埃の王子様

前作『爪隠の鳥呼』の記事はコチラ
★★★★☆

埃の王子様
どうもこの作家さん、惜しいですなぁ...


スリランカの伝説を元に、という事らしいですが、恐らくオチの部分をアレンジしたんでしょう。
このテの話は割とどこにでもある内容で、
例えば、『二童敵討(にどうてきうち)』という組踊 (沖縄の能) が割とこんな話です。

柄や宝飾品は見ていても、描いていても楽しいものですね。

この辺りはさすがデザイナーな学校に通ってただけあるなぁという辺りを見せてましたし、
舞も躍動感溢れてる感じに描けていたと思います。
脇キャラはもうちょっと何とかならんかなーという気もしますけど。


元の伝説は王子がダンサーに成りすまして暗殺し、復讐を果たす...という内容だと想像しますが、
そこをアレンジすることによって意外性を出す。そこまでは良かったと思います。
『埃の王子様』 p33 岡村美里

家臣を説得するこのシーンも決まってますし。


ただ、オチが惜しい...
より意外性を出そうとしたのか、ミスリードだったりメリハリといったものも狙って、
家臣が手を下すシーンを後で回想に持ってきたんでしょうけど、
逆に盛り上げるシーンが分断されて、間のシーンが水を差す形になってしまったんじゃないかと。
『爪隠の鳥呼』でも一番絵で魅せられるホードのシーンを内容的に盛り上がる前に持ってきてましたし、
この作家さんの悪い癖なのかもしれません。


とは言え、絵が引き立つような演出だったり、リアリティに関しては問題なかったですし、
ちゃんと捻って欲しい所では捻ってるので、後もう一歩という気はします。