プリマヴェーラ(読切)



プリマヴェーラ

プリマヴェーラ

高橋忠志
(C)Tadashi Takahashi/Shogakukan 2012

過去のトラウマから自転車が怖いショウマは、自転車好きな幼なじみのカナに告白しようとするが…? ちょっと不思議な自転車ラブコメ、発進!!

posted with EmbedSunday on 2012-04-10

twitter @tadashitakahashi
★★★★☆


畑健二郎アシスタント(一期)を経て、現在『ハレルヤ』の高田康太郎先生アシ?
現在は違うらしいです。


受賞作『ガラクタ』は勢いがあって今後が期待できそうな作家さんだなーと思ってましたが、
デビュー後にクラサンに載った『極タマ』 『バクロのレシピ』は漫画の技術は上がったものの、
面白さという意味では若干落ちたかなという印象がありました。


今回は突っ込みどころかなり多いですけど、面白さという意味では前2作よりもいいかなと。
プリマヴェーラ』 p9 高橋忠志

というかこのコマですな。これだけで★4の価値はあると思います。
個人的な妄想ですが、畑先生が「思い描いた風景を繋ぎあわせて漫画を作る」的な話を去年の8月頃にしてたので、
今回そういう手法を取ったんでしょうか。
まぁ、それ以前に作品が出来てた『極タマ』も「タマ取らせていただきます」から広げてった感はありますけども。
良くなった理由は、ひょっとしたら題材を描かされてる感が無くなったからかもしれません。
コメントにもあるように、よく自転車乗ってるみたいですし。
まぁ本当はバトルやりたいんじゃないかなぁと思わなくはないんですけれども。


「私にまたがって」の次に思い描いた風景はたぶんコレだと思うんですが
プリマヴェーラ』 p30-31 高橋忠志


これが良くなかったのかもしれませんねぇ... このアイデア自体は決して悪くはないんですけど。
このシーンに向けてどうストーリーを展開していこうか、と考えて突っ込みどころが出てきたというか。


個人的に、この作品でネックとなってる描写は重要なもので2ヶ所あって、
プリマヴェーラ』 p7 高橋忠志

ひとつは、急にヒロインが自転車になるシーン。
説得力が無いのは設定上やむを得ない面がありますが、唐突なのがちょっと問題です。
割とよくあるパターンなので、急にこういう事が起こっても意外性には繋がらないんですよね。
そして「配達物を届ければ戻るかも」ってのもイミフ。
結びの風景を考えるとこう持っていきたいのは分かるんですが、何からの説得力が欲しかったところ。
一応、同じような衝撃を与えてもダメだったとか、メッセンジャーやってるという前フリとかはあるんですけど。


プリマヴェーラ』 p25 高橋忠志

もうひとつはこのシーン。ひき逃げはいいのかYO!
個人的には犯人追っかけて行って追いぬくってシーンは映画『幻の湖』を思い出しましたねw
何かしらの達成感を出したかったんでしょうが、ここは少し残念でした。


ヒロインが自転車になって主人公がそれに跨るというアイデアは良かったですし、
主人公が自転車に乗れない、ヒロインが主人公にも自転車の楽しみを分かってほしいという設定は
悪くないので、そこからどう広げて結末まで持っていくかって所で躓いた感があります。


例えば。

ヒロインがメッセンジャーのバイトではなく、交通安全のお守りを買いに行く。
ついでによく当たると言われるおみくじを買うと大吉か何かが出て、「願い事叶う」と書いてある。
主人公が自転車に乗れないことを思い描き、「私が自転車になって乗せればいいのかな?」と
うっかり口に出してしまう。
気づくと自転車に乗り移ってしまい、後からやって来た主人公に事の顛末を話す。


主人公が「自分が自転車になりたいくらいに自転車好きなんだな」と言うと
「人の気も知らずに、バカ」とか返されヒロインにぶっ飛ばされる。


どうやったら元に戻れるか思案して、
おみくじに「北東の方角が吉」「場所は高台が吉」「時間は夕方が吉」「善は急げ」とか書いてあるので
自転車で近くの丘の頂上へ行こうということになる。


ドロップハンドルの下の方を持ったら、胸を掴んでしまいヒロインにぶっ飛ばされる。


坂道を登ってる間に過去話のヒロイン視点。
「主人公と一緒にツーリングしたかったから、自転車に慣れてもらうために後ろに乗せた」


坂が急になって、自転車に慣れてない主人公はバテてくる。
ヒロインが「着いても元に戻れるか分からないのに、苦労かけてゴメンね。もう帰ろうか?」と慰める。
主人公がそれに反論し
「戻れないかもしれないけど、戻れるかもしれない。可能性があるなら頑張る」的な発言。
ヒロインが「ドロップハンドルは持ち方を変えることで疲れにくくなる」と言って胸を掴ませ、
「もうちょっと頑張って。私も頑張る」と励ます。


そして頂上に辿り着く。


しかし元には戻らず、落ち込む二人。
「でも、主人公と一緒に登るのは楽しかった。戻る方法はまた考えよう」ヒロインが慰め、
頂上からの景色が綺麗だと言う。
主人公が「僕も自転車に乗るのは楽しかった。元に戻ったら一緒にツーリングしよう」と言うと
ヒロインの呪いが解ける。
(本来の願いである、自転車に乗って一緒に出掛けるという願いが叶うことになったので)


胸を掴んだままの主人公がヒロインにぶっ飛ばされる。


最後はほぼ同じ。

ほとんど捻ってませんが、こんな感じなら★5かなぁと。(そりゃ個人の趣味丸出しだから当然ですが)
自分の書いたことについてあれこれ解説はしませんが、どうしたら良くなるかの叩き台にでもなれば。