時坂さんは僕と地球に厳しすぎる。

時坂さんは僕と地球に厳しすぎる。 2 (ゲッサン少年サンデーコミックス)

時坂さんは僕と地球に厳しすぎる。 2 (ゲッサン少年サンデーコミックス)

内容的に厳しくなってきたこの漫画。適当に書いてたらえらい長くなったので改めて。


先月号の記事でこう書きました。

作家さん本人はかなり頭のキレる人で、個人的にはかなりリスペクトしてるんですが、
どうも漫画には反映されてない感じが。
ギャグやコメディ挟んでる辺りは今回でも悪くはないんですけど、本筋がどうも。
エコロジーだと思われていることが、実は逆だったという線でお話を作れないもんなんでしょうかね。
まぁペットボトルとかだと異論が出てくるでしょうけど、かつてはエコだと思われていた事が実は...
ってのが探せばあると思うんですけども。
GS美神』で魔鈴めぐみが横島を浄化しようとして失敗した話がありましたが、あんな感じで。

ほさな先生もどこに問題があるのか、しっかり認識されています。



田中ほさな
打ち合わせなう。毎回そうだけど、反・エコねたに悩む(^_^;)大体ご想像の通り、反・エコねたというのはなかなか難しい。というのは、「このエコは実は間違っていて、エコになってないですよ」的な誤情報ねたが、今となっては使えないからだ(続く)
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田中ほさな
今を遡ること数年前、BBCが放映した番組がきっかけで、「エコロジーの嘘」的なねたが大流行した時期があった。日本でも、武井邦彦先生が、それをテーマに本を書いて、名前を売っていたりした(続く) (引用者注:×武井 ○武田)
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田中ほさな
その後、そうした動きに反発するごとく、全世界の学者から猛然と反論の波が起こった。そして、あらゆる「エコロジーの嘘」が再検証され、ほとんど全部が根拠のない作り話か、不確かな根拠による推論でしかないことが実証されてしまったのである(続く)
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田中ほさな
最終的には、「エコロジーの嘘は嘘」というのが学会で定着するに至った。要するに、数字による裏付けというのはどの数字を取捨選択するかで、その意味合いが大きく変わってしまう。その全てを検証し、どれがエコとして間違っているのか?という結論を出すのは学者でも容易ではない(続く)
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田中ほさな
ということで、「時坂さん」ではいきおい象徴的かつ空想的な反エコの独創に走らざるを得なくなったのでした……。とかなんとか言いながら、今回もなんとかネタが出たので、打ち合わせ終了。ファミレスに居残って、ネーム開始であります。
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サンデーSで連載終了した『動物がお医者さん!?』も似たような問題を抱えていました。
動物がお医者さん!? 1 (少年サンデーコミックス)

動物がお医者さん!? 1 (少年サンデーコミックス)

アニマルセラピーの研究はまだ未発達なので、「定説」があまり無いんですよね。 なので精神医療や犬のしつけといった、ある程度定説が存在する所で何とかやってた訳ですけども。 科学が結論を出すにはかなりの時間を要するので、比較的新しいエコロジーも同様の問題を抱えています。 ただ、「象徴的かつ空想的な反エコの独創に走らざるを得なくなった」というのは少し疑問です。 『時坂さんは僕と地球に厳しすぎる。』 1巻 p57 田中ほさな そもそも、

「未来ではいきすぎた環境保護のおかげで、逆に地球環境に人間の存在がおびやかされつつあるんです。」
「それに歯止めをかける意味でも、地球環境に打撃を与えることに意味がある」

というロジックが個人的には全く分からんのですよね...
『時坂さんは僕と地球に厳しすぎる。』 ゲッサン2012年10月号 p312-313 (2巻 p190-191) 田中ほさな

未来の環境については少し触れられていましたが、核の冬なのか氷河期なのかもよく分かりませんけど、
仮に氷河期だとしたら、CO2排出量を抑制しすぎた結果とかになるんですかね?
上の一行に関して飲み込んだとして、それと二行目との関連もよく分かりません。
現在で環境破壊を起こせば、より環境保護の勢力が増すような気がしますし...
環境保護というのは、言い換えると「自然環境のボトルネックをいかに解消するか」という運動な訳で、
ボトルネックが増えれば増えるほど、それを解消しようとする動きは増える筈です。


何にせよ、エコねたがこの作品のボトルネックなのは間違いないですから、
それを解消しない限りこの先も難しいことになりそうですし、この作品で最も重要なエンターテインメント
(この漫画の一番の良さはコメディですから)について割くべき時間が削られる恐れもあります。


解決方法の一つが、「いかにしてエコねたを引っ張ってくるか」です。

その全てを検証し、どれがエコとして間違っているのか?という結論を出すのは学者でも容易ではない

先にも述べましたが、科学は結論を出せるほぼ唯一の手段ですけども、少なくとも時間は掛かるという問題があります。
ペットボトルのリサイクルなんかもそうですね。概ね批判は否定されてますが、それでもまだ異論は残ります。
(まぁ個人的に現段階では燃やした方が早いとは思ってますけども)
逆に言うと、かなり昔の環境問題であれば結論がでてるという事にもなります。


ドイツなんかはリサイクル先進国と言われています。
実際どれほど効率的なのかは異論が出るところですが、そのドイツがかつて取り組んで失敗したこと、
やらなくなった事を探せばいくつかネタは出てくるんじゃないかと。
他にも、かつて石炭は木炭を大量生産したために起きた森林破壊を抑制するエコなエネルギーだったり、
石油が石炭を燃やしたススによる大気汚染を減らすエコなエネルギーだったりといった歴史もある訳ですし
(まさにボトルネックの解消です)
このくらい昔の問題についてはほぼ結論は出てるでしょう。
これらをどうシナリオに結びつけていくかという所でハードルはありますが、一応ネタ自体はいくつか存在する筈です。


また、「象徴的かつ空想的」なエコな方法もあるんじゃないかと。

数字による裏付けというのはどの数字を取捨選択するかで、その意味合いが大きく変わってしまう。

『時坂さんは僕と地球に厳しすぎる。』 ゲッサン2012年10月号 p287 (2巻 p165) 田中ほさな

例えば打ち水はエネルギーを使わずに温度を下げるエコな行為ですが、
これがエコなのは日本では水資源が豊富だからであって(水がボトルネックではない)、
これを例えばサウジアラビアでやるなら貴重な水資源の浪費となります。
まさに「どの数字を取捨選択するか」です。

GS美神』で魔鈴めぐみが横島を浄化しようとして失敗した話がありましたが、あんな感じで。

以前に書いたのは、この延長上にある訳です。
GS美神 極楽大作戦!!』 26巻 p74 椎名高志

例えばある数字に偏ったエコを語るキャラを登場させ、
現実でも構想段階で却下されるような行動を起こし、時坂さんが密かに同調し、
最後に宗也と夢原先輩に怒られる。
異論がありそうな事がやれないのなら、異論が出ないくらい過激なことをやればいいのです。
こちら葛飾区亀有公園前派出所』っぽいというか。


もう一つの解決方法は、「環境破壊を手段にしないこと」。
『時坂さんは僕と地球に厳しすぎる。』 ゲッサン2012年11月号 p469 田中ほさな

要するに、数字による裏付けというのはどの数字を取捨選択するかで、その意味合いが大きく変わってしまう。その全てを検証し、どれがエコとして間違っているのか?という結論を出すのは学者でも容易ではない。

逆に言えば、どれがエコかを漫画の中で結論として出そうとするから容易ではないのであって、
簡単には結論が出ない事も全て漫画の中に反映させてしまえばいいのです。
要するに、作品の中で「どの数字を取捨選択するかで意味合いが大きく変わってしまうこと」を示すのです。
これなら、hotな話題でも作品の中で取り上げることが出来るかもしれません。


「いきすぎた環境保護」が具体的に何を指すのか分からないので何とも言えませんが
(明示する必要も無いですけど)、
それに歯止めを掛けるための手段は環境破壊をすることではなく、
いかに多角的な視点から捉えるかを主人公の宗也に学ばせることだと思うんですよね。



田中ほさな
悪を生み出す根本には、必ず想像力の欠如や他者への不寛容さがあり、その主たる温床は貧しさです。鑑定書のエピソードは番組を終える上で用意された救いでしょうが、現実には終わりはありません。…今日は明るくなるまで眠れそうにないです。 RT @ohcamay
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想像力の欠如や他者への不寛容と対抗できるのは、客観的なものの見方... どれだけいろんな見方があるのかを知ることでしょうし。 環境破壊を止めなくても多角的な視点は描けはします。 例えばCO2重視なキャラだったり、リサイクル循環を重視すぎて循環コスト(金銭・資源等)を無視するキャラ だったり、目的とボトルネックとなりうる要素ごとにキャラを用意すれば、視点も多角的に描けるでしょう。 まぁタイトルがタイトルだけに完全に「環境破壊を手段にしない」となると他の設定にも影響が出てきます。 『時坂さんは僕と地球に厳しすぎる。』 1巻 p90 田中ほさな 例えばエコポジット。正直この設定がどーかなーと思ってるんですけども... 時坂さんが進んで環境☆破壊をやるには必要な設定なのは分かるんですが、 地球の未来を守るためにやってきたエージェントが、保険適用外だからと言ってセコセコと 環境☆破壊してるってのはどーもねぇ... 工作には失敗してるのに、未来から何の反応も無いのも不自然です。 個人的には、未来の地球への影響がどのくらい出てるのかをフィードバックしつつ、 いかに宗也のハートを射止めるか...ではなく、エコに対する宗也の見方を多角的なものにするかを 目的にした方が、作品的には上手いこといくんじゃないかなぁと。 このままだと『時坂さんは僕と地球に厳しすぎる。』のタイトルとの整合性が出ませんが、 「このくらいまで負荷を掛けても自然は再生する」的なストーリーを絡めつつなら何とかならないもんでしょうかね。 『時坂さんは僕と地球に厳しすぎる。』 1巻 p56 田中ほさな 言い換えて環境☆破壊にしてしまうからテロ行為に走らざるを得ない訳で。 例えば焼畑農業が以前は森林破壊だと非難されてましたが(森林を開拓したならばそうなりますけど)、 きちんと休耕期間を置けばちゃんとした持続可能な農業です。 私の考えた方法なら上手くいくという確証は全くありませんが、何か現状打破するきっかけにでもなれば。 ちゃんと歯車が回りさえすれば、かなり面白いものが描ける作家さんであり、作品のテーマだとは思うんですけどね。