ゲッサン201304

ゲッサンminiに関しては別記事で。
基本的にこのブログは前のページから順に批評していきますが、今回は新連載4本から。


くちびるに歌を
かなり厳しめですが。


原作はかなり評価が高いらしいので、いずれ面白くはなっていくのでしょうけど、
第1話から面白いという感じにはならないっぽいですなぁ。
これに関しては原作のことを考えると致し方ないのかもしれませんけど、
どうもコミカライズが上手く行ってる感じには思えないんですよね。
『AURA』1話のような「文章が透けて見えるような印象」ではないので、
漫画用に再構成はしてあるんでしょうけども。
くちびるに歌をゲッサン2013年4月号 p164-165 原作:中田永一 漫画:モリタイシ


間の取り方なんでしょうかねぇ。
先月「空気感は出せる作家」と書きましたが、それを描こうとしてる心意気は感じるんですけど、
雰囲気自体はちょっとあらららな感じ。


放課後さいころ倶楽部
ちと甘めですが。

以前ゲッサン編集長は、作家が一番好きなものを描かないと、
面白い漫画は生まれないという哲学を語ってくれました。
その意見には個人的には全面的に賛成です。
作家が好きなものを作らずに、何を作るのか。何が作れるのか。


ならば、変わりゆく興味の対象のなかで、今何が一番自分の中で面白いと感じるのか、
きちんと見極める必要がありました。
去年一年描くことから離れて、自分の興味を持ったことを思いつく端からやってみて、
今回の連載企画が生まれました。
webゲッサン 中道裕大先生より 第1回

『ツール・ド・本屋さん』1巻の記事にも書きましたが、ここがゲッサンの良い所なんですよね。
うろ覚えですが、ゲッサン創刊号の付録か何かで、四位春果先生が市原編集長から
「BL描きたければBL描けばいいじゃない」的な事を言われてたような記憶があります。
小山愛子先生も度々「『PING PONG RUSH』描いてる時は辛かった」と吐露されてましたし。


週刊少年サンデーは、担当さんによるでしょうけど、基本的に作家さんが「やりたいこと」より
「向いてそうなこと」を描かせる傾向にあると感じていますが、作家のモチベーションの問題以上に
「その判断が妥当かどうかは限らない」という問題があるんですよね。
担当の無謬性 (間違わないこと) を前提にしてるので、失敗すると目も当てられません。

ただまー、個人的には中道先生の描くオッサンは超絶カッコいい割には女の子はちょっと微妙だったので、
その辺りどうかなぁという不安はあります。まぁ肝心なのは中身ですけども。

で、先月号でこう書きましたが、
どっかで (またうろ覚え...) 『月の蛇』ではオッサンばっか描いてたので、今度は女の子を描きたい的な
事を書いてた気がします。


※追記:

「月の蛇」でおっさんを描きすぎた反動で、今は可愛い女の子が描きたくて仕方ありません。
ゲッサンmini 1 (ゲッサン2013年4月号付録) p25 中道裕大


放課後さいころ倶楽部ゲッサン2013年4月号 p265 中道裕大

個人的には中道先生の綺麗系女子が超絶好みなんですが、可愛い系はもひとつですなぁ。
まぁ私の好み自体の問題かもしれませんけども。


内容的にはワクワク感が漂ってるという意味では悪くないんですが、ボードゲーム漫画なのにも関わらず
1話目で全く出てこなかったりと、展開がえらいスローなのが気がかりです。
まぁジャンル的にはまったり系の方が合いそうですけども。


あおにの空に竜は哭く

まぁこの人の描く漫画は男性に受け入れられる素地を作れるかどうか、
もしくは男性以外でどれだけ支持を得られるかに掛かってるような気はします。
女性らしい作品がいくつか根付いてるゲッサンなので、後者が解なのかもしれませんけども。

先月号でこう書きましたが、後者できました。まぁ作者が描きたいのはこういう雰囲気でしょうから...
『あおにの空に竜は哭く』 ゲッサン2013年4月号 p375 瀬戸ミクモ

これで人気が出ればそのままでいいんでしょうけど、
作者の「描きたいこと」は押さえつつ、「描かなきゃいけないこと」 (=人気を出すために)
をどう取り入れるか?というのが必要になるかもしれません。
個人的にはスルー対象の作品が増えたな、といったところ。
以前に比べればストーリーに寄せてきてはいますけども。


◎ 切り裂きウォルター
期待は裏切られ、予想は裏切らない... と書くとダメだったように思えますが。
『切り裂きウォルター』 ゲッサン2013年4月号 p468 中原開平

ここ最近何度か書いてますが、伏線で想像する余地を残しながらも意外性を出す。これが徹底されてますね。
なので、ご都合主義な印象を全く与えることなく、
「この先どうなるんだろ?」というワクワク感がかなり出てるんじゃないかと。
意外性をきちんと盛り込める作家さんなので、新連載もそうなるだろうという予想は裏切られませんでした。
個人的には大満足。相変わらず読んでて気持ちがいい作品を描く作家さんだと改めて。


期待の絵の向上については正直まだまだかなぁと。
まぁ絵に関してはあまり大した事は言えませんが、
『切り裂きウォルター』 ゲッサン2013年4月号 p464-465 中原開平

動き自体は悪くないですし、この見開きのように顔を出さなければ見栄えが悪いとは感じないので、
単純に顔の描き方の問題だと思われます。
どうすれば見栄えが良くなるか?ってのは正直全く分かりませんけど、
私のような素人だと瞳の描き方が変わるだけで大分印象も変わりそうです。
また、顔がネオテニー (幼児) 的なのと、シリアスなストーリーがミスマッチになってると今気づきました。
たまに可愛らしい感じが出せれば、ギャップになり得るかもしれませんけども。


◎ ひとりぼっちの地球侵略
キャラ描写がホント上手いなーと感心します。
『ひとりぼっちの地球侵略』 ゲッサン2013年4月号 p47 小川麻衣子

どのキャラがどう考えてるか、どの情報をどのキャラが持っているか、どのキャラ相手にどう対応するか、
などが丁寧に描かれてるんじゃないかと。まぁ私のいつもの見方ですがw
『ロールプレイ』『カップリング』『ミスディレクション』です。


◎ ハレルヤ オーバードライブ!
暫くは時間が出来そうなので、来月辺りから単行本単位で記事を書こうと思ってます。
まぁあくまで予定ですけども...

さすがにバンドの解散を賭けるとはならんとは思いますが。
リスクが大きいとかじゃなくて、賭けとして面白い感じはしませんし。
例えば、楽器を壊すとかならてめー音楽愛してないだろ的な怒りが沸いてきそうですが、
イラつかせる何かであって欲しいですね。

先月こう書きました。バンドの解散も賭けの対象にはなりましたが、
『ハレルヤ オーバードライブ!』 ゲッサン2013年4月号 p109 高田康太郎

ハルさんが生贄に。正に「イラつかせる何か」でいいですね。
正直言ってこのシーンの前は「次はティアドライブが勝つ展開になるだろう」とタカをくくってましたが、
ラプンツェル的展開もオイシイと考えると、また負けるのもアリかなとも思えてきました。


ここが噂のエル・パラシオ
相変わらず謎で引っ張ってますが、相変わらず地味ですなぁ...

無理矢理お色気シーン入れたりと工夫はなされてますけども。
個人的にはちょっと露骨だなと感じますが。


◎ あやしや
日常をとりもろす。
『あやしや』 ゲッサン2013年4月号 p197 坂ノ睦

密かに良いシーン。
上の『地球侵略』でもリンクを貼った『ハヤテ』記事の、
ヒナギクと西沢さんの関係が変わるのと相似ですね。
情報や考え方が新たに加わることで、関係性が変わる。


◎ アサギロ
いやーおもしれー。
上がどういう考えで策を受け入れたかが描写されるといいんですが。


◎ アオイオホノオ
いやーこれは素晴らしい
アオイホノオゲッサン2013年4月号 p300 島本和彦

私も漫画を酷評することがありますけど、何かしらの作品を作ったら酷評される自信はありますね!
(昔flash職人でしたが、アレは基本的に元ネタというか原作がありましたし)
色々能書きを垂れてますが、それ自体が正しいかどうかは分かりませんし (大抵間違ってるでしょうけど)
仮に正しい箇所があっても、それを作品に落としこめる気がしませんw
『get the sun してみる。』 ゲッサン2013年4月号 p732

編集長が今回の「アオイホノオ」に「これを読んだら若い漫画家や、アニメーター予備軍は間違いなく絶望するでしょうすばらしいです!!」という嬉しいようなよくわからない大賛辞を贈ってくれました(笑)。
いわく「どんどん絶望させてやりましょう!!どんどん!!」だそうです!
みんな負けないで(笑)!!!!かく言う私も今回のを描きながら過去最高に胸が締め付けられましたが!!!

経験が少なければ失敗する確率が高くなるのは当然のことであって、
だからこそ失敗することの想像力に欠ける無謀さが若者には備わってるんだと思います。
希望を持ってるからこそ絶望する訳ですしね。


リンドバーグ
ホント迫力がありますねぇ...


○ ぼくらのカプトン
2本目は最初うーんと思いましたが、柱がオチなんですねw


◎ ちろり
当時の雰囲気を描きつつの、のんびりがテーマ。素晴らしいですね。
対比のさせ方もいいです。
日本茶屋ではなく喫茶店やってるのにと突っ込みたくなりましたが、
そう突っ込むのは無粋ですわなw


月曜日は2限から
やはり個人的には微妙ですが前回よりはマシ、前々回と同じくらいですかね。
「ねつい」って形容詞、初めて知りました... もうオッサンなのに...


○ 時坂さんは僕と地球に厳しすぎる。
前回で化けたと書きましたが、今回はうーん...

構造的な問題はほぼ解決したと見ていいので、後はキャラにファンを付けることができるかに掛かってると思います。
一応萌えシチュ的なものは振りまいてますので、どれだけ喰いついてくれる読者がいるかですねぇ...
前にも書きましたが、キャラの外見にも多様性が欲しいところ。
月音はフツーですが、他の3人巨乳キャラですしね。

前回の記事の最後でこう書きました。
正にそれが試される回となりましたが、これで喰いついてくれるかどうか...


キャラに基本萌えない人なのであくまで私の想像ですが、キャラ萌えを惹起するには
いかに照れを描くかだと思います。さすがにココは出来ています。
『時坂さんは僕と地球に厳しすぎる。』 ゲッサン2013年4月号 p612 田中ほさな

ただ、それまでなんですよね...
それに加えて唯一巨乳かどうか判別付かなかった白羽も巨乳だったりと、
多様性にも問題ありますし、胸に自信のない女性は読んでていい気はしないんじゃないかと。
メイド服のデザインが全部違ってたりと頑張ってはいますが、頑張る方向が違うような。


照れで萌えを惹起し、補強するのがしぐさとシチュエーションとチラリズム接触プレイだと思うのですが、
ココがどうも弱いんじゃないかと。
『時坂さんは僕と地球に厳しすぎる。』ゲッサン2012年1月号 p245 (1巻 p129) 田中ほさな

今まででそれに該当するのって、このシーンくらいですしねぇ...
これは しぐさ+シチュエーション+チラリズムの3拍子揃ってます。
エロを入れるかどうかは作者の描きたいように描けばいいと思いますが、
4つの要素は作者が「描かなきゃいけないこと」でしょう。


上の『エルパラ』では接触プレイの画像を引用してますが、
『時坂さん』だと1話でそれに近いシーンが一つあるだけですしね。
『時坂さんは僕と地球に厳しすぎる。』 1巻 p22 田中ほさな

元々目線萌えな人だからってのが影響してるのかもしれませんがw


夢原副会長が時坂さんとコミュニケーションを取らざるを得なくなる展開や、
宗也が行かないと言った次のシーンで変装して来店してたりと、
ストーリー的には悪くなかっただけに、キャラにファンを付けるところまで行ってなさそうなのが残念です。
いやまぁコレでウケてればいいんですけども。
読んでない作品を例に挙げるのはちょっとアレですが、
たぶん『ノ・ゾ・キ・ア・ナ』辺りが参考になるんじゃないかと思いますね。


○ 6のトリガー
今回悪くないですね。
銃撃戦から接近戦へと移行するのに意味を持たせたりと、駆け引きがちゃんとできてます。
キャラ同士でも、読者に対しても。


信長協奏曲
信長協奏曲ゲッサン2013年4月号 p703 石井あゆみ

相変わらず松永のオッサンかっけぇ。
この後MQNこと森長可が感銘を受けたというシーンになりますが、
果たしてサブローも影響を受けるのかどうかが気になります。
動機が「信長の代わりになるなら歴史どおりに天下統一しなければならない」でしたから。
そういう伏線かどうかは分かりませんけどねw


◎ ツール・ド・本屋さん
前半は島根編ラスト、後半は2012年謝恩会の模様。
謝恩会の話を3月にされてもという気は若干しますが、まぁ仕方ないですなw
『ツール・ド・本屋さん』 ゲッサン2013年4月号 p714 横山裕二

1巻の記事にも、それ以前にも何度か書きましたが、ローカリティは大事。
漫画でキャラの個性をどう描くかは非常に重要な要素であるのと同じように、
旅漫画ではその地域の特徴をどう描くかが肝心だと思うんですよね。


謝恩会も面白かったですね。特にあだち先生の話は。
個人的にはTALI男ことタカフミさんが毒舌家ということで、
『6のトリガー』を多少disっても大丈夫かな?と思ったり思わなかったり。
まぁ意外と毒舌家でも毒を吐かれる立場になると弱かったりしますが。 私を含めて。