OVER ROAD (読切) 高橋忠志

サンデーS 2013年3月号に掲載された読切です。
★★★☆☆
twitter
元『ハヤテのごとく!』アシ、元『ハレルヤ オーバードライブ』ヘルプ。
過去作はクラサン参照
新コミ受賞作『ガラクタ』は今でも読めます。

去年、広島から埼玉まで950キロを自転車で5日かけて走り、その時感じた事を原稿で書き上げました!
サンデーS 2013年3月号 p874 (目次)

この辺りは高橋先生のtwitterを遡って貰えれば(2012年7月頃)垣間見えると思います。
というか、この目次コメントでは往路が無かったことになってますねw



高橋忠志
高橋は心折れ三重亀山市がゴールになりました。 走行距離430キロ…うーん。
link


高橋忠志
今回何がダメだったかと言うと…地図(>_<)
link


高橋忠志
三重県がこの三日間で精神的に一番きつかった…
link


高橋忠志
どうやったら三重の僻地なんかに行くんだよ。…俺は(>_<) 素直に一号戦のみを走れば良かったものを…
link
別に恥をかかせたいからこれらのつぶやきを引用してるという訳ではなく、 『OVER ROAD』 サンデーS 2013年3月号 p378 高橋忠志 山道に突っ込んだ経験が、タイムスリップする演出になったんじゃないかと思うんですよね。 ひょっとしたら、ダートでも路面が硬ければ意外と自転車で走れるというのはこの時の経験からかもしれません。 そういう意味でも、その時感じた事を原稿にぶつけた読切ではないかと。 ただまぁ、それが成功してるかどうかはまた別の話で。 『OVER ROAD』 サンデーS 2013年3月号 p391 高橋忠志 ストーリー的にはこの画像にもある枷の掛けかたとその表現、 サンデーでは必須と言っていい「女の子の為に頑張る」展開など、押さえるべき所は押さえてる印象はあります。 ただまぁ難点もいくつか。 なして戦国時代に絆創膏があんねんという突っ込みはともかく、 ひとつめは、空詠大智先生の『揉み払い師』の記事で書いたことと共通してるのですが、

読切の段階では「揉むシーン」と「敵を倒す」シーンが別になってるので、盛り上げ所がブレてたんですよね。

これと同じで、タイムスリップした時と、現代に戻った時と盛り上げどころがブレてるんですよね。
しかもやることは一緒。チャリで抜く。
同じことを2度繰り返すことで笑いをとる... 所謂「天丼」をやるのなら話は別ですが、そういう訳でもなく。
現代の憎たらしいライバル相手に勝つ必要はあるので、繰り返すにしろ何かしら工夫が欲しかった気がします。


ふたつめは、枷の外し方。
この辺りは理論や意外性のある作品が好きだという個人的な好みと、
高橋先生の熱血を描きたいという趣向の差なのかもしれませんが、
枷を外すのがKIAIだけ、という点に物足りなさを感じます。
過去シーンはKIAIで抜くにしろ、例えばその時抜くことが気持ちいいんだという事を思い出して、
現代に戻った時に、転倒したトラウマよりも抜いた爽快感をもう一度味わいたいという気持ちが勝る、
という風になると、1度目とは少し違った演出にもなりますし、説得力も出るんではないかと。
自転車楽しいよ、という描写にもなりますし。
ただ、枷をKIAIだけで外してこその熱血、というのはありますから何とも言えない所ではありますが。


『OVER ROAD』 サンデーS 2013年3月号 p392 高橋忠志

みっつめは、意外性。
ライトが人魂に見えるという演出は、個人的になかなか面白いと思いましたが、
突然タイムスリップするという展開は良くあるパターンではありますし、
秀吉の草履の話は誰もが知ってるエピソードですからそこに意外性も感じませんし、逆にこじつけた感が。
たまたま鉢合わせたり出くわしたりといった辺りにも若干ご都合主義な印象があります。
偶然そうなるにせよ、何かしら理由があればそれも薄まるんですけど。


とまぁストーリー的には、要素は存在しているものの、それをどう面白さに繋げていくか?といった辺りに
工夫する余地はあったんじゃないかなぁという気はします。
一度過去行って戻ってきて... ってやると、色々制限されて難しい面もあるのは確かですが。


個人的に、内容は前作『プリマヴェーラ』よりは落ちる印象ですが、構図に関しては格段の進歩があったんじゃないかと。
受賞作『ガラクタ』ではそこに問題があると批判してたんですけどねw


『OVER ROAD』 サンデーS 2013年3月号 p371 高橋忠志

いやー、単純に格好いいです。
どうやったら迫力のある絵になるのか?というのはこのブログで何回か書いていて... 結論は出てませんが、
やはり迫ってくる描写ってのが解決方法の一つではあると思います。画角とかもあるんでしょうけど。


でもってスピード感もあるんですよね。しかも、いちいち格好いいw
自転車が好きなだけあって、その辺りが絵に表れてるんでしょうか?
スピード感は自転車を題材する場合には欠かせない要素なだけに、ここが表現できてるのはホント素晴らしい。
高橋先生が集中線マニアだからこそ表現できてるのかもしれませんが、(どこに違いがあるのか分かりませんけども)
『OVER ROAD』 サンデーS 2013年3月号 p396-397 高橋忠志

原因の一つとして、距離感があると思うんですよね。
車高の違いでスピード感が違うのは、地面との距離に違いがあるからで、
100km/hで普通に走ってるより、頭を地面スレスレで30km/hで走るほうがよっぽどスピード感が出ますし、怖いですw
恐らく映画『スピード』にスピード感があって、『スピード2』にスピード感が無いのもそれだと思います。
制作費は4倍くらいかけてるんですけども。


ともかく、この作品から判断するに、課題は意外性・ロジック・伏線。この辺りでしょう。
読切では分かりませんが、mob以外のキャラパターンも連載するとなればネックになる可能性はあります。
絵の迫力という武器を手に入れたので、そこを伸ばしつつ課題をクリアするか、って所でしょうか。
高橋先生は記憶力いいらしいんで、その辺りも出せればいいのにと思わなくもないですが。
主人公の特殊能力としてでもいいですし。