ゲッサンmini 3 (ゲッサン201309別冊付録)

きゅっきゅぽん先生、カラーも綺麗。
ゲッサンmini 3 (ゲッサン2013年9月号別冊付録) p1

印刷だとちょっと損してる感じはしますけども。
縮小すると多少マシになりますけが、この塗り方だとどうしてもドットが目立つ印象。


それにしても、連載中の『からかい上手の高木さん』は言わずもがな、今回のminiは大当たり。
今年読んだ読切の中で個人的に一番面白かったのは、
サンデー本誌に掲載され、以前記事にもした『レジチョイサーよしえ』ですが、
『ストロベリー』『カプセル・ツアー』『アルフレッド伯爵』はそれに次ぐクオリティでした。
ここまで面白い作品が並ぶと、編集者のアドバイスが適切なのか... とか思っちゃいますね。


からかい上手の高木さん
正直、本誌の『ふだつきのキョーコちゃん』より面白いですなー。
まぁコチラは基本的に似たような事の繰り返しなので、作者のポテンシャルを上げるためには
『高木さん』より『キョーコちゃん』の方が適してるのかもしれませんけども。


西片くんが高木さんの掌の上で踊らされるところがこの漫画の面白い所ですが、
その為には高木さんが西片くんの思考を読みきる必要があります。
どちらも作者が考えてる事ですから、それ自体には何のハードルはありません。
ただ、選択肢がいくつもあるような状況でも読みきると、ご都合主義な印象が出かねません。
昔からの付き合いだから何を考えているか分かる、といった所でも説得力は出せなくもないのですが。
からかい上手の高木さんゲッサンmini 3 (ゲッサン2013年9月号別冊付録) p11 山本崇一朗

そこを、キャラ萌えにも繋がる高木さんの仕草やセリフなどでミスリード
こうする事によって、ご都合主義な印象は薄れますし、
高木さんの駆け引きにまんまと西片くんが引っかかってる事にもなるので、より踊らされてる感が出ます。
そして、読者もまんまとミスリードされるよう、高木さんの本心は常にはぐらかすよう、
ノローグは常に西片くん視点になってます。


構造はかっちり決まってるので、ネタさえ続けばいくらでも続けられるようになってると思います。
それが故に、この構造の中でどう変化をつけるのか、塩梅が逆に難しそう。
あまりにも変化が無いとワンパターンに陥りますし、
変化し過ぎると「いつもの」を期待してる人から不満が出そうで。


ぎんがみと八月 きゅっきゅぽん
★★★★★
読めば大体分かると思いますが、長崎のお祭りが舞台です。
さだまさしの『精霊流し』が有名ですが、全然イメージ違うんですよね。

ちなみに、精霊流しは地域によっては微妙に違いがあり、
小さな船を実際に海に流す地域もあるようです。 参考
昔は流した船はそのまま放っておいたらしいですが、最近はちゃんと回収するようで。


閑話休題
『ぎんがみと八月』 ゲッサンmini 3 (ゲッサン2013年9月号別冊付録) p44 きゅっきゅぽん

相変わらず何で面白いのか良くわからないきゅっきゅぽん先生の作品ですが、
キャラは丁寧に描けてたり、最後で意外性を持ってきてたりと、
単に独特の作風というだけではない所も見せています。
これからも私がコメントに困る作品を作り続けて頂ければ。


赤い電車 青い電車 小山愛子
★★★★☆
mini2に掲載された『ブレザーと眼鏡』とほぼ同じ系統。
時期的にはこちらが先なんでしょうか...?
赤い電車 青い電車』 ゲッサンmini 3 (ゲッサン2013年9月号別冊付録) p68 小山愛子

『ブレザーと眼鏡』は「似てることでテンションが上がる」作品でしたが、
こちらは逆に「違うから同じになりたい」作品。
男性に無いといえば嘘になりますが、やはり女性の「楽しい」ってのはこういう事なんでしょうね。


ストロベリー フィールズ フォーエバー マツセダイチ
★★★★★
で、その「電車」「同じ」「女子二人」
といった辺りが被ってる作品の後ろに持って来られてるという...


前作『六角少女関係』はちょっとアレでしたが、
個人的に良いと思ってた前々作『A Day In The Life』よりもさらに良かったんではないかと。
まぁページ数の違いもあるんでしょうけど。


『ストロベリー フィールズ フォーエバー』 ゲッサンmini 3 (ゲッサン2013年9月号別冊付録) p85 マツセダイチ

私は効率厨な所があるので、
このブログでも「その作者が向いてそうなこと」に関心が行きがちです。
しかし、結局のところ本人がやりたいと思わない限り、実を結ばないんですよね。
やりたい事だと必ず実を結ぶとも限りませんけどもw

若木先生のアシスタントからは数多くの才能ある漫画家が生まれています。どんなことを念頭に置いて教えているのか、漫画家を目指そうとする方に向けてメッセージをお願いいたします。
若木 これも質問1、2で言ったこととつながってるのですが……、自分の仕事場に入ってる漫画家志望のスタッフには「自分が何者なのか、何者だったのか、思い出そう」と言ってます。優れた漫画を読んで勉強するのと同時に、自分と向き合う。
 よく「自分に向いてるものって何か、考えてます」とか言ってる人がいますが、本当に得意なものというのは、考えなくてもポンポンわき出るような部分のことをいうのです。ボクの場合は、自分がいつまでも話せるのは、ラブコメ話とゲーム論だったわけです。そしてそれはどんな人でも1つは持ってるものです。だから誰でも1回は連載できる、とも言っています。自分に向き合いましょう。
「新世紀少年サンデーコミックグランプリ」は少年サンデーに何をもたらすか」 ITmedia eBook USER

マツセ先生は自分と向き合って、何が得意かを見いだせる、もしくは見いだせたのでしょうか?


『ストロベリー フィールズ フォーエバー』 ゲッサンmini 3 (ゲッサン2013年9月号別冊付録) p83 マツセダイチ

この後のシーンは特にいいですね。このページだけでも十分コメディになってますけど、
『ストロベリー フィールズ フォーエバー』 ゲッサンmini 3 (ゲッサン2013年9月号別冊付録) p84 マツセダイチ

ページをめくった所で意外性を出しつつコメディの続き。さらには運動神経が良いというキャラ描写も兼ねる。
こういうちょっとしたシーンがちゃんと面白いんですよねぇ。


丁寧にキャラ描写をしつつ、きっちり意外性を盛り込み、マツセ先生特有の爽やかが出ていて、
読切としてはほぼ完璧に纏まってるんじゃないかと。
少なくとも私からみてツッコミ所は、何故コマの横線が全部傾いてるのか?って所くらいですw
いやまぁ何かしらの意図があるんならいいんですけどね。


錦田警部はどろぼうがお好き かんばまゆこ
★★★★★
何回か同じ事書いてますが、かんば先生の読切今までで一番面白いですね。
それだけ成長してるって事なんでしょうか?
『錦田警部はどろぼうがお好き』 ゲッサンmini 3 (ゲッサン2013年9月号別冊付録) p110 かんばまゆこ

ボケツッコミのテンポは前から出せる人ではあるのですが、今回はネタが良かったです。
ボケがキャラ紹介も兼ねてますし、だからこそ天丼で使え、かつ細かい設定がより活きると。
個人的に笑える所までいきませんでしたが、十分ニヤニヤはできました。
これもツンデレなのかなぁw


無理してギャグを捻り出すより、この作品のように、
ある程度セオリーに基いて考えたコメディの方が向いてるのかも。
ギャグは好みが分かれるので、
ギャグよりは分かれにくいコメディだから個人的に楽しめただけなのかもしれませんけど。
作者本人がギャグやりたいにせよ、質の安定の為にもコメディを絡ませた方が良さそうです。
何にせよ、この読切は本誌に載せた方が良かったんじゃないかと思いました。ちょっと勿体無いです。


ケーキはどこへ消えた? 森茶
★★★☆☆
8p漫画としてはボチボチ。
『ケーキはどこへ消えた?』 ゲッサンmini 3 (ゲッサン2013年9月号別冊付録) p120 森茶

姦しい、賑やかな感じは楽しいですし、ちゃんとオチも用意。
悪い点は見つかりませんけど、そこまで面白いって感じではないような。


蘇るアルフレッド男爵 Mizumo
★★★★★
ゲッサンmini 3 (ゲッサン2013年9月号別冊付録) p163

正直、甘く見てました。
『蘇るアルフレッド男爵』 ゲッサンmini 3 (ゲッサン2013年9月号別冊付録) p120 Mizumo

あまり見栄えがしない絵、思いっきり厨二病な設定。 (それはそれでアリですが)
何かベタな漫画だなぁと思って読む気無くしかけた後に
『蘇るアルフレッド男爵』 ゲッサンmini 3 (ゲッサン2013年9月号別冊付録) p120 Mizumo

一捻り。で、主人公視点で話が進んでいき、転の段階でまた一捻り。
しかも導入部分を活かすような捻り方。いやー、本当に良く出来てます。
キャラもロールプレイさせてますし、ちょくちょく挟む伏線も効果的。
後は絵だけですわ。下手では無いと思うので、経験を積めば見栄えも良くなっていくでしょう。


カプセル・ツアー 笹乃さい
★★★★★
ゲッサンmini 3 (ゲッサン2013年9月号別冊付録) p164

デビュー自体は随分前にしていたのですが、色々あってしばらく漫画から離れていました。
これが再出発になります。どうぞよろしくお願いします!

名前や状況が酷似してるだけなので別人の可能性はありますが、 恐らく笹沼さい先生でしょう。
以下経歴。

まんがカレッジ2006年 9・10月期に『CRAW』で努力賞
サンデー超 2007年11/25日号に『神の留守』掲載
サンデー超 2009年1/25日号に『氷の国のキンカ』掲載

で、内容ですが。
正直、甘く見てました。
『カプセル・ツアー』 ゲッサンmini 3 (ゲッサン2013年9月号別冊付録) p172 笹乃さい

女の子はそこそこ可愛く、絵柄はスッキリしてるものの若干旧い絵柄、
少女漫画チックなまったりとした導入と、クラサンにありがちなベタな作品かなーという印象でしたが、


『カプセル・ツアー』 ゲッサンmini 3 (ゲッサン2013年9月号別冊付録) p180 笹乃さい

ところがどっこい。これが実によく出来てます。
宝探しのワクワク感、ちょっとした意外性、回想シーン、伏線、キャラ描写。
その辺りが丁寧に描かれていて、非常に好感が持てます。これは即戦力ですわ。


実力があるのは分かったので、オリジナリティをもう少し出せる工夫を。
別に世界を救う必要はありませんが、世界観みたいなものは欲しい気がします。
後は絵柄を今風に。