The Structure of "She is the Pop'n Princess" #4

という訳で、個人的に好きなネタを列挙してみようかと。
そして、ギャグの解説というサムい事をやるよ!


と、その前に。

ひめはじけ 2 (少年サンデーコミックス)

ひめはじけ 2 (少年サンデーコミックス)

今回の表紙いいですね。
前回微妙にdisったカラーの塗りは、恐らく画材は変えてないと思いますが、
1巻より良くなってるように感じます。まぁこの辺りは絵描かないのでよく分かりませんが。
デザイン自体も躍動感と可愛らしさが同時に出てるんじゃないかと。
半分くらいはデザイナーの仕事なのかもしれませんけども。


2巻では(というか全話通してという事になるかもしれませんが)、17話が最高でした。
ひめはじけ』 2巻 p50 クリスタルな洋介

個人的に読み直しても爆笑してしまうのがこのネタ。
ひめはじけ』のギャグのパターンの一つが「子どものいたずら」ですが、こんな発想どこから出てくるのかw


ひめはじけ』 2巻 p49 クリスタルな洋介

そしてこのネタを密かにサポートしてるのがその前のシーン。
ここで「何をするんだろう?」と読者が考える間を作ってるんですよね。
ギャップがあるので、ページをめくった時によりインパクトが出てるんじゃないかと。
変顔って要するに「いないいないばぁ」ですけど、
あれも想像する時間があるからこそ笑いに繋がるんだと思います。


ひめはじけ週刊少年サンデー2012年28号 p175 (2巻 p53) クリスタルな洋介

他にもノエルのはだかジャケットに (お色気的にもいい演出ですし、照れがあるのもいいです)


ひめはじけ』 2巻 p56 クリスタルな洋介

個人的に一番好きなのは「最初の失敗はそれか…」という地味な突っ込み。
ここも前のページからのギャップがありますし、呆れている感じになってるのもいいです。
一番刺さった原因は、ここで突っ込みが来ると予想できなかった事もあるのかもしれません。
ハリセンで殴ってるシーンならセリフ読む前に突っ込みだと分かりますし。そこもギャップなのかも。


最後のシュトルムのはだかジャケットも天丼しつつ伏線回収でのオチになってますし、
本当に素晴らしいクオリティでした。


次に良かったのがその前の16話。これも神回でした。
ひめはじけ』 2巻 p35-36 クリスタルな洋介

個人的にここでツボったネタが3つ。一つはカンナのセリフ、次にボタンで遊んでるシーン、最後に左下のコマ。
さらには師匠のデレと、本当に密度が濃いなぁと。
ボタンのシーンは上で書いた「間」とは正反対ですけど、こちらは左右の対比で見せてるのがいいですね。
また、全部間を取るギャグだと単調になりますし。


ひめはじけ』 2巻 p37 クリスタルな洋介

その次のページも密かにいいですね。連載の段階では気付かなかったんですが、
パパで裁縫上手で苗字が今元と言えば間違いなく『オニデレ』の正でしょう。
ファンにとって、こういう演出は嬉しいですね。
その後いい話にもっていきつつ、それをあえて台無しにするオチと、『ひめはじけ』らしい演出でした。


2巻は5〜6回読み直してますが、これだけ充実したクオリティの作品が終わるのは残念でしかたありません。
アンケート、売上共に芳しくなかった訳ですから致し方ないですけども。
才能自体はあると思ってますし、何よりネタ切れを今の所起こしてない稀有なギャグ漫画家さんなので、
次の作品こそはオニデレ』の倍は続けて欲しいと切に願ってます。


※追記
そう言えばクリス先生のコラムがあったよなとサルベージしてみたら
中々いい事書いてあってのでその辺りも触れてみます。
プロが語る漫画秘伝!! part123●クリスタルな洋介先生 PART1
プロが語る漫画秘伝!! part124●クリスタルな洋介先生 PART2
プロが語る漫画秘伝!! part125●クリスタルな洋介先生 PART3
プロが語る漫画秘伝!! part126●クリスタルな洋介先生 PART4
プロが語る漫画秘伝!! part127●クリスタルな洋介先生 PART5

何にせよギャグはどうしても好みが分かれるというか、人によって笑いのツボが全然違うので
漫画の面白さの安定性を図るにはカンナとロヴァリエようなコメディ...
特にキャラをベースにしたコメディが重要になると考えています。
キャラをベースにすると、キャラにファンが付きますしね。

#2でこう書きましたが、クリス先生もその辺りはちゃんと考えていたようです。

●ネタ発想から、キャラ発想へ…●
昔はネタ主導で作品を作っていたんですが、途中から人間関係で笑わせるようにシフトしてきました。
特に連載では顕著ですね。
最初はこれがわからなかったんです。
でも、だんだん人間関係の面白さにハマッてきて、そこから現在は完全にキャラ主導ですね。
キャラ発想だから、状況を作るまでが大変です。でも、状況ができてしまえば、そこにキャラを入れ込むだけなので、そこから先が楽なんです。
しかもこの方法だと、キャラに付随するギャグなので、あらかじめネタを考えておくなんてことはできません。
ネタ出しの打ち合わせの段階で詰まってしまうことも多々ありますが、その瞬間に考えたネタが面白ければいいし、つまらなければボツという、非常に単純明快な作り方をしています。
プロが語るまんが秘伝!! part124●クリスタルな洋介先生 PART2

個人的には滅茶苦茶面白かったんですが、
ウチの弟が「ギャグ一度も面白いと思ったことがない」 (今回一番落ち込ませるフレーズ)
と言ってたように、この辺りも多少偏りがあったのかもしれません。
多様性自体は担保されてたと見てたんですが、ギャグはより好みの差が激しく出ると思われるので、
私のツボを押しまくった分、逆に全く刺さらない人も結構な数いたんではないかと。
やるべきかはともかく、他作品のパロディだったり、取り扱っていないネタもあったんじゃないかと。

#3でこう書きましたが、クリス先生もその辺りはちゃんと考えていたようです。

●ギャグの間口●
デビュー当時、担当者に言われたことで印象に残っているのは、「笑えなくても面白いギャグはある」という言葉です。
ボクは、ギャグまんがって、爆笑が起きなければダメなものだと勝手に思っていました。
でも、「しみじみと面白い」とか、「クスッとくる」とか、「ニヤリとする」とか、笑いには色んな形があるんですよね。
それまでは、ゴリゴリのギャグまんがばかり描いていて、もう全コマ一発ネタみたいなもので埋め尽くしていたんですけど、読んだ人に「あ、コイツ面白いな…」と思わせるのもギャグのひとつなんだと担当者に説かれ、何か世界が一変したような気がしました。そのひと言でギャグの間口が広がりました。
(中略)
●より笑えるモノを!!●
ネタ主導であろうと、キャラ主導であろうと、実はボクには特にポリシーはありません。
あるとすれば「より笑える」「より面白い方に」という考え方ですね。
ネタって言うのは、爆発力はすごいんですけど人を選ぶんです。
ボクの作る一発ギャグは、ある友達は爆笑するけど、別の友達には理解されないということが多く、それがちょっと嫌な感じでしたね。
オニデレ」は、読んでくれる人のほとんどが、面白いと言ってくれるので、単に爆発力が高いだけじゃダメなんだなと思いました。
そういう意味では、非常にメジャー指向なのかもしれませんが、実はそれは建前で、心の中では爆発的なモノを描きたいという気持ちは常にあります(笑)。
今でもちょいちょい小ネタとして忍ばせてますけど、担当さんに「これ、なんで?」って突っ込まれたり(笑)。
「いや、これ、描きたいんですけど」って(笑)。
バランスで言ったら、そのくらいでちょうどいいような気がしますね。
プロが語るまんが秘伝!! part124●クリスタルな洋介先生 PART2

#3で「ネタの範囲は狭いほど面白い」と書きましたが、この宿命からは逃れるのは難しいですよね...
畑先生もこう書いてます。

結構マニアックなネタを使っているように見えますけど、基本的に僕は自分が好きでないネタは避けてます。師匠に当たる久米田康治先生なんか、いつどうやって仕込んでいるんだろうってくらい、ネタが多岐に渡っていますけど、僕は好きなモノを好きなように、素で描いてるだけです。
久米田先生が「ネタは幅が狭けりゃ狭いほど、通るヤツには面白い」とおっしゃっていました。間口が狭いと「これはわかった!!」っていう人にとっての喜びが大きいんですね
プロが語るまんが秘伝!! part010●畑健二郎先生 PART2

#3でも書きましたが、これの解決方法の一つが『さよなら絶望先生』の羅列ネタでした。
途中から止めちゃいましたが。
幅の狭いネタを数用意することによって通る確率を上げる。
密かにどの読者にもどれか一つは刺さるような多様性を担保したネタの並べ方をしてました。
(それでも刺さらない人はいるでしょうけど)
まぁ同じことやってもパクリになっちゃうので、他の作家はやりにくいですけども。

●ギャグの二律背反!!●
ギャグを描く時、面白さとわかりやすさのどっちを取るかというのが難しいんです。
わかりやすければ、より多くの人に理解してもらえるんですけど、ギャグに鋭さがなくなる。
読者層は別にあまり深く想定して描いてはいないんですけど、ギャグが鋭くなればなるほど、ウケる年齢層が上がっていくように思います。
オニデレ』は恋愛ギャグなので、異性を意識している年代以上じゃないとわからないことが多いですね。
たまに、異性と関係ないギャグをやると、小学生が食いついてくるんですが(笑)。
ネタ的には、最近、わかりやすすぎてもしょうがないんじゃないかと思ってるんです。
結局、「わかるからどうなんだよ」、「ああなるほど。…で?」っていうネタはつまらなくなってきてるんです。
ちょっとシュールになるかもしれないけど、ボクとしては、やっぱり面白い方を取りたいですね。
プロが語るまんが秘伝!! part126●クリスタルな洋介先生 PART4

ひめはじけ』の良さの一つが、この二律背反を上手く捌くネタがあった事ではないかと。。
ひめはじけ』 2巻 p153 クリスタルな洋介

要するに子どものイタズラネタのことなんですが、
こういうギャグは子どもがやる遊びですから恐らく子どもも楽しめるでしょうし、
大きなお友達も童心に返ることができます。
幅広い層に受け入れられる素地がありつつ、ネタに意外性を出せれば鋭さも出せます。
キャラが楽しそうにしてるのもいいですしね。


それでも「この手のギャグが刺さらない」人がいる以上、限界はあるんでしょうけども。
ギャグ以外でも万人に受けるような内容はベタになる傾向はあるので、
あくまでギャグに顕著なだけで、他のジャンルの漫画にも言えることなのかもしれません。