動物がお医者さん!? EPISODE:17

この回含めて残り3回で終了ということが富士先生のブログで発表されました。
いやまー正直残念ですね...


クラサンの更新が無くなったり、2巻で部数減らされたりとポジティブな要素がほぼ無かった時点で
かなり危機感を感じて多少の宣伝になればと長編の記事を書いてみたりしてたんですが...
効果無かったですねぇ(苦笑)
基本的にはなるべく影響力を排除しようとしてるこのブログでやる事自体間違ってる上に、
結構批判的な事も書いてたので応援になってたかどうかも怪しいという、ね。


今までの傾向からすると『魔法行商人ロマ』は5巻、『阿鬼羅』は7巻まで続きましたけど、
作家さんは現在小学館以外で連載をしてます。続けばいいという訳でもないのは確かです。
まぁ打ち切り(かどうかは分かりませんが)で良い事も無いんですが。
4巻で終わるからと言って打ち切りかどうかも分かりませんし。
銀塩少年』は円満終了だったって話ですから。


個人的に富士昴先生はサンデーSに連載されてる新人さんの中でポテンシャルが最も高い作家さん
だと思ってるので、何とか本誌で連載取って欲しいなぁというのが今の願いです。
『動物がお医者さん!?』があまり人気出なかった(とすれば)理由は、どう考えてもラブコメ要素を含む
キャラにファンが付くような内容」になってなかったからで、その原因が編集にあるっぽいですから。
この傾向が最近は軟化してるように見えますし、チャンスがあれば次はやれそうなんですけどねぇ。
元々ラブコメ(というか人間描写)をやりたい人でもありますし。


ということでEPISODE:17。
『動物がお医者さん!?』 サンデーS 2012年9月号 p500 富士昴

いかに漫画を終わらせるか、という3話構成のストーリーに終末期医療をテーマに持ってくる辺りは
やっぱり上手いなーと思うと同時に切ないなぁという思いが...


The Structure of "Can animals cure us? #6で改善された点をいくつか挙げましたが、今回も踏襲されてます。
『動物がお医者さん!?』 サンデーS 2012年9月号 p504 富士昴

まずはロールプレイ。

以前は渚無双というか、渚がストーリーを引っ張っていって、周りのキャラはそれに釣られるだけというパターンだったんですが、
このようにキャラの立場がしっかりしてると、キャラが動くようになるんですよね。
しかも、キャラの演出なのにも関わらずストーリーの邪魔をせず、むしろ後押しする。

#6でこう書きました。
更紗さんが聞き役に徹してる描写は今までもありましたが、
(単に渚が無双してただけという話もありますけども)
それに説明を入れつつ再描写。気づかなかった人にも更紗さんがどういうキャラか伝えています。
以前『ハレルヤ』#30の記事に書いたように、基本的にはこういう描写は禁じ手ではあるのですが、
「普段の行動と違う」ことによって、謎もしくは伏線に使っています。他に狙いがあるんですよね。
この手法を使えば、普段と違う行動の原因を謎以外にすればキャラの幅を広げることもできます。
連載期間が短い漫画ではキャラのメインの性格を描写することで手一杯ですけど、
長期連載になればこの手法がキャラに深みを与える手段になり得ます。



fujisubaru
お気に入りの指南書の一つ読んでたら、「キャラを作者の考えの代弁者にさせてはいけない。キャラの意見に耳を傾けろ」と書いてあって、それ全然できてねーやと思った。
link
何にせよ、キャラの立場をちゃんと考えてなければこういう描写はまずしません。 良い傾向だと思います。

以前『PLUG』の批評でしぐさが大切と書いたことがありますが、
『動物がお医者さん!?』でもフーが人気になったのは間違いなくあの腹ばいになった時の仕草ですし。
初期のフーやシロにはそれがありましたから、もうちょっと仕草を入れてもいいんじゃないかと思いますね。
特に主人公の渚やヒロインの星乃・美空にはキュンと来るような仕草が必要でしょう。ストーリーの邪魔にもなりませんし。

#5の記事で改善点(むしろ元に戻せという内容ですが)をこのように書きましたが、
『動物がお医者さん!?』 サンデーS 2012年9月号 p507 富士昴

今回はフーとリュウが密かに頑張ってますねw これまた良い傾向。
星乃も美空もそれぞれ役割というか彼女達にできることをここでやってるってのもいいですし、
他のシーンでは彼女達のしぐさも出てるのが非常にいいです。キャラの特色も出てます。
『動物がお医者さん!?』 サンデーS 2012年9月号 p518 富士昴

欲を言えば、終わるまでにパラパラめくっても目が止まるようなもうちょい大きな、そして印象的な描写で
こういう描写が1回くらい出来ればいいんですけども。
何にせよ、ストーリーをきちんとロジカルに進めつつ、その中でもキャラが生き生きとしてますね。
こういうのを見てると、やっぱり終わって欲しくないなぁという思いがふつふつとw
目星は付いたとも言えるのですが。


最後のシーンは意外性のあるものでしたが、
個人的には作者が意図したものとは違った意味で印象的でした。
『動物がお医者さん!?』 サンデーS 2012年9月号 p526 富士昴

昔『栄光なき天才たち』という漫画で「脱出王」ことフーディニを取り上げてました。

彼は奇術師としてもさることながら、「サイキックハンター」としても名を馳せてました。
その辺りはwikiを参照してもらうとして、
最愛の母ともう一度会いたいという願いから霊媒師と交流を持つも、
彼の奇術師としての能力がそれを妨げてしまい、霊媒師を恨むようになる。
こういう「信じてないけど信じたい、すがりたい。」という思いが理事長と似てるなぁと。
理事長の場合は功利主義的な視点、もしくはある程度科学的な見方が出来るってのがあるかもしれません。
霊媒師はインチキで、動物介在治療は単に未発達なだけという違いはありますけども。


何にせよ、せつない感じが非常に表れてる、いいシナリオだなーと思います。
こういうのを見てると、やっぱり終わって欲しくな(そこに戻る)