ゲッサン201311

ゲッサン 2013年 11月号 [雑誌]

ゲッサン 2013年 11月号 [雑誌]

小川先生、相変わらずカラーが素敵。
miniの記事は連休明けてからになりそうです。


○ 終末風紀委員会



アントンシク ゲッサン11月号届いた。リンドバーグの作画をずっと支えてくださった熊谷佑樹さんの初連載「週末風紀委員会」スタート!やっぱ上手ぇ!ゲッサンは12日発売です。ぜひよろしく!俺も頑張らないと…>http://comshoblog.shogakukan.co.jp/msun/2013/09/post-338a.html link
熊谷先生は『リンドバーグ』のアシスタントをやっていたらしいです。

個人的には演出面で凝り過ぎる嫌いがあると見てるので、まずはシンプルを心がけて欲しいです。

ゲッサンmini1号に掲載された『来訪者ウギン』を踏まえて7月号の記事でこう書きましたが、
その辺りはかなり改善されてます。
『終末風紀委員会』 ゲッサン2013年11月号 p38 熊谷祐樹

読切では48pあったとは言え割とカツカツの構成でしたが、今回ストーリーはかなりシンプルに。
おかげで設定やキャラをきちんと描けていたと思います。
コマ割りも多少癖がありましたが、かなりシンプルになって読み易くなりました。
構図は若干読みにくさが残ってる気がしますけど、十分許容範囲。
ネックとなっていた点はほぼ解消されたと見ています。
何が原因でこれだけ改善されたのかは分かりませんが、
B6小版のminiに作品が載った事が多少なりとも影響してるのでしょうか。


『終末風紀委員会』 ゲッサン2013年11月号 p38 熊谷祐樹

元々見栄えはする作家さんですが、
武器が文房具という設定は面白いですし、
主役2人のキャラも立ってます。
新人の初連載としては上々の立ち上がりではないかと。
個人的に意外性が無かった点が物足りませんでしたが、
読切を読む限りはそこが欠点という訳でも無さそうなので、
シンプルを心がけるために今回は犠牲になったんでしょう。


あと、主人公側に武器の設定がされてるんですから、
悪役側にもそういう設定は欲しい気がします。
動物化するか、
ヤンキーが使いそうな武器って事になるんですかね?








◎ LES MISERABLES
『LES MISERABLES』 ゲッサン2013年11月号 p81 原作:ヴィクトル・ユーゴー 漫画:新井隆広

司教様のカリスマの演出っぷりが凄まじいです。
原作の強さに負けてないって辺りが最早脅威。
『LES MISERABLES』 ゲッサン2013年11月号 p64 原作:ヴィクトル・ユーゴー 漫画:新井隆広

その一方、こういった細かい所も楽しめる。
あまり権威主義的な事は書きたく無いのですが、
「格」というものをまざまざと見せつけられる、そんな作品になってると思います。

ダレン・シャン』で小説のコミカライズは既に経験がありますし、
原作『レ・ミゼラブル』は「フランス文学史に輝く超大作」という煽りが過不足ないほどの名作なので、
手堅い作品にはなると思います。個人的には『巌窟王』くらいのクオリティーを期待したいところ。

連載前の記事でこう書きましたが、『巌窟王』を超えそうな勢いです。
全然手堅いとかそういうスケールじゃないですね。


放課後さいころ倶楽部
で、こちらはホント手堅い。スケールで勝負するような作品とは正反対です。
今回のゲームは『インカの黄金』

インカの黄金 (Incan Gold) 完全日本語版 ボードゲーム

インカの黄金 (Incan Gold) 完全日本語版 ボードゲーム


作者はAlan R. Moon (アラン・ムーン) とBruno Faidutti(ブルーノ・フェデュッティ)の共作。
どちらも有名な作家さんのようです。
ブルーノ・フェデュッティは
『操り人形 (独:Ohne Furcht und Adel、仏:Citadelles)』でドイツ年間ゲーム大賞ノミネート、
アラン・ムーンは
『乗車券 (Ticket to Ride) 』と『エルフェンランド (Elfenland)』でドイツ年間ゲーム大賞を受賞しています。


『インカの黄金』は上の動画ページの説明文にもあるように、
『ダイヤモンド』というボードゲームをカードゲームとしてアレンジした作品のようです。
放課後さいころ倶楽部ゲッサン2013年11月号 p122-123 中道裕大


すごろくやの解説はコチラ
『ダイヤモンド』のコンポーネント (部品。ボードゲームでは「使う道具」「付属品」のこと) に
この探検家コマが入ってるのですが、カードを使うよりも視覚的に分かり易いので、
漫画ではこちらを採用したんでしょう。
だったら『インカの黄金』ではなく『ダイヤモンド』をやれよっていう話になりそうですが、
『ダイヤモンド』は絶版になってるからという事なんでしょう。
読者が手に入れられないようなゲームを紹介されても困りますしね。


内容に関しては、構造的なことは既に単行本の記事で書いたので、あまり書くことはありません。
いつもの様に、あくまでキャラがメイン。
キャラを引き立てる為のゲームという構成になってます。
放課後さいころ倶楽部ゲッサン2013年11月号 p144 中道裕大

このシーンはベタですが良かったかなぁと。
ある状況で同じ反応/別の反応をすることによってキャラを表現する。
アヤとハナが物おじしないという点で姉妹であると。このブログで言うところの「ロールプレイ」です。


放課後さいころ倶楽部ゲッサン2013年11月号 p138 中道裕大

やはり中道先生、綺麗系は映えるんですよね...
それにしても「凶犬のキョーコ」て。
というかその次のページがカラーで『ふだつきのキョーコちゃん』なんですが、やっぱ意識したんですかね?
まぁキャラの名前覚えやすくていいですがw


ふだつきのキョーコちゃん
今回は文句なしの◎。

ただ、1話目でも感じた事ですが、どうも32p前後は長いような...
今回くらいの内容だと、もう一つくらい伏線入れても良いような気はします。
意外性も足りない気がしますしねぇ。
少しキャラ増やせば、それも解消されるのでしょうか。
3人のやりとりだけでは間が持たないという風にも取れますし。

先月の記事でこう書きましたが、意外性を除けば指摘は全く的を得てないという...
前回まで32p前後が長く感じたのは確かですが。


まず、3人でも何とかなりましたねw
最大の原因は、日々野さんが絡んでるページは前回は6p前後だったのが、
今回は倍増してることではないかと考えます。二人で間を持たせるのは大変。
そして伏線。
ふだつきのキョーコちゃんゲッサン2013年11月号 p153 山本崇一朗

1話目はプロトタイプ『まちにまったおとなりさん』 の焼き直しなので展開は読めましたし、
2話目はミスリードではなく、逆にリードする流れだったので意外性は無かったんですが、
今回はきっちり出してきました。
個人的にはやはり意外性あった方が面白いです。間さえ持てば伏線一つで十分ですな。
(と、書くことがコロコロ変わるという)


あと、今回は萌えの部分も。
以前から萌えに必要な要素は
「キャラ」と「シチュエーション」と「接触プレイ」の3つではないかと書いてますが、
ふだつきのキョーコちゃんゲッサン2013年11月号 p154 山本崇一朗

正にそういったシーン。
右下のコマがケンジ (札月兄) の目線に近い構図なので、より感情移入し易くなっているかと。
1、2話目は少し心配でしたが、この分なら大丈夫そうですね。
個人的には山本先生への期待度からすれば、今回ぐらいのクオリティは最低限出して貰わないと困ります。



◎ あやしや
日常パートの方が人気らしいですが、いやはや熱血もイケます。
『あやしや』 ゲッサン2013年11月号 p198 坂ノ睦

このシーンの為の咲の髪型だったんでしょうか。


個人的には、冒頭の回想が若干紛らわしかったです。
一瞬、顔のない鬼に襲われた後の話かと。
そう考えていると、どうも話が繋がらないのと、顔のない鬼に襲われたのが涼重だっけと思いだしたので、
ああなるほど以前の話かと思い返したのですが。
倒れてるのが涼重だと書いてくれれば、そういう思い違いも無かったでしょうけど。
まぁ、そこまで親切にする必要は無いのかなぁ。


◎ アサギロ
このテキトーさ加減 (ある意味豪快) がいいですね。


ハレルヤオーバードライブ
相変わらず。
ハレルヤオーバードライブ!』 ゲッサン2013年11月号 p275 高田康太郎

「未熟さすら武器になる」こういう事ってありますよね。
全然次元の違う話なのかも知れませんが、『ハヤテ』の『木の芽風』綾崎ハヤテVerが個人的に好きで。

歌の上手さから言えば圧倒的にIKUさんに軍配が上がりますが、
綾崎ハヤテVerは下手とは言いませんが、未熟なりの味があるんですよ。


まぁ『ハレルヤ』の1巻辺りはまんま「未熟さすら武器」でしたw
とは言え、未熟であればこういった味が出るという訳ではなく。
『フリースタイル』 ビッグコミックスピリッツ増刊 漫戦 2002年11月17日号 p204 高田康太郎

...ね?w


◎ 鉄楽レトラ


月曜日は2限から
個人的には悪い意味で相変わらず。て言うか重版ってマジですか...
コミックえもん!の重版リストが更新されてないので、驚きました。
だったらこのままでいいんでしょうなぁ。


◎ ひとりぼっちの地球侵略
相変わらず、各キャラの思惑が渦巻いてる感じが読んでて楽しいです。
それを描く状況を作るためのカップリングですよ。


過去編も終わり、ここからが本番。
『ひとりぼっちの地球侵略』 ゲッサン2013年11月号 p404 小川麻衣子

夏が終わるまでの物語なんでしょうか。それでも全8巻くらいにはなりそうですが。
『車輪の緑は夕暮れの青』 週刊少年サンデー超 2008年5月号 p89 小川麻衣子

ひと夏のできごとを描いた読切を5年前に描いてたりしますし。
というか、小川先生の過去読切の単行本出ませんかねぇ...
この作品と『GREEN RAY』『インタールード』は本当に良かったですし。
何ならminiに掲載でも...


◎ VANILLA FICTION
黒ベタに白抜き文字オンリー、久々にやると効果出ますな。
2回目までは意外性になりますけど、次やる時はさすがに意外性は出ないでしょうから、
いかにして「アレが来るか!?」と期待感を抱かせるかでしょう。


◎ ちろり
ある意味道具回。
上品と粋は似て非なるものだという事でしょうか。
パターン的には花見回と同じですね。


アオイホノオ
アオイホノオゲッサン2013年11月号 p517 島本和彦

この味を知ってしまったら、止められなくなるでしょうなぁ。


くちびるに歌を


○ 切り裂きウォルター
うーん、今回に限ればもひとつ。
まぁ意外性ばかりアテにすると大変なので...
今はともかくキャラを掘り下げる事が大事ですし。


× つるの恩倍返し かんばまゆこ
見事に出落ち。
深夜3時頃に思いついたようなネタ出されてもなぁ...
台割が決まってから超特急で穴埋めする為に描いた漫画とかならまぁ、理解はできます。


◎ 時坂さんは僕と地球に厳しすぎる。
この回を含めてラスト3話。

4〜5巻で終わらせるには勿体ない作品だと思うんですよね。

20話の記事で危惧してましたが、予想は裏切られず。
アンケートは割と良い方らしいですけども。単行本の売上の問題でしょうかねぇ。
客観的にみれば、現状終わらせるならこの作品になりますし。
もしくは、原作付きの話がありそうな感じが...


それはともかく。
『時坂さんは僕と地球に厳しすぎる。』 ゲッサン2013年11月号 p654 田中ほさな

いやー、素晴らしい。
実際、地球温暖化が正しいか否かの議論は、以前に比べて否定派が勢力を巻き返してきています。



田中ほさな 最終的には、「エコロジーの嘘は嘘」というのが学会で定着するに至った。要するに、数字による裏付けというのはどの数字を取捨選択するかで、その意味合いが大きく変わってしまう。その全てを検証し、どれがエコとして間違っているのか?という結論を出すのは学者でも容易ではない(続く) link
だからこそ、自分で考えろと。懐疑的思考を持てという事に...なるんでしょうか? 資材をすり替える辺りは意外性ありましたし、 りょう先輩がさらわれた後の駆け引きもなるほどと思わずにはいられません。 やはり面白い作品を描ける作家さんではないかと。 ただ、作家のポテンシャルを最大限発揮できる作品だったのかどうかは、また別の話になるのですが。 ◎ ぼくらのカプトン まー2本目でしょうねw 『ぼくらのカプトン』 ゲッサン2013年11月号 p654 あずまよしお 理想を言うとこの手の話は全く触れないで読者が勝手に妄想して貰うのが一番なんですが、 そういうムーブメントも無い事ですし、呼び水としてやるのも一つの手でしょう。 毎回1話はこの路線でも良さそうです。 あおにの空に竜は哭く で、こちらもその路線で行ってるんですけど、どうなんでしょうね。 男性からみれば面白くも何とも無いですが、それは『よしとおさま!』も同じなので... ◎ ツール・ド・本屋さん 知ってても改めて面白いと思わせる本屋さんの話が2本。 ネタが良いのは確かですが、描き方も実にいいです。 全国の書店は1999年度に比べて1/3以上減少し、歯止めが掛からない状態です。 原因はアマゾン、さらには電子書籍という競争相手が増えたことよりも 本・雑誌の市場規模自体が縮小してる事の方だと勝手に思ってるのですが、 実際はどうなんでしょう。 その上、市場規模が縮小してるが故の小ロット多品種への転換があり、 書店はそれに対応する為のコスト増にも見舞われています。 売り場によっては1日目は平積み、二日目は棚差し、三日目には倉庫行き といったローテーションになってる所さえあるらしいですし... そういった厳しい環境の中で、果たして書店はどう生き残っていくのか。 『ツール・ド・本屋さん』 ゲッサン2013年11月号 p739 横山裕二 試みの一つとして、「目利き」 本屋大賞のように書店員が選ぶ賞とかはありはしますが、 その人に合った本をプロの目で選ぶというのはなかなか面白い試みだと思います。 もう一つの話は、 『ツール・ド・本屋さん』 ゲッサン2013年11月号 p742 横山裕二 市内の本屋が一度全滅した留萌市での 『ツール・ド・本屋さん』 ゲッサン2013年11月号 p744 横山裕二 「本好きを増やす活動と、気軽に本が手に取れる環境づくり」 この2つの試みが成功するかどうかは分かりませんが、方向性としては正しいように思います。


GRGR 本屋ってのは、人と本を繋ぐ場所であり、本を通じて作家とを結びつける場所なんですよ。電子書籍のサイトも場と言えば場だけど、コミュニティってのは二つあって... って、出る前に話長くなりそうだから自重。 link
以前一丁前にこんなことつぶやきましたが、本屋とは本を通じて読者と作家を結びつける「場」だと考えてます。 本屋が失われると、必ず作者と読者の結びつきは薄れていきます。 それをどう防ぐか。 読者と本との繋がりを書店員という人を介して結びつきを深める。コレしかないと思います。 一方でいかに本屋と作者との結びつきを深めるか?を考える必要もあるでしょう。 実際には間に取次と出版社が入るのですが、取次は書店に卸そうがamazonに卸そうが関係ないですから... そういう意味では、営業ではなく何故か漫画家本人が書店に出向くというこの漫画は、 画期的なのかもしれませんw ちなみに、「コミュニティーってのは二つあって」のくだりは 『放課後さいころ倶楽部』の記事、The Structure of "After School Saicoro Club" #3で触れたので参考に。 「橋渡し型」と「結束型」のくだりです。本屋は地域に拘束されるので「結束型」に近いです。 で、『ツールド』とはだんだん話が逸れていってるところにさらに逸れますが

 藤村さん、嬉野さんと酒席を共にした時、お二人が「水曜どうでしょうは"場"になった。だからもう企画やストーリーに依存しなくても大丈夫なんだ、4人が無駄話をしながら旅をしてるだけで。」と話していたことがとても印象的でした。娯楽の究極の姿で、立川談志師匠の高座やあたち充作品が到達した地平と同じなんだと思います。


 ゲッサンという雑誌自体も早く確固たる"場"に成長させたい。今、強くそう思っています。多くの新人作家さんが漫画家さんになる"場"であり、多くの連載作品が世に出て行く"場"であり、多くの読者の皆さんにいつも魅力的な漫画が揃っていると思ってもらえる"場"でありたい。そのたみに僕は今を生きています。
ゲッサン編集部こぼれ話』 ゲッサン2013年11月号 p735 市原武法

あだち充作品がそういう境地なのかは素人には分かりませんが、
(言われてみるとそんな気もしなくもないような)

雑誌というのは漫画家さんの作品を単に寄せ集めたものではなく、コミュニティだと思うんですよね。

2013年6月号の記事でこう書いていたので、我が意を得たりです。
では編集部と作者との繋がりは間違いなくありますが、編集部と読者の間でどんな繋がりがあるのか?
読者ページのないゲッサンで (別に作る必要も無いと思いますが) 何か考える必要があるのかもしれません。
まぁ具体的な案は無いのですけどもw
マチアソビでゲッサンの作家さんのサイン会が今日ありますが、
他の場所 (まずは東京って事にはなるでしょうが) でもサイン会をやってみるのもアリなんじゃないですかね...?
高田先生はサイン会何度か断ったらしいですけども。