ゲッサン201406 #1

今月号はニュースや企画が盛りだくさんなので、漫画の批評に関しては別記事にします。
と言うかこの記事だけでいつもの同じくらいの文章量が...

ゲッサン 2014年 06月号 [雑誌]

ゲッサン 2014年 06月号 [雑誌]

編集部ブログで表紙を見た時にはデザイン的に微妙だなーと思ったのですが、
実物を見るとキャラ全てが描きおろしで、仁の清掃着やちろりの割烹着など、
細かい所にみどころはありました。
願わくば、来年はデザインとディテールが両立する集合絵にして欲しいかなぁと。


では、個人的に一番優先したいニュースから。
ゲッサン2014年6月号 p16

6/11発売の週刊少年サンデーに『からかい上手の高木さん』の出張読切が掲載されるようです。

『高木さん』ならサンデー本誌でも十分やれてたんじゃないかと思います。
ゲッサンの作家がサンデー本誌へというのは、1話リバイバルや読切出張以外では前例ありませんけど。
という事で、『高木さん』の本誌出張くらいならアリじゃないかなぁ。
ゲッサンmini5

我ながらいい読みだと自画自賛
本誌出張が『キョーコ』ではなく『高木さん』と書いたのは、
個人的には『高木さん』の方が好きだからというのが最大の理由ですけども、
読切出張なら一話完結の『高木さん』の方が適しているというのが選ばれた原因でしょう。
山本崇一朗先生が選ばれた理由は、アンケートが高いからで間違いないでしょう。


読切出張が大ヒットとは言わないまでも、スマッシュヒットへの起爆剤になって欲しいところ。
山本先生とは連載始まる前からtwitterやごとう隼平先生のニコ生『彩色主義』で交流があったので、
個人的にも売れて欲しいと願っている作家さんではあります。
...まぁ、肝心の漫画が面白くなければ推してませんがねw
まずは増刷が掛かるかどうかを注目してみたいです。
いずれはアニメ化と行きたいですなぁ。


そして、ゲッサン初のアニメ化作品はやはり『信長協奏曲』でした。 (予想は書いてませんが)
ゲッサン2014年6月号 p14

正直に言います。嫌な予感しかしませんw
アニメは爆死、ドラマは爆死とまでは行かないまでも不振に終わり、
映画化はいつの間にか無かったことに... てな事になりそうで戦々恐々としています。


嫌な予感がする最大の原因は、フジテレビ開局55周年プロジェクトだという事です。
前にも紹介しましたが、私は2002年に『大和心とポーランド魂』というフラッシュを作った事があります。
(これで私がオッサンだという事がバレるのですがw)

Japan On the Globe(142) 国際派日本人養成講座 地球史探訪: 大和心とポーランド魂
このメールマガジンの記事をフラッシュ化したのですが、その元となった本が

善意の架け橋―ポーランド魂とやまと心

善意の架け橋―ポーランド魂とやまと心

この本でした。そして翌2003年、このお話を基にしたドラマが制作されることになりました。
タイトルは『ワルシャワの秋』。後にDVD化されています。
ワルシャワの秋 [DVD]

ワルシャワの秋 [DVD]

この情報を耳にした時、正直期待で胸が膨らみました。私も若かった(苦笑)
あんないい話がドラマ化されたら、どんなに素晴らしい作品になり、どれだけの人に感動を与えるのか。
主演は竹内結子坂口憲二。どちらも当時から期待の俳優として既に知名度はありました。


ドラマを観終わった時、私は涙を堪えきれませんでした。あまりのデキの悪さに。
残念ながらどのくらい酷いドラマだったのかは説明できません。
何せ最後に中の島公会堂で撮影した事しか覚えていないくらい、記憶に残らない作品でしたから。
...何の話をしているのかと言うと、
このドラマは関西テレビ放送開局45周年記念ドラマだったのです!


記念プロジェクトに対する印象としては、個人的には『ワルシャワの秋』が最大のトラウマなのですが、
他にも記念プロジェクトと銘打たれて大コケした作品はかなりの数にのぼります。
ある意味最も有名なのは『幻の湖』でしょう。

詳しくは『幻の湖』のwikiを参照してもらうとして、そこにもあるように、
一部では三大カルト邦画の一つとも言われているこの映画、東宝創立50周年記念作品でもあります。
北京原人 Who are you? [DVD]

北京原人 Who are you? [DVD]

そして三大カルト邦画の2つ目は『北京原人 Who are you?』。
総制作費20億円と社運を賭けたこの映画、東映創立50周年記念作品です。
(ちなみに、もう一つの三大カルト邦画は『シベリア超特急』。これは記念作品ではありません)
個人的にもこの三作品は、時間を無駄にしたくてたまらない人には超オススメの作品です!!1


まだ他にも大コケした記念作品はいっぱいあります。
最近だと2013年に日本テレビ放送網開局60周年、にっかつ100周年、タツノコプロ50周年記念作品の

ガッチャマン』が。
にっかつ繋がりで1992年の作品になりますが、にっかつ80周年記念作品、総制作費50億円の超大作
落陽 [DVD]

落陽 [DVD]

『落陽』があります。
特にこの『落陽』は、にっかつ自体が『落陽』へ... 倒産への道を加速させる作品にもなりました。


なぜ記念作品にはかようにも失敗作が多いのか。
あくまで私の想像ですが、通常のボトムアップではなくトップダウンで企画が進行すること...
つまり、企画の善し悪しをチェックするトップから企画を出ると、
自身の出した企画へのチェックは当然甘くなるので、チェック機能が働きにくくなる。
この手の話はブログで何度か書いてますが、「誰がどうチェックするのか」という問題だと思います。
記念作品ではありませが、例えば週刊少年サンデーの企画でも、
ポケットモンスター RéBURST』『キャラクタイムズ』など、上層部の企画に当たった試しがありません。
週刊少年サンデー・マガジン共同50周年企画ってのもありましたねそいや。


この構造が解消されない限り、記念作品・企画での大コケは今後も繰り返される事になるでしょう。
信長協奏曲』がその歴史の新たなる1ページにならない事を祈るばかりです。

タレントの北野誠東映の社員と接する機会があり、本作はどういう意図で企画され製作されるに至ったのかとの疑問に、東映社員が「社内に於いても本作品に触れる事すらNGとなっていて、上層部レベルでシークレットになっていた」との答えを聞いている。
Wikipedia 『北京原人 Who are you?』

ではゲッサン小学館がこの企画を断るべきだったかと言われるとそうではなく。
どれだけ影響が出るかは読めませんが、単行本の売上が伸びるのは確かでしょう。
BD/DVDの売上が急降下した『マギ』も、単行本の発行部数が1巻当たり50万部まで伸びましたし。
どれだけ小学館が出資するのかは分からないので、場合によっては損失になるかもしれませんが。


信長協奏曲』とは逆に、こちらは手堅そうな企画。
ゲッサン2014年6月号 p15

ゲッサン初のメディアミックス作品『ここが噂のエル・パラシオ』に続いて、
アオイホノオ』がテレビ東京深夜でのドラマ化。
大当たりになる事は無いでしょうが、同監督の『逆境ナイン』も興行的には失敗しなかったので、

逆境ナイン 全力版 [DVD]

逆境ナイン 全力版 [DVD]

『エルパラ』は視聴率2.3%と低い数字でしたけど、枠平均の3.0%くらいは取れると予想。
ただ、この漫画のメインターゲット層だと思われる40台後半〜50台と、
深夜ドラマの視聴者層とのミスマッチがありそうなのが気掛かりです。
また、単行本への波及効果も薄そうです。
『エルパラ』はドラマ始まる前に増刷されましたが、その後は音沙汰なしでしたから。
少なくとも『逆境ナイン』を観た限りでは、この監督は「分かってる」感があったので、
ある程度ファンには納得できるような作品が期待できるとは思います。


企画繋がりで、次はゲッサンの企画を。
まずは個人的に大好きな企画。『チーム・ゲッサン選手名鑑2014』
ゲッサン2014年6月号 p6-8

もう少し大きな画像は去年と同様ついっぷるに上げたので、そちらもどうぞ。
で、よく見てみると、左下に
ゲッサン2014年6月号 p8

この選手名鑑の中から、あなたが期待している作家さんを選んで、今月号のアンケートハガキに名前を書こう!!得票率の高い作家は次の登場が早まるかも…!?

と書いてあるので、お気に入りの作家さんがいる方は是非アンケートを出すべきではないかと。
ハガキとは書いてますけど、多分ゲッサンwebのアンケートフォームでも大丈夫だと思いますw
現状何をしているかが書いてあるのも注目で、
個人的にはゆずチリ先生が「新企画を準備中!」となっているのが期待大で、
マツセダイチ先生が「新作読切を執筆中」となっているのがまだ新企画じゃないのかYO!と
思わずツッコミたくなりました。
いやまぁ今のところ「この作品を連載化して欲しい」という読切が無かったのは確かですが。
という事で、私はマツセ先生に投票しますw


で、この企画。覚えている方もいるでしょうが去年もやっていました。
去年の画像はコチラ
新しく名前が載った先生がいる一方、
多少意地悪な見方かもしれませんが名前が消えている先生もいます。

チーム・ゲッサンin/outリスト
inout
村松まつり雪丸
源素水トキトウハルカ
井上まい今井ムジイ
晴十ナツメグ藤原直衛
虫馬ちゅうしだらちより
吉川皓也安井タツヒロ
花城黒和泉尾アキ
小林安曇アオキカスミ
藤井ゆづる 
(追記:泉尾アキ先生画像にいました。すいません。
安井タツヒロ先生は『レ・ミゼラブル』4巻のSTAFFに名を連ねてはいました。)
これが果たして戦力外通告、もしくは他紙へと移籍したり作家を引退したのか、
単に名前が掲載されていないだけで縁は切れてないのかは分かりませんけども。
今井ムジイ先生は以前フラッパーに読切が掲載されていたので移籍の可能性が、
アオキカスミ先生はどうやら講談社へ移籍のようです。
新コミにチャレンジ中だった作家さんのうち、受賞した作家さんと工藤舞、カロト先生以外は
名前が消えているので、新コミを受賞するか否かで篩に掛けられているのかもしれません。
(まぁ新コミで受かって戦力外というのも考えにくいですがねw)
例外は雪丸先生。
mini5に掲載された『サラブレッドに恋して』が悪くなかっただけに、正直意外でした。


もうひとつの周年企画。『全連載作家直筆サイン色紙プレゼント』。
こちらも作家さんの個性が出ていて、見てるだけでも楽しいです。
基本的には経験を積めば積むほど色紙を描く機会が増え、しかも1度に複数描く事になるので、
ベテラン作家さんの方がシンプルな仕上がりになる傾向にあると思うのですが、
ゲッサン2014年6月号 p3

8人キャラ描いてる島本先生、さらには描き込みが半端ない坂ノ睦先生には正直たまげましたw
これだけ凝り性なら、人気あるからと言ってページ数を32pから増やすとかは無理でしょうねぇ。
私は去年のイベントで
「自分の事を知っている作家さんにサインを直接描いてもらうからこそ嬉しい」
と自覚したので、応募は自重しておきます。


さらには今年だけの企画、イラストスタンプ大プレゼント。
やはりこちらも作家さんの個性が出てますが、個人的にはリコとキョーコの可愛さがヤベー。
ゲッサン2014年6月号 p179

まぁ実際に使うことは無いでしょうけどもw


その裏には『ゲッサンヒストリー』と題してゲッサンの作品年表が載っています。
連載の入れ替わりが視覚的に分かって意外とためになりました。
ゲッサンminiの前身、『ゲッサンルーキーズSpecial FILE』を入れても良かったとは思います。
ついでに、この頃のかんば先生の漫画は超ツマラねーと書こうと思ったんですが、
『ヒトミちゃんのめざまし』 ゲッサンルーキーズSpecial FILE (ゲッサン2010年10月号別冊付録) p7-8 かんばまゆこ


ツマラないと言うほどでは無いあたりが逆にツマラなかったです。(ヒドい言いよう)


最後に。今月号から始まった新企画2本。

ゲッサン読者ページ『get the sun してみる。』の中で、作家さんに聞いて欲しいこと、またはやって欲しい企画を教えてください。

2013年11月号のアンケートにこういう項目がありました。
それが実際に活かされたのかどうかは分かりませんが。


○ ふるさとお國自慢
『ふるさとお國自慢』 ゲッサン2014年6月号 p702 横山裕二

この企画自体は悪くないと思います。
少なくとも今までここにあった企画ページの中では一番マシ。

後、地方都市を巡回してるんですから、「そこに行ってみたいな」と思わせる何かが無いと。
ゲッサン201110

以前こう書きましたが、瓦そばはコレに当てはまりますし。
まぁB級グルメコーナーに限る必要な無いんでしょうけどもねw
むしろ作家の生い立ち...どういう少年少女時代を過ごしたかに絡められると、
作家さんへの興味なりに結びつきそうな気はします。
個人的には高田康太郎先生の『魔神英雄伝ワタル』の話が大好きなので、
あの話やってくれないかなぁ...


愛と勇気の…共同まんが♡
逆にこちらは微妙。
11月号のアンケートの際に、私は作家さんへのインタビューをして欲しいと書きました。
ただし、単独のインタビューではなく、例えばアントンシク先生と熊谷祐樹先生といった
師弟関係だったり、大学時代から友人だった山本崇一朗先生と佐伯幸之助先生といった風に、
そこで何かしらの繋がりを描けないものか...
ひいては「チーム・ゲッサン」を表現できるようなものになるのではと考えていました。
ただまーコレだと「漫画力絶対主義」には反していますよね (苦笑)


以前ゲッサンmini6号にかんば先生原作、美里先生作画の、言わばコラボ作品が掲載されましたが、
『うるさいせかい』 ゲッサンmini 6 (ゲッサン20143年3月号別冊付録) p58 原作:かんばまゆこ 作画:美里あづさ

これに手応えを感じてこの企画をスタートさせたのかもしれません。
ただ、この作品はかんば先生の絵とはミスマッチなネームを美里先生に託してみたといった、
適材適所が嵌った感があるで、そこをランダムにしてしまうと上手く行かないのでは?
という疑問があります。
ランダムで選ぶという方法自体、製作者サイドには「どういう作品が出来上がるんだろう?」
という期待感が面白さに繋がるのかもしれませんが、この面白さは内輪ネタ的なもので、
漫画の作品自体の面白さに繋がるようなものではありません。
以前ゲッサンハルタとのコラボ企画として、2012年3月号に
fellows!!のできるまで』という漫画が掲載されていましたが、
このテの企画はどうしても「企画している・作業している間は楽しい」事はあっても、
それと作品の面白さとは、どうしても乖離してしまう傾向にあるように思います。


では、どういった企画であれば良かったのか。
まずは内輪の楽しさではなく、漫画本来の面白さを出すことが大前提。
その上で、コラボをする事によって漫画の前提となっている何か外せれば、
そこに新しさや、コラボする意味も生まれるはずです。
抽象的ではありますが、方向性としては合ってるとは思うのですがどうでしょうか。


じゃぁ具体的に何すればいいのかと言われるとあまり思いつかないのですがねw
新しさには欠けるかもしれませんが、例えばキャラの描き方として、
以前The Structure of "After School Saicoro Club" #2にも書いた「リトマス法」があります。
そして、「他作品のキャラは使えない」という漫画の前提があります。
これをコラボする事によって外すことができる。


...ただ、コレだけだと週刊少年サンデー・マガジン共同50周年企画のうちの一つで、
村枝賢一先生が描いた『サンデー×マガジン クロスライン』と同じ鉄を踏む事になります。
(あの制約の中で、村枝先生は上手く作品に落とし込めたのは確かなんですが)
作家が「この企画はやりたい」と思えること。
例えば森薫先生の作品が好きな中道裕大先生が、『乙嫁語り』のキャラ使ってコラボしていいよ、
となれば恐らくモチベーションは上がるでしょうし、ハルタとのコラボも可能です。
キャラの新たな魅力が引き出せる可能性がありますし、『乙嫁語り』の読者への宣伝にもなります。
まぁ作家が一番やりたいようにやらせると、『乙嫁語り』や『MIX』で被ることになるでしょうから、
その辺りは調整が必要でしょう。
何にせよ、もうちょっと何とかならねーかなぁというのが正直なところです。