放課後さいころ倶楽部 #23

前回この漫画の中で個人的に2番目に面白い回だったと書きましたが、
次にそれを超える回が来るとは...
まぁハゲタカ回がトップなのは揺るぎないんですけども。


今回のゲームは『ごいた』

ごいた (Goita) カードゲーム

ごいた (Goita) カードゲーム

前々から協力ゲームやって欲しいなぁと思ってたんですが、
放課後さいころ倶楽部ゲッサン2014年5月号 p356 中道裕大

やっぱ共感の描写ってのは面白さに繋がりますね。以心伝心。
ただ、単純に共感の描写だけでは面白くなりません。
それがいかに貴重なものかを示しておく必要があります。

これは偏見かもしれませんが、
女流作家のモチベーチョンは「共感してもらうこと」である事が多く (個人差は性差を凌駕しますけれど)
それが故に漫画の中でも自分が体験した事をダイレクトに反映させて読者からの共感を期待したり、
キャラ同士が共感し合う描写をする事が男性に比べて多いと感じるのですが、
特にキャラ同士が共感し合う描写だけだと、元の意味での「やおい」...
ヤマなし、オチなし、意味なしな漫画に陥る可能性が高くなると考えています。
ではどうすればいいのか。
『あやしや』 ゲッサン2014年2月号 p101 坂ノ睦

互いの立場などの違いを乗り越えて共感することによって、ドラマになる
この構造があるところが、この漫画のしなやかな勁 (つよ) さになっていると考えます。
要するに、枷が必要って事です。
また、立場の違いなどが必要になりますから、自ずとキャラの多様性も担保されますし。
ゲッサン201402

以前『あやしや』の記事でこう書きました。
今回は2人の間に枷はありませんが、代わりに過去シーンで枷の描写。
放課後さいころ倶楽部ゲッサン2014年5月号 p355 中道裕大

ゲームのセオリーという枷がある訳ですね。
陽子は共感したいが為に、その思いが強いが為に友達を詰 (なじ) ってしまい、
放課後さいころ倶楽部ゲッサン2014年5月号 p351 中道裕大

結果として『ごいた』で遊ばなくなったんでしょう。
他人のプレイに口出しするのはゲーマーとしてはやりがちな事なのですが、
口を出す事全てが悪いとは言いませんけど、いかに相手に興味を持たせるように口を出すか?
という事は考える必要がありそうです。
協力ゲームには『スコットランド・ヤード』や『パンデミック』といった類のゲームもありますが、
これらの会話を通じて協力するタイプのゲームは、
一番ゲームに精通している人がリーダーシップを取ってしまい、他の仲間はその指示に従うだけになり、
あまりゲームを楽しめなくなるという、所謂「奉行問題」 (leader issue) がありますし。


で、上のシーンだけならまーまー面白いって感じなんですけども、相手がミドリというのが肝で。
放課後さいころ倶楽部』 1巻 p170 中道裕大

ミドリも昔似たような経験をしていた訳です。
同じ悩みを抱えている/いた者同士だからこそ、初プレイでも伝わるものがある。
直接的に言わなくても伝わる楽しさを描いた回で、
直接的に表現しなくても上のシーンを覚えてる人にはピンと来る描写をする。
この回だけ読んでもそれなりに面白いですが、
この漫画を読み込んでる人にはそれ以上の面白さがあるといった回だったように思います。


以下蛇足。


こないだ「ゲームマーケット2014大阪」に中道先生のサイン本目当てで行った時に、
個人的に一番気になったブースが「能登ごいた保存会」。
twitter能登ごいた保存会/大阪支部
明らかに他のゲームとは異質な輝きを発してましたし、
何よりそこだけお爺ちゃんが何人もいるのがさらに異質でw
駒作りの実演や、保存会の方の丁寧なルール説明などされていたようです。
折角だから遊んでみたら良かったかなぁ...
ブースの状況は下のページで。
お爺ちゃんは写ってなく、唯一の綺麗どころを取りました感がありますけどもw
ゲームマーケット2014大阪レポート (Table Games in the World)
ちなみに中道先生サイン会の様子もレポートされてて、密かに中道先生が顔出ししてます。
twitterで中道先生の顔写真載せてる人がいたので、大丈夫かなぁと思ってたんですが、
もう顔を隠すのは諦めたんでしょうかw
※追記:こちらのブログでは職人さんによる竹駒製作の実演の様子が。
第47回「『ゲームマーケット大阪2014』開催!」 ピコピコカルチャージャパン


ついでなんで、ゲームマーケット大阪での中道先生サイン会の話をすると、中道先生に
ゲッサン2014年2月号 付録はがき

「以前ゲッサンのアンケートでキャラの人気投票した結果はどうなりました?」と聞いたら
「あ、それ結果聞いてへんわー」とのお答えが。
で、中道先生の右に立ってる人を指したので、その人に聞くと
「アヤ>ミキ>ミドリの順で、割合は80%ずつになる感じで」というお答えが帰ってきました。
(アヤが100とすると、ミキが80、ミドリが64ぐらいという事でしょう。)
「ボードゲーマーと一般の人とは層が違うんですかね?」とその人は言っておられましたが、
個人的にはアヤとミキを押した回が効いたのだと勝手に思ってますw
まぁ時期もサンプルも違うので、一概に比較できないデータではあるのですが、
どちらがより客観的なデータかとなるとゲッサンのアンケートに分があるのは確かでしょう。
これでこのブログでは心置きなくミドリを推せますね! (そこ?)


お二方にお礼を言ってからすぐ帰ったんですが、帰る途中で
「ああ、あの人担当のT波さんじゃないか」と気づく始末。
キウイゲームズでのサイン会の時、中道先生に「次はT波さんと是非」と言ってて、
本当に来てくれたのに「大阪へようこそ!」と言えなかったのが残念でした。
一応徳島の時にT波さんとはお会いしてて、『ねことねずみの大レース』やったのになぁ...
たぶん髪型変わったからすぐ気付かなかったんです。変わってなかったらすいませんw


話を戻すと、正直『ごいた』はいずれ絶対やるだろうとは思ってたんですが、自分の中で
ドイツ人女性キャラが登場→ドイツのボドゲは世界一ィィィ!
→そこで取り出す『ラブレター』→日本も捨てたもんじゃないけどドイツには歴史が
→からの『ごいた』
という展開を勝手に妄想してきっとそうなるだろうと思い込んでたのでw
ゲームマーケットで触発されたのかなぁ。ブースも近かったですし。


気になったのでゲームマーケット後に『ごいた』の事を調べてみて、
何で昔にこんなゲームがあったのか謎だったんですが、
放課後さいころ倶楽部ゲッサン2014年5月号 p348-349 中道裕大


この説明で納得。他にも似たようなゲームがあったんですね。
ゲームが作られたのも、恐らく本来は博打が目的でしょう。
元々トランプもポーカーなどの賭けで発達したゲームですし。
『アサギロ』 ゲッサン2013年7月号 p277 ヒラマツ・ミノル

以前『アサギロ』にこういうシーンがありましたが、
取り締まりが緩かった寺社で賭博を行い、上納金として寺社に納めていた...
これが「寺銭」の由来です。
例えば韓国には多数のボードゲームカフェがありますが、最近はポーカーの賭博場と
化してる記事が以前朝鮮日報に掲載されていました。 (リンク切れ)
麻雀で囲碁でも将棋でも、ゲームというのは常に賭博の対象になりうるのは確かですが、
だからゲームが悪いという訳でも無いので。
それを利用して法律に反する賭けをする人が悪いんです。


で、『ごいた』自体も色々興味深いです。
ローカルで細々と伝承されていたゲームが、それ以外の地域でも遊ばれるようになるというのは、
まさに「結束型」から「橋渡し型」への転換ですし、
規模はそれほど大きくないにせよ、地域産業をも創りだす力にもなりうるという辺りが。
ボードゲームコンポーネントを見るたびに、
「檜の端材とか使って地場産業を創り出せないかなぁ」とか考えていたので、
黒檀のごいた駒なんかを見ると、あながちあり得ない話でもないのかなぁと。
※追記:上の追記したブログによると、黒檀ごいた32,000円だそうです。
しかも能登ごいた保存会/大阪支部のつぶやきによると、売れたそうですw