The Structure of "Can animals cure us!?" #2

#1の続きです。読んでない方は、先にそちらをお読みください。
The Structure of "Can animals cure us!?" #1
今回課題となる点を色々挙げてますが、概ねEPISODE 10 以前に関してです。


3) 短所
さて、個人的にもの凄く買ってるこの漫画ですが、短所が無いって訳ではありません。
まぁ新人ならあって当然ですし、短所が無いのが良い漫画という訳でもないのですが。



若木民喜
新人さんの場合は下手に色々言うと「いいマンガ病」の呪縛におちいるからね・・・
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面白い漫画はたいてい「いいマンガ」の要素を備えてるんですが、 「いいマンガ」が必ずしも面白いとは限らないんですよね。 具体的にどういう病なのかというと、


若木民喜
色々な現象の総合だけど、具体的な症例は、「キャラ」より「お話」の比重が大きくなる、機能性でキャラを考え始める、展開にこだわる、オチから逆算して話を考える、アバンに凝るetc RT @hatology: @angelfrench いい漫画病とはどんな病なのですか?
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若木民喜
以下のようなことはテクニックとしては大事だから一度は通らないといけない道ではあるけど。
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(※アバン=アバンタイトル。タイトルに入る前のシーン) 4) キャラ表現 若木先生の言う「いいマンガ病」にこの漫画が全部当てはまってるかどうかは分かりませんが、 最もクリティカルな問題は「キャラ」より「お話」の比重が大きくなるって所でしょう。 #1の記事でさんざんこの漫画について褒めましたが、キャラに関する記述は

てかフー可愛いすぎ。

この9文字しかありませんし。


4-a) キャラ表現での長所
とは言え、キャラ表現が全く駄目という訳ではありません。
#1ではフーしか取り上げませんでしたが、
『動物がお医者さん!?』 2巻 帯 富士昴

他の犬も可愛いんですよね。しぐさ含めて。
構造的なことを書くと、カップリングの面でも考えられています。
リュウと星乃、ココロと夕香、フーと小石川の性格を似せてるんですよね。(たぶん)
『動物がお医者さん!?』 1巻 p154 富士昴

正に「ペットは飼い主に似る」です。
特に、ココロと夕香に関しては上手くシナリオに組み込んでましたね。


主人公・渚のキャラ設定に「占いが好き」というのがありますが、これは中々いいアイデアだなぁと。
ロジカルな内容なので、ロジカルが苦手な人にも親近感が湧くというのが一つ。
もう一つは、占いの内容は作者が自由に決められるので、渚の行動をポジティブにもネガティブにも容易に制御できる
という構造的な面です。


もちろん、見栄えがする絵が描けるってのも長所の一つに数えられるでしょう。


4-b)キャラ表現での短所
ただ、絵が良い点を除けば「キャラにファンが付く」ような漫画になってないのが最大の問題だと思います。

ですが、例えばヒロインだと思しき星乃。何話出てませんか?
これではキャラにファンが付きっこないです。
そもそも、少年漫画に大切なのは内容よりもむしろキャラ。
私のようなキャラ自体に付かない人間にはさほど影響しませんが、
キャラ読みする人間には見向きもされません。

以前こう書きました
別に『ハヤテ』のようなキャラ漫画にシフトすべきだとか、『ハヤテ』のようなキャラ表現を導入すべきだと言う
つもりは全くありませんが、少なくともキャラ読みするような層が読んでくれるようなとっかかりは必要だと思います。
構造的に言うと、主人公の次に重要である筈のヒロインキャラでさえオミットされるほど
役割がきちんと存在してない点が問題です。

ではどうするのか。星乃を出す、では答えになってません。
とは言っても私が持ってる理論は「ロールプレイング」「カップリング」「ミスディレクション
の組み合わせで個性を表現するという、上の『PLUG』でも書いた方法しかありません。
あれが正しいかは判りませんが、少なくともこういった感じの演出を導入すべきでしょう。

上の引用の後、こう続けました。
こう書くと上の若木先生の「機能性でキャラを考え始める」という発言そのものなんですが、
この病に掛かった後に抜け出してはじめて良い作品が描けると個人的には思ってます。




fujisubaru
ペン入れ一区切りしたので夜中に自分目標。(1)キャラの表情や動きをもっと生き生き描けるようになる (2)主人公が何したいのか一番わからんのでキャラの掘り下げする (3)少年誌なのに見せ場が地味。でもこのネタで無理やり派手な話するのも???対策なんか考える
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以前あった富士先生のつぶやきの(1),(2)共にキャラ表現に関するものですし、 作者自身もキャラ表現が課題だということは分かってるとは思います。 5)共感 最もクリティカルな問題はキャラですが、共感もそれに次ぐ重要な課題です。 #2の子どもが絵本を読む話、EPISODE 4,5 の内木さんの話はそれなりに共感できる所もありますが、 The Structure of "Can animals cure us!?" #1 でさんざん褒めた EPISODE 5-6 の老人ホーム編は こと共感に関してはおろそかになってると思います。 この漫画は「アニマルセラピー漫画」と銘打ってますし、それ自体に偽りは無いんですが、致命的な問題があります。 『動物がお医者さん!?』 1巻 p169 富士昴 この漫画を読んで癒されるか?と言われると怪しいんですよね。 確かに、フーやリュウなどの動物は可愛らしく描けてるので癒されます。 『動物がお医者さん!?』 2巻 p41-43 富士昴 ほら癒される。 なぜ、このマンガを読んで癒されるか?と言われると怪しいのか。 このマンガはアニマルセラピーに関する漫画なので、当然ながら暗い話が出てきます。 悩みを抱えてる人がアニマルセラピーによって解決されることで漫画が成り立ってるのですから当然です。 つまり、読む人にとってみれば、癒されたいのにも関わらず暗い話で欝にさせられるという 構造的な問題を抱えてるということになります。 暗い話を描かなければ欝にならずに済みますが、 それだとアニマルセラピーを描いた漫画として成立させるのは(不可能ではありませんが) かなり制約を受けることになります。 ではどうするのか。 ここで出てくるのが共感です。 例えば薬物依存症の患者の場合、患者の精神的ケアをするNGO団体なんかでは、 患者に自分の辛い体験を同じ境遇の人たちに話させるということをよくやります。 こうする事によって、「自分だけが悩んでるんじゃないんだ」「仲間がいるんだ」「一緒にがんばろう」という気持ちに なる...らしいです。 何が言いたいかというと、たとえ暗い話の鬱展開でも、それが共感を喚び起こすものであれば癒しになる といことです。 『動物がお医者さん!?』 2巻 p90-91 富士昴 老人ホーム編の場合、暗い話で共感を喚び起こすシーンといえばこの画像の左上ということになりますが、 これでも共感できる感受性の高い人もいるでしょうけど、個人的にはそこまで共感できるような演出ではないかなぁと思います。 具体的にどう改善すればいいのか?の案を The Structure of "Can animals cure us!?" #3 以降で書きます。 まぁEPISODE 11,12 で改善する兆しは見えてるのですけれども。