週刊少年サンデースーパー増刊号201201

ということで、『サンデー超』としては最後の号になります。


電脳怪奇譚 サイバーワン
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作画は頑張ってるなーという印象を受けます。
特にモンスターが格好いいのがいいですね。
『電脳怪奇譚 サイバーワン』 週刊少年サンデースーパー増刊号2012年1月号 p45 杉戸アキラ

ゴブリンっぽい「赤帝雑兵」でさえ渋い。
ただ、たまに人物がゲッサンの斉藤ゆう先生みたいな、歪んでるような顔が若干気になりはします。
まぁこの辺りは好みなのかもしれませんけども。
内容的にはまだツマラナイとか面白いとか言う段階ではないと思います。
少なくとも構成はきちんとしてるので、箸にも棒にもかからないという訳では無さそうですが。


芸術捜査班!!
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推理モノの皮を被ったキャラ漫画のように見えるので、読者がどう推理するか?
という道筋が全く無くても問題はないと思います。
ただ、2回目にして既にワンパターン気味なのがちょっと...
どういう漫画か改めて提示する為にあえてほぼ同じ構造にした、とかならいいんですが。


今際の国のアリス
インターバルなのでこんなもんかなー的なところはありますが、
最後に人間のクズっぽいのが出てきてるのがいいです。


新撰組秘闘 ウルフ×ウルブズ
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あえて能力を使わない。悪くない展開だと思います。
頻繁に回想を入れるというのは無くなりましたが、
直前に回想を入れて...という構造がワンパターンになってる感があるので、
伏線入れるなり何なりでもうちょっと工夫できないものか、とは思いますね。
回想がダメって言ってる訳ではないです。


◎ G
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前回どういう予想したかは書きませんが、外しましたw
辻がネガティブな事を言うので緊迫感が出てて非常にいいです。


○ はるまげ
漫画の構造自体はワンパターンですが、アイデアさえワンパターンから脱すれば面白くなりますね。
お金の話はありますが、夢があります。
わざわざやる必要は無いけど、切羽詰まってるのでやらざるを得ないという展開も納得できたりと、
今後ちょっと良くなるかも?という兆しが見えました。
個人的には「お願い」してる所で手握るくらいはしてもいいかなーとは思いました。
こういう些細な事にツッコミ入れてる事自体、作品が良くなってるなーと感じてる証拠なんですけども。


中巌寺家の隠密
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内容的に『忍者ハットリくん』から(?)連綿と続く系統ですが、その範疇から一歩も出てませんなぁ。
ベタとしか言いようがないです。
それでもキャラさえ良ければ『よしとおさま!』のようにヒットする可能性はあるので、
そこを何とかできれば。もしくはギャグ。
とりあえず女の子は可愛く描けてるとは思います。


◎ PLUG
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この漫画、唐突に面白くなる回がありますね...
でもってその面白さが解説したくなるって辺りがまたいい。


#1〜#3までの敵(ドラコ)が来る→やっつけるのワンパターンからは脱却してましたが、
逆にドラコがいらない子状態になってたんですよね。この辺り記事に書いとけよという話ではあるんですが。
かと言ってドラコを今までのような感じで出すとワンパターンに戻ってしまいますし...
ということで、今回の展開は実に上手いことやったなぁと思います。


そして、以前から「伏線張れ」と言い続けてきましたが今回ようやく。
『PLUG』 週刊少年サンデースーパー増刊号2012年1月号 p291 こじまたけし

まぁこの部分だけだとあからさま過ぎてもうひとつ感があるのですが、
『PLUG』 p281 こじまたけし

その前にも伏線張ってるんですよね。ここが素晴らしい。
伏線2つ張ってるから素晴らしいという訳じゃないですよ。


読者の読解力は一定でないので、上の画像の伏線を見ても気づかない人もいます。
そして、私のようにこれではあからさま過ぎるなぁと感じる人もいます。
そこで下の画像の伏線。
初見では伏線だとは気づかない、もしくは「何かあるな」としか思えない、
ごくありふれた台詞を使うことで、上の画像で「ああなるほど」と思わせる表現を使ってます。
もしくは読み返して初めて分かる。
読者の読解力のレベルがどこにあっても面白いと思わせる工夫、伏線の難易度に差があるんですよね。
これもまた「多様性」に棹さす表現のひとつです。


キャラの組み合わせ方も実にいいですね。
コミュニティが増えたり減ったりするってのは『ハヤテのごとく!』の基本パターンですが、
3つのカップルを作って、徐々にコミュニティを増やしつつ、6人が勢揃いした後も
会話する相手をコロコロ変えています。
単に組み合わせを変えるだけでは意味はありません。
このブログでさんざん取り上げてますが、以前The Structure of "Hayate the combat butler"で書いた
「ロールプレイング」「カップリング」「ミスディレクション」の要素を出せてるんですよね。


例えば、一二三(メガネ男子)の、PLUGやチカ達との対応の差(ロールプレイング)がキッチリ出てますし、
藤助はマネージャーという立場からくる偏見(≒ミスディレクション)があるので、
ドラコがPLUGの追っかけだと言っても納得してしまいます。
さらにはドラコがPLUGのファンだと宣言した事で、
『PLUG』 p303 こじまたけし

PLUGの対応が一変します。藤助がPLUGに与えた設定が伏線になってる訳です。
それ以前のPLUGの無表情もちゃんと設定に基づいた上でのことですし。
まぁPLUGの対応の変化は、以前から出せてるものではあるのですが。


何にせよ、#5と今回の#8だけクオリティがえらい高いです。
それこそ若木先生がネーム切ったんじゃね?と思うくらいw
このクオリティを維持しつつ、#5のようにバトルも絡められたならば、本誌昇格も夢ではないでしょう。


○ 二ノ前しいの作り方
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個人的には後半イロイロやりすぎな感じもしますw
まぁ地味に流れがちな作風なので、このくらいインパクトのある回は必要かもしれません。
合体→「あくをたおすぞ」の流れは笑いました。


○ CRIMSONS
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こちらも個人的にはイロイロやりすぎな感がw
『CRIMSONS』 週刊少年サンデースーパー増刊号2012年1月号 p357 菅野孝典

まぁコチラもインパクトのある回が必要なのは共通してますけども。
個人的に気になるのは以前から書いてますがリアリティの問題で、
チューブワーム云々は正しいんですが、あの海域に生育してる地域があるのか?という疑問と、
オハラエビが紅鮭寄生虫食べるようなケースあるのか?という疑問が。
どこまでがリアルでどこまでがフィクションなのかという線引きが欲しいんですよね。
そうでないと、読んでて疑心暗鬼になっちゃいます。
まー本編は微妙な扱いなんでしょうね... こうも外伝押しということは。


◎ 動物がお医者さん!?
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素晴らしい
ただ掲載順が気になるので、今回は2巻発売時に書こうと思っていた改善すべき点を重点的に挙げます。
まずは良かった点。
『動物がお医者さん!?』 週刊少年サンデースーパー増刊号2012年1月号 p392 富士昴

渚と幸平(加害者)との関係の相似形を、幸平と猫との関係で作る。写真も相似。
動物セラピーを導入する理由に無理がないんですよね。
「あることないこと言って偉い人だますの超得意」という一言で一蹴してるのもまたw
フィクションだからと大目に見れる部分もちゃんと理由出してる辺りは本当に好感が持てます。


私は以前からこの漫画を絶賛してます。
確かに面白いんですけど、どちらかと言うと青年誌向きなんですよね。
シリアスな場面が多い、ロジカルな内容ってのもあるんですが、
それ以上に問題なのが「キャラが弱い」。
もっと踏み込んで言うと、キャラクターの魅力を引き出す構造になってないんですよね。


確かに、叔父さんはけっこういい味を出してるキャラですし、バカ犬のフーは見てるだけでも癒されます。
ですが、例えばヒロインだと思しき星乃。何話出てませんか
これではキャラにファンが付きっこないです。
そもそも、少年漫画に大切なのは内容よりもむしろキャラ。
私のようなキャラ自体に付かない人間にはさほど影響しませんが、
キャラ読み*1する人間には見向きもされません。


ではどうするのか。星乃を出す、では答えになってません。
とは言っても私が持ってる理論は「ロールプレイング」「カップリング」「ミスディレクション
の組み合わせで個性を表現するという、上の『PLUG』でも書いた方法しかありません。
あれが正しいかは判りませんが、少なくともこういった感じの演出を導入すべきでしょう。
と言っても、以前やってたんですけどねぇ...


星乃が登場してないのは、この漫画においての役割(ロール)が明確ではないからだと思います。
『動物がお医者さん!?』 週刊少年サンデースーパー増刊2011年6月号 p145 富士昴

キャラの個性を出してる作品には弱いんですよ。
後はコミュニティちゃんと描ければもう完璧。もう本誌レベル。

以前こう書きました。いまでもキャラの個性自体は出せてないとは言いませんが、不十分かなと。
「いろんな『気質』を持ったキャラがいて、それぞれぴったりな居場所(役割)を見つけることが大切」
ということです。
例えば星乃は落ち込んだ時に励ます、調子乗った時に突っ込む、人間の話を犬の話に置き換えて共感する...
といったような、何かしらの役割は出してたのですから、
これをちゃんと意識してたら、最近とんとご無沙汰ってな事にはならん筈なんですがね...
キャラの役割(ロールプレイ)と、キャラの繋がり(カップリング)を描き、
情報の差、視点の差、誤解(ミスディレクション)を通じて枷や意外性を生み出すことによって
有機的にコミュニティを描けるか?というのが一番の課題ではないかと思います。
星乃登場シーン等では、その辺り描けてたんですけどねぇ。


『動物がお医者さん!?』 1巻 p167 富士昴

単行本のオマケにこういう事描いてますし、そもそもクラサンに掲載された読切2本はラブコメでしたから、
こういうのが嫌いな人じゃない筈なんですよね...
ブコメにシフトしろと言ってる訳ではありませんが、
ストーリーの流れのなかで、いかにキャラを活かすかということを本気で考える必要はあると思います。
とりあえず、鮫島の役割を考えましょうかw せっかくオーダーがあった事ですし。


とは言え、今回多少進展ありました。
いちたかさん曰く、「女の子の為に頑張るのがサンデーの漫画」
『動物がお医者さん!?』 p379

ある意味キャラ重視の描写です。まずコレありきだとは思いますね。


◎ クックドッポ
twitter(作画)
今回良かったですね。別に大阪住んでるから印付けてる訳じゃないですよ。
嫌味なキャラをギャフンと言わせてる辺りに爽快感が出てますし、
その後畳み掛けるようにアイデアを出していく辺りもまた爽快感が。


小学ににゃんせい
個人的に笑えるところまではいきませんが、相変わらずミスリードできてますな。
テンポもありますし。


○ 太陽のポスティーノ(読切) 山地ひでのり
twitter blog
以前にも書きましたが、まだ連載獲ってない新人さんの中で最も期待してる3人のうちの一人。
(残りの2人は黒田高祥先生、森園フミ子先生)
それだけに、◎付けられなかったのはちょっと残念。
『微笑みの奇術師』が文句なしの大賞でしたし。
ちなみに、ブログがえらい熱いですw


絵は受賞作の段階でクオリティが高かったですが、前よりすっきりしてます。
メカや動植物のデザインが良いので、雰囲気も相変わらず出せてます。
『太陽のポスティーノ』 週刊少年サンデースーパー増刊号2012年1月号 p460 山地ひでのり

連載を意識した読切でしょうから、受賞作のような意外性の連続を止めたのは問題ないでしょう。


ただねぇ、子供は騙せるのかもしれませんが、突っ込みどころが大杉。
まず、「ほぼ一直線の道なり」って、どこに道があるのかとw
それから、多少の高低差があれば溝を掘るだけで水は流れるのかもしれませんが、
水がそこから溢れて出てない程度の供給量しかないオアシスから数十kmも用水路引っ張ったら
途中で干上がってしまいますよ。


主人公が馬鹿力を持ってる裏付けとなるような設定が薄いのも不滿です。
一応、最初にデカいタンク持ってくることで表現してるつもりなんでしょうけども。
直前に師匠との回想シーンがあるので、ここでその辺りを表現できてればもっと良かったと思います。


何にせよファンタジー路線でいくとしたら、リアルだとどういう事になるのかをきちんと考え、
リアルでできない事をどうファンタジーな設定で埋めていくか?という作業が必要になってくると思います。
まぁこの辺りが課題なのはブログにも書いてるみたいなので大丈夫っぽいですけども。
ブログを読むと直接本誌を目指してるみたいで、その意気込みは高く買いますが、
現状では読切→短期連載を経て、とかじゃないとまだ厳しいかなーというのはあります。

*1:ある特定のキャラに感情移入する読み方