漫画家を目指すんなら読んだ方がいいんじゃね?と個人的に思ってる本

漫画家さんってマンガやアニメは割と見てるとは思いますが、本を読んでる人はそれほど多くないように見えます。
最前線で戦い続けてる作家さんにもそういう方が多いでしょう。
マンガを全く読まずにマンガを描くってのはほぼ不可能ですが、本を読まずにマンガを描くのは可能です。
そして本を読んだら成功するって訳でもないです。


それでもあえて漫画家さんには本を読んで欲しいと書きます。
別に本じゃなくてもいいです。文字を読んで欲しいと。もちろん文字なら何でもいいって事にはなりませんが。


漫画家に限らず、人間に必要不可欠なのは決断力です。
どういうマンガを描くのか、どういうキャラを作るのか、どういうストーリーにするのか、どういう絵にするのか。
決断力無しでは何一つ行動できません。


決断力とは、判断力と意思の組み合わせです。
このキャラだと人気が出そうだとか、話が進めやすそうだとか考えるのは判断力ですし、
それでいいと踏ん切りをつけるのは意思(もしくは勇気)です。
勇気に必要なのは成功体験ですが、ここでは置いておきます。


判断力の源泉となるのは、知識と思想(ものの見方、考え方)です。
知識や思想は、もちろんマンガやアニメからも得られますし、特有のメリットはあるのですが、
本(文字)の方が吸収できるスピードは圧倒的に早いです。
新宿から永田町まで歩くより電車で行った方が早いと分かるけど、マンガやアニメと本は直感的に判りませんし、
徒歩と電車までの差は無いかもしれませんが、これが積もり積もれば差としてハッキリでてきます。


なので、ぜひ本を読んで欲しいと。
でまぁそれだけで終わらせるのも何なので、具体的にいくつかをピックアップ。
小説が入ってませんが、小説が意味無いって訳ではないです。
私があまり読まないってのと、好みがあるからって事ですね。
まぁ好み以外もある程度は読んだ方がいいとは思いますけど。


書き忘れてましたが、上の文章は「なぜ勉強をしなければならないのか」という答えでもあります。
「決断力を付けるために勉強をする」
誰の為にかと聞かれたならば「自分と社会のため」
青少年に責任能力が無いとみなされてるのは、判断力が無いとみなされてるからですしね。


閑話休題

話を聞かない男、地図が読めない女―男脳・女脳が「謎」を解く

話を聞かない男、地図が読めない女―男脳・女脳が「謎」を解く

漫画を描く上で絶対と言っていいほど避けられないのは「人間を描写する」ことですが、
キャラの違いの中でも最もシンプルな違い...「男女の差」の知識くらいは持って欲しいもの。
必ずしもこの本である必要は無いですけども。


科学的裏付けは乏しい本ですが、その代わり読み易くはなってると思います。
この本に沿ったキャラを作るもよし、一部入れ替えるもよし、あえて抗うのも良し。
大切なのは知識に囚われることではなく、それをいかに取捨選択するかです。

 どうやら男と女は生物学的に異なる生きものとして作られているらしく、社会が決まりきった役割を押しつけているわけではなさそうだ。つまり男女のちがいは、脳の回路のちがいなのである。脳の配線がちがうために、世界の認識も変わってくるし、価値観や優先順位も同じではなくなる。どちらが良い悪いではなく、ただちがうだけなのだ。
『話を聞かない男、地図が読めない女』 p25 Allan Pease, Barbara Pease著 藤井留美主婦の友社

かつて大ヒットした本なので図書館には確実に置いてあると思います。
私は古本屋で105円出して買いました。


シナリオの基礎技術

シナリオの基礎技術

まだ目を通しただけの本オススメするのはどうよ?ってのはありますが...
元々は『銀塩少年』の後藤隼平先生がオススメしてた本。
脚本家にむけて書かれた本ですが、漫画家さんにもそのまま応用できます。
この本に沿ったシナリオを作るもよし、一部入れ替えるもよし、あえて抗うも良し。
少なくとも叩き台にはなってくれるとは思います。

 「シナリオライターは才能がなければいけないよ」というシナリオライターも、昔は下手くそなものを書いては持ちこみ、持ちこんだ先で何回か断られ、あるいは幾回か書き直しをさせられた上で、ようやく陽の目をみて、そしてライターになった人たちばかりではないでしょうか。


(中略)


シナリオライターになれる人も、いつまでもいつまでも取りついてく、忍耐というか根気というか努力というか、そういうものを持ちつづけていることが、むしろ(才能という言葉を使いたければ)才能なのです。
 ですから、基礎さへしっかりしていれば(身につけるという意味ですが)今書いてるライターくらいには到達することは可能なのです。
 その上で芸術家になれるかどうかは、その人の持ってる思想や、人生観や、社会観や、ものの見方、さては人の生き方などの、つまり作家の眼がしっかりしているかどうかによります。これは、基礎技術では教えることもできませんし、教えてはならないことなのです。
『シナリオの基礎技術』 p9 新井一著 ダビット社

この本もある程度規模の大きな図書館なら置いてるかもしれません。うちの市の図書館には2冊ありましたし。
最近はどこの図書館もたいていネットで検索できるようになってますし、
同じ都道府県内に本があるなら取り寄せることも可能な体制になってるはずです。
気に入れば1,500円出してamazonで買う価値はあると思います。というか何度も読み返す必要がある本です。


表現の自由を脅すもの (角川選書)

表現の自由を脅すもの (角川選書)

私の座右の書です。
哲学の話も出てくるので、上2つよりもかなり難しい本ではあると思いますが、これくらいは読めるようになって欲しいですね。
直接漫画に影響する訳ではないので3番目に持って来ましたが、
漫画家も表現者な訳ですから、「表現の自由」に関する知識は持っていてもらいたいもの。


東京都青少年健全育成条例改正案に反対する意見をかなり読みましたが、
作家さんも読者も自分の利益に反するから反対してる人が多くて多くて...
もちろんそれが悪いとは言いませんが、それだけなのはかなり問題です。
表現の自由について何も分かってないって事ですから。

 第八点として、人を傷つけるような言葉や観念は一種の暴力または拷問(つまり「嫌がらせ ”いじめ”」)であり、それを行ったものは然るべく処置されるべきであるという、急速に台頭してきた考え方くらい、この世の社会原理のなかで愚かで危険なものは他にない。そうした考えは、批判を犯罪とし、それを規制する権力を当局に与えることに繋がる。新しい物分りのよさと言われるものは偽装した古い権威主義であって、まさに、同じくらい有害である。
表現の自由を脅すもの』p46 Jonathan Rauch著 飯島良明訳 角川選書


宮崎哲弥氏曰く、この本は「ラディカル(根源的)なリベラリズム(自由主義)の書」という風にカテゴライズ(分類分け)されます。
自由主義の思想を学ぶ上でもかなり役に立つ本です。さらに言えば科学的思考多様性についても知ることができます。
まんが家さんにとって多様性は、自分のスタンスや読者への対応を考える上でも知っておいて欲しい知識ですし、
科学的思考は判断力を養う上でも最も必要な考え方です。

 生物体の多様性が、自然淘汰の原材料となる。政治的性向の多様さが、民主主義政府を更新し、権威主義政府を挫く。能力と欲望の多様性が市場を促進する。信念、思想、経験の多様性、つまり我々の色々な主観的世界の多様性も、これに劣らず重要である。この多様性こそまさにあらゆる天然資源のうちで最も豊なもの、多分、すべてのもののうちで最も豊なものである。
 知識体制がこの資源を有効に扱うならば、少なくとも二つのことをなし遂げうるに違いない。先ず第一に、この体制下では生産的な対立が起こるだろう。然るべき場所、然るべき時期において、新たなアイデアが触発されて出てき、新たに討論が繰り広げられ、こうして思想の研究のための実り多い議論設定が行われる。第二に、この体制は、それが培った対立を解決できるのでなければならない。先ず培養してから次に選別しなければならない。どの新しいアイデアが研究に値するか、どの議論が継続する価値があるか、どの信念が「一般的受容」と当然の利用の正式範囲に入れられるかが、決められなければならない。この選別は、仕事の半分のうちでもより困難なほうである。我々は皆、毎日朝飯前に三つの新しいアイデアを持つことができる。問題は、それがほとんどと言っていいくらい下らないアイデアであるということである。困難なのは、誰がいいイデアを持っているかを突き止めることである。対立意見を効果的に述べ、そこから選択するという平和的方法が欠けている場合は、幾百万という我々のアイデアはただそこにあるだけで、それぞれが自己の優位性を主張するが、決定の仕様がなく、収束することもなく、ただ分裂と漂流あるのみである。


(中略)


私が主張したいのは、自由科学は他の何物にもまして遥かに優れた議題設定を行い、アイデアを選別するということである。他の体制が、意見の対立によって脅かされるときも、これをうまく処理してきたというのがこの体制である。それは、他のどの体制よりも、知的資源つまり知性の持ち主や専門的知識を最大限に役立てる方向へと、動員することに優れ、かつより迅速にこれをなしうる。
表現の自由を脅すもの』p106-107 Jonathan Rauch著 飯島良明訳 角川選書

私はよくこのブログを信用するなと書きますし、タイトルに「宗教」と入れてるのもこれが理由です。
議論を通してる訳ではないですから、選別前の主観的な意見であると。
この本も正しいことが書いてあるかどうか疑いながら読むといいんじゃないですかね。


ある程度規模の大きな図書館なら書庫に眠ってるとは思います。
古本はまず店頭には並んでません。
amazonで買うにしても5,600円もするのでおいそれとオススメできないのが難点です。
定価1,600円の本なんですがねw
それでも一時期はコレクター商品じゃなくても40,000円の値が付いてたことに比べると安くはなってるのですが...
ぜひ文庫化して欲しい本なんですけどね。角川じゃなくてもいいですから。
宮崎哲弥氏なら喜んで推薦文書いてくれると思いますよ。