ゲッサンmini 8 (ゲッサン201407別冊付録)

ゲッサンmini 8 (ゲッサン2014年7月号別冊付録) p1

源素水先生の表紙でした。
絵の見栄えはする作家さんですが、カラーも割と綺麗に仕上がってると思います。
ただ、私が背景美塾を受けた影響があるのからそう感じるのもしれませんが、
個人的には背景にバロック的な美しさが欲しいのですけども。
(背景美塾では「ケレン味」という表現を使ってました。)
幾何学的で正しい背景ではあるのですが、そこに生活してる感じが無いというか。
例えば、襖の引き手のところが少し色褪せていたりすると、らしさが出ると思うのですが。
まぁこの辺りの背景の違いが人気に影響するかと言われると、ゼロに近いでしょうけどね。


しものく 源素水
★★★★★
twitter源素水
かるた的な漫画と言えば、真っ先に思いつくのが
ちはやふる』 1巻 p51 末次由紀 講談社

ちはやふる』でしょう。
男の子2人と女の子1人というのも共通してますし、参考にしていないとは考えにくいです。
ちはやふる』ではメガネ男子が一人いるのですが、こちらは両方裸眼。
『しものく』 ゲッサンmini 8 (ゲッサン2014年7月号別冊付録) p21 源素水

まぁ個人的にはそんな事より可愛い系ではなく綺麗系のメガネ女子がとても綺麗ってだけでメシウマ。
(8ヶ月ぶり3回目)

個人的には主人公がプレーンなキャラクターだと1pだけで意識させた後、いきなりキョンシーになったり、
いつの間にか婆ちゃん子設定を追加されたりといった辺りで、イマイチ主人公に感情移入できませんでした。
私も婆ちゃん子だったらそこで共感を得てたのかもしれませんが。
序盤で急に展開を変えてるだけに、もう少し主人公視線の絵作りでモノローグを出していけば、
その辺りが少しは解消できたのかも。
ゲッサンmini 5

以前『オーマイ導士さま!』でこう批評しましたが、
『しものく』 ゲッサンmini 8 (ゲッサン2014年7月号別冊付録) p56 源素水

『しものく』は主人公のまつり視点で進行しているので、きっちり共感できるようになってます。

これは偏見かもしれませんが、
女流作家のモチベーチョンは「共感してもらうこと」である事が多く (個人差は性差を凌駕しますけれど)
それが故に漫画の中でも自分が体験した事をダイレクトに反映させて読者からの共感を期待したり、
キャラ同士が共感し合う描写をする事が男性に比べて多いと感じるのですが、
特にキャラ同士が共感し合う描写だけだと、元の意味での「やおい」...
ヤマなし、オチなし、意味なしな漫画に陥る可能性が高くなると考えています。
ではどうすればいいのか。
『あやしや』 ゲッサン2014年2月号 p101 坂ノ睦

互いの立場などの違いを乗り越えて共感することによって、ドラマになる
この構造があるところが、この漫画のしなやかな勁 (つよ) さになっていると考えます。
要するに、枷が必要って事です。
また、立場の違いなどが必要になりますから、自ずとキャラの多様性も担保されますし。
ゲッサン201402

以前『あやしや』の批評でこう書きましたが、
特に女流作家はまず主人公にちゃんと共感できるかどうかだと思います。
そこが課題になりがちというのではなく、そこが特長なのできっちり押さえるべきだと。
それが出来た上で、神の視点で進行するなり別のことをやっていく。


『しものく』 ゲッサンmini 8 (ゲッサン2014年7月号別冊付録) p20 源素水

そして、『しものく』では立場やキャラの違いもきちんと描かれていますし、
引っ込み思案で協調性に欠けるという性格的な枷を外すことで達成感を出しつつ、まつりの成長をも描く。
構造的に言えばこういう事になるのでしょうが、
それらをきっちり漫画の面白さへと繋げている辺りが素晴らしいです。


ディテールも素晴らしくて、

あと、これは重箱の隅ですが、折角心の距離を題材にした漫画なんですから、
『Hello, Little Girl』 ゲッサンmini 4 (ゲッサン2013年11月号別冊付録) p167 マツセダイチ

それをセリフだけではなく、間接的にも表現して欲しかったです。
具体的に言うと、パーソナルスペースが縮まった事で兄妹の距離が縮まった事を表現する。
電車で少し離れて座ってる辺りで、そういう描写が後で出てくるのかなと期待したんですが、
『Hello, Little Girl』 ゲッサンmini 4 (ゲッサン2013年11月号別冊付録) p194 マツセダイチ

手を繋ぐ前の2pではその距離感は分からず。この辺りはちょっと勿体無いかなと。
ゲッサンmini 4

以前マツセ先生の読切でこう批評しましたが、
『しものく』 ゲッサンmini 8 (ゲッサン2014年7月号別冊付録) p28 源素水

教室やバスのシーンでパーソナルスペースの広さをきちんと表現しています。
同じシチュエーションでパーソナルスペースが縮まったシーンがあれば分かり易いのですが、
そういうシーンを入れられる感じではないですし、
『しものく』 ゲッサンmini 8 (ゲッサン2014年7月号別冊付録) p60 源素水

ここで距離が縮まった感は出てるので、そこまでする必要は無いとは思います。
最近このブログで多用している、互酬性を描写したシーンでもあります。


『しものく』 ゲッサンmini 8 (ゲッサン2014年7月号別冊付録) p62 源素水

他にも、柿本への憧れを、まつりが自分から動き出す描写をしつつ、
仕草の可愛らしさを絡めたオチにしている辺りも良いですし、
(ココはディテールとは言わないかもしれませんけど)
『しものく』 ゲッサンmini 8 (ゲッサン2014年7月号別冊付録) p26 源素水

それ以上に何と言ってもこのシーン。
一見まつりの愛想の悪さを描写してるだけのように見えますが、
その前に菅原のことを知らなくて、柿本のことを知っている描写を入れていることから、
柿本の下の名前も直 (すなお) だと知っている...
つまり、柿本の事を仄かな恋心を抱くくらい意識しているという間接的な描写にもなっています。


内容的には完璧でしょう。
ゲッサンの読切は平気で1年前に描いた作品が掲載されるのですが、



うえはら/中原開平
【プチ告知】今日発売のゲッサン一月号に16p読切の「ワゴン」が載っています。これ一年位前に描いた奴で、気分は新作読切というより旧作読切ですが、もしよければどうぞ。
link


門司雪/チャりん
本日12日発売のゲッサン7月号別冊付録ゲッサンminiに16項の短い読み切り漫画が載ってますのでよろしくお願いします。…が!これ描いたの1年以上前なのでまだ自分は読み返せてないです。1年前の自分に会う勇気が…出ないっ…!!
link
源素水先生の作品は、

『よろず薬局店の惚れ薬』 (第72回新コミ佳作。リンクから読めます)
『オーマイ導士さま!』 (ゲッサンmini 5 掲載 脱稿は2013年8月)
『燕捕物帳』 (ゲッサンmini 7 掲載 脱稿は2014年2月)
『しものく』 (ゲッサンmini 8 掲載 脱稿は2014年5月)

となってます。
正直『燕捕物帳』から『しものく』まで3ヶ月しか空いてないとは思えないクオリティの上昇っぷり。
一応クラサン基準で★5にしましたが、個人的には★7くらい付けたい作品。
後は主人公視点じゃなくてもこのクオリティが維持できるかですね。
まぁ『よろず薬局店の惚れ薬』はソコソコ面白かったので、(クラサン基準で★4付けてました)
その辺りは問題なさそうですけども。
何にせよ連載の期待が持てる作家さんに成長したんじゃないでしょうか。


最後に、あえて重箱の隅をつつきます。
『しものく』 ゲッサンmini 8 (ゲッサン2014年7月号別冊付録) p50 源素水

すべり台の傾斜が急過ぎですね。

滑降部の傾斜角度は基本的に、水平に対して45°以下とし、滑降部全体を平均しても35°以下とする。ただし、安全な滑走姿勢が維持でき、かつ安全に停止できるような構造であれば45°を超えても良い。
学校に設置している遊具の安全確保について 文部科学省

この文章はあくまで学校に設置するすべり台の規制ですが、
公園のすべり台も概ねこの規制に準拠してます。
勾配ってのは結構厄介なもので、数字から感じるイメージと実際とではギャップが出がちです。
例えば傾斜10°の坂道と言われても大したことないと思いがちですが、
道路交通法で言うところの「勾配の急な坂」とは傾斜が6°以上の坂道の事を指しますし。


ピアノ教室 小山愛子
★★★★☆
『ピアノ教室』 ゲッサンmini 8 (ゲッサン2014年7月号別冊付録) p66 小山愛子

わずか4pの作品ですが、その中でもちゃんと枷を作り、外すことの面白さを出せてると思います。


京子が僕に願うこと マツセダイチ
★★★★★
twitterマツセダイチ
この漫画自体の批評からは逸れますが、



マツセダイチ
今月発売のゲッサンについてくる小冊子に短編が載ってます。よろしくお願いします。アライブの連載の告知載せてくださったゲッサン編集部に感謝です。
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マツセダイチ
@GRGR_ いやー、「扉の煽りに書いとくよ」と言って頂けたときはありがたかったです。
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『京子が僕に願うこと』 ゲッサンmini 8 (ゲッサン2014年7月号別冊付録) p67 マツセダイチ ゲッサン編集部も粋な計らいをしますなぁ。


マツセダイチ
それからゲッサンでも引き続き頑張りたいと思っています。一方的な決意表明ですが。
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だからこそ作家もこう思えるんじゃないかと。 連載終了後の読切には、連載に向けたプロトタイプ作品と言えるようなものがほとんど無く、 (2013年2月号に掲載された『六角少女関係』は連載向きでしたが、内容的には微妙でした。) それが故に擬似飼い殺し状態になっていた訳ですが、独身ならともかく妻帯者なので、 今の状態を長く続け辛いという台所事情もあるのかもしれません。


マツセダイチ
@GRGR_ うわー、嬉しいです。ありがとうございます。連載とか考えずに描きたいもの描こうかなぁ、と笑。
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描きたいものを描こうというスタンスは正しいのでしょうけども、 それが自然と連載に繋がるようなものに結びつかない現状を考えると、 『FULL SWING』のような1話完結群像劇ではなく、 平行世界の作品であるが故に多少区切りが短いとは言え、 1話完結ではない連載をする事は刺激になるかもしれません。 読切は描けても、連載が中々視野に入らないって事は、 描きたいキャラやシチュエーションはあれど、テーマが無いって事でしょうから。


マツセダイチ
@SannaiMan 今はリゼロやってよかったなー、って部分はかなりあります。コマ割り、キャラ絵を見つめ直すいいきっかけになったな、と。
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マツセ先生は別の角度からの刺激を受けたと感じてるみたいですがね...w 『Re:ゼロから始まる異世界生活』 月刊コミックアライブ2014年8月号 p75 マツセダイチ 原作:長月達平 キャラクター原案:大塚真一郎 メディアファクトリー 見栄えのする作家陣に囲まれて大変ではあるでしょうけど、原作はそこそこ面白そうなので、 しっかり責務を果たしてもらいたいもんです。 という事で読切の批評を。 『月曜日は2限から』 ゲッサン2014年7月号 p374 斉藤ゆう 『京子が僕に願うこと』 ゲッサンmini 8 (ゲッサン2014年7月号別冊付録) p80 マツセダイチ 相変わらずマツセ先生の読切はゲッサンの別の作品と被る事が多いんですが、 何か理由があるんですかね? まぁパクリでない前提で、面白ければ何でもいいんですけども。 内容的にはオチに全てを賭けたような作品。 『京子が僕に願うこと』 ゲッサンmini 8 (ゲッサン2014年7月号別冊付録) p72 マツセダイチ こう伏線を張っておいて、 『京子が僕に願うこと』 ゲッサンmini 8 (ゲッサン2014年7月号別冊付録) p75 マツセダイチ こういう遣り取りをさせておいて、 『京子が僕に願うこと』 ゲッサンmini 8 (ゲッサン2014年7月号別冊付録) p90 マツセダイチ 最後にこう。 一方的に支える立場だったのが、頼られる側に。 マツセ先生の持ち味である爽快感に加え、意外性も加わって素晴らしいオチだったと思います。 オッサンになって涙腺ゆるくなってる事もあるんでしょうが、思わずちょっと泣きました。 で、若干心配なのが


マツセダイチ
今回のゲッサンの短編最初はべろちゅーでミニSD渡してたんだけどさすがにそれは却下された
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GRGR
@daichi0101 ラフでも残ってるなら見たいですw
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マツセダイチ
残ってたところあったけど
この後の口から取り出すとこが見つかんない>_<
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マツセダイチ
@GRGR_ 没ネーム適当にぽいぽい捨てちゃうのでこれだけしかなかったです>_<
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マツセダイチ
あぁ!口から取り出すとこがエロいのに!
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twitterで明らかになったエピソード。 少なくともここに関しては編集者さんの判断は正しい。 まぁ私もべろちゅー好きですし、このシーンはボツにするには勿体無いくらい美しいのですが、 サンデー的にはある程度童貞力が無いとねぇ...w やるにしてもそれなりの工夫は要るでしょう。詳しくは『電波男』の『下級生2』のくだりを参照。
電波男 (講談社文庫)

電波男 (講談社文庫)

一部『銀塩少年』#9の記事でも引用してるので、本を読む時間が無い方はそちらを。 一応クラサン基準で★5にしましたが、『しものく』同様に個人的には★7くらい付けたい作品。 mini 7 に掲載された『ゴシップガール』も素晴らしい出来だったので、 やはり課題は上にも書きましたし、『ゴシップガール』の記事でも書きましたが、 連載向きの...という事になりますなぁ(苦笑) 黒崎ヒカルのお姉ちゃん 門司雪 ★★★☆☆ twitter門司雪/チャりん 厳し目ですが。 『黒崎ヒカルのお姉ちゃん』 ゲッサンmini 8 (ゲッサン2014年7月号別冊付録) p104 門司雪 キャラの表情は生き生きとしてますし、キャラの成長も16pでちゃんと描けています。 けどまぁ面白いかと言われるとね...1年以上前の作品らしいですし、 miniに掲載された『Mの魔弾』 『日陰のオレンジ』のクオリティが良かったので、 その前はこういう作品描いていて、そこからレベルが上がったね。 という事が分かる作品ではあったかなと。 ROAD OF SPRING 森茶 ★★★☆☆ ちと辛めですが。 『ROAD OF SPRING』 ゲッサンmini 8 (ゲッサン2014年7月号別冊付録) p107 森茶 タイヤがちゃんとした円になってない辺りはフリーハンドの味が出てるとは思うのですが、 そこにケレン味を出すのなら、自転車に人が乗ったらタイヤの接地面は若干平らにして欲しかったです。 実際そうなりますし。まぁ内容には関係ないですがねw 『ROAD OF SPRING』 ゲッサンmini 8 (ゲッサン2014年7月号別冊付録) p119 森茶 で、その内容ですが。まぁボチボチと。 一時期よりは雰囲気も出てきて大分良くはなっていますけど、 連載するにはまだ物足りないかなぁという印象。 まぁ16pの漫画でこのジャンルならインパクトを期待するのも酷なんですが。 ゴーストライター 麻貴早人 ★★★★☆ twitter麻貴早人 ちと甘め。 ゲッサンmini 8 (ゲッサン2014年7月号別冊付録) p151 第73回新人コミック大賞 大賞受賞作『チキンレーサーズ』はリンクから読めます。 新コミ大賞受賞者だけあって、構成力はさすが。 ゴーストライターゲッサンmini 8 (ゲッサン2014年7月号別冊付録) p140 麻貴早人 ただのシャレかよ、と思わせておいての ゴーストライターゲッサンmini 8 (ゲッサン2014年7月号別冊付録) p148 麻貴早人 キャラ描写を兼ねた意外性。中々新人でここまで出来る人少ないんじゃないかなぁ... ただ、キャラはある程度描けてるものの、これでキャラにファンが付くか?と言われると疑問で。 それなりに特徴がある絵をどう見栄え良くしていくかを含め、課題はそこでしょう。 内容的なクオリティを上げるのが課題な作家さんよりは、それほど難しくはないはずです。 影は笑う 花城黒和 ★★★★☆ こちらもちと甘め。 twitter花城黒和 ゲッサンmini 8 (ゲッサン2014年7月号別冊付録) p152 第73回新人コミック大賞 佳作受賞作『仮面の街』はリンクから読めます。 導入が『仮面の街』とほぼ同じなのは何とかならねーかなぁと思わなくはないですが、 『影は笑う』 ゲッサンmini 8 (ゲッサン2014年7月号別冊付録) p183 花城黒和 読者とちゃんと駆け引きしているが故の意外性があって、結構楽しめました。 こちらも課題としては、それなりに特徴がある絵をどう見栄え良くしていくかでしょうなぁ。 あと、ちょっと引き過ぎている構図が多いような気もします。