこめようとすると超苦戦するなぁ。気持ちこめてキャラ作っても、構造整えるために違う性格にしなきゃいけなくなったり。せつないぜ。
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fujisubaru
でも、構造だけの話はいっぱい作ったから、違うことやりたいんだよなぁ…。でも超つらい。死にそう。
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これらのつぶやきにも見られるように相当難産した回だったみたいですが、 この回の出来もさることながら、その前の回からキャラ描写が明らかに良くなってるので、 苦労してキャラ描写メインの話を作ったかいがあったんじゃないかなと。 9-d) 改善点 意外性

EPISODE 12では鮫島と牧原さんとの意見の対立が描かれてましたが、
それ以外の回ではミスリードさせたい内容と、解決策との対立のみが描かれてるんですよね。
具体的に言うと、老人ホーム編では山上さんを活動に参加させるか否かと、杖を取り上げるか持ったままにするか。
最もシンプルな意外性の出し方なので、まずはこの方法を採用してるという意味では問題ないんですけども、
この方法が意見の多様性を描いているか?と言われると疑問です。

#3で密かに触れた点でしたが、ここも改善されてました。



若木民喜
@koutensugano 読ませないってのも色々あって、「想像もできない」ものと、「まず想像させておいて裏切る」ものと、「何パターンか提示しておいて、そのうち何を選ぶか、ないしは選ばないか」というもの・・・ボク的には展開そのものより、展開の前の議論が大事なんじゃなかろうかと。
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EPISODE:15がこのような意外性の出し方でした。 『動物がお医者さん!?』 サンデーS 2012年7月号 p766 富士昴 カルロスのアニマルセラピーをどうやればいいのか?という質問に対して、 連れていく動物は犬か猫どっちがいいのかという2択にミスリードしつつ、実際は亀。 「何パターンか提示しておいて、選ばない」というパターンを使ってきました。 意外性に関わる問題なので、単純に今までのパターンと変えただけでも十分効果はありますが、 むしろ重要なのはなぜこのパターンを選択したのかという点です。 まずは犬派と猫派に分けることによって、星乃と美空のキャラを間接的に表現。 (#5で述べたように、もっと上手くやれたんじゃないかという話はありますが) どちらかを選ぶと、選ばれなかった派閥の読者はいい気はしません。なので、どちらも選ばない。 しかも何かが優れてるか否かという話ではなく、患者にたまたまフィットしたという理由なので角も立たない。 という風に、きちんと判断してこのパターンを選択したというのが分かるんですよね。 また、EPISODE:16ではストーリー展開以外での意外性も出してきました。 この回は星乃が助けにいくシーンとヒキに多少意外性がありましたが、ストーリー的にはさほど意外性はありませんでした。 『動物がお医者さん!?』 サンデーS 2012年8月号 p492 富士昴 その代わり、キャラのインパクトで意外性を出す演出。 他の漫画を見てみればこういう演出もあるんですけど、正直そこまで頭が回りませんでした。 理事長のイラつくキャラもさることながら、実にいい演出だったと思います。 10) まとめ 以前はロジカルなストーリー一辺倒だった内容が、キャラが動きつつストーリーと噛み合うような内容に好転してきてると見ます。 後は#5で指摘した、キャラにファンが付くような演出だけですね。主に「萌え」。 これをいかにロジカルなストーリーと融合させるか。課題はそこだけだと思います。 というか「いかに担当さんと戦うか」という話にもなりそうですがw 何にせよ、内容がさらに良くなってきてるだけに、もう少し続けて欲しいというのが私の偽らざる願いです。