The Structure of "Gelatin Boy" 1

連載が終了して半年も経とうかというこの時期に書くのも何ですが、
元々『銀塩少年』を広めるために非公開から公開にしたブログなので、やはり総括はしておくべきだろうと。


結構disってるので後藤先生は読まないで!(と言ってもどうせ読まれるんですよねw)

1) 絵柄
約1年半の連載でしたが、かなり絵柄が変わってます。
上: 銀塩少年』 #1 p18 後藤隼平
下: 銀塩少年』 4巻 p157 後藤隼平


1巻は150箇所ほど修正したという話はあるのですが、この箇所はクラサン掲載時と同じです。
この画像見れば一目瞭然でしょう。かなり上手くなってます。
個人的に、素人から見て一番印象が変わるのが「瞳」と「顔の輪郭」だと思ってますが、
そのうち、特に輪郭が良くなってるんじゃないかと。
初期の頃、そして連載前の読切なんかを見ると縦長で馬面っぽい感じになってますが、
連載を続けていくにつれて丸くなってます。
丸くなればいいって話ではもちろんないんですが、丸くなるにつれバランスも良くなっていってる印象です。
この画像ではトーンの有無など瞳も違ってますが、基本的には変わってないように見えます。


他に変わったように見えるのは体のラインですね。
左: 銀塩少年』 #1 p11-12 後藤隼平
右: 銀塩少年』 4巻 p31 後藤隼平


初期は服が浮いてるというか、体にフィットしてない感があります。
2巻辺りからはそれが無くなってるんですよね。
野上武志先生曰く、服が浮いてるように描いてしまってる場合は、
まず下書きで裸を描いて、その上に服を着せると良くなるらしいですよ? 本当かどうか分かりませんが。


他にも色々あるみたいです。例えば

最近はZEBRAのカブラペン(クローム)を使ってます。
Gペンだとふにゃふにゃするし、強弱が付きすぎて好きな線じゃなかったんですよ。
だからあえて強弱が付かない(コピック)マルチライナーみたいなのを使ってたんですけど、
マルチライナーを使うときに、色んな太さのペンを左手に持ち、取っ換え引っ換えやってたんですよね。
いろんな太さの線があるから。
それが面倒くせーなーと思って、何とかなんねーの?と思って色々探していたら、
「あ、カブラペンを使えば出来るんだ」と銀塩少年の途中から気づいて。
だから、途中から付けペンに移行してます。
徐々に徐々に付けペンが増えてって、最終話はほとんど付けペンで描いているので、
比べていただけると面白いかもしれないです。
『ロクロウポッドキャスト!』 第22夜 13:20〜

ただでさえ絵柄に関してほとんど分からない上に
ペン先に関してはチンプンカンプンなのでこのくらいで...


恋愛漫画はどうしても絵のクオリティが求められますが、
連載を通じて「絵が売り」と言えるレベルにはなったんじゃないかな?とは思ってます。


2)良い構成
ぶっちゃけると、構成に関しては全体のバランスでみると悪いですw
特に問題なのがスペイン編。結局何しにいったんだよ感が満載です。
この辺りは次の記事で書ければいいなぁと後回しにして、ある程度仕方ない点はありまして。


そもそも、『銀塩少年』は当初5話、1巻で終了の予定でした。

みなさんの感想が気になる回でもあります。この第三話描いてみたのはいいのですが
お話が進んでない!もっと巻いて!! といった意見を伺ったりもして。


そーかあやっぱり月刊だともっとペースあげていかないといけないのかなと、
第四話ちょっと、いやかなり、描き直したりしてました。


状況が二転三転してまして、メルマガつくろーと思ってたのですが
なにげにあと三回しか配信できないのかな、と思っていたらそれが
あと二回と判明したり、いやもっと続けられるとなったり、くるくると。


もう大丈夫...なのかな?
後藤バックステージ ひとこと(09/06/04)
※現在は削除されてます。

とりあえず2巻までは続くことになり、その後反響が良かったこともあって『M・S DOLLS』と共に
サンデー超への移籍でさらに予定が伸び、最終的に4巻で終了という経緯になりました。
※打ち切りではないそうです。
このことから、新見さん編(?)、スペイン編は引き伸ばされた話だと個人的には見ます。
特にマタタキがスペインにいきなり引っ越す展開は、
銀塩少年』以前に描かれた読切『ナツメノコイ』でヒロインが転校することになるという展開とほぼ同じですが、
むしろ同じタイミングで『タッコク!!!』の主人公のガクがAAAに転校する話が出てきたことを考えると、
銀塩少年』も『タッコク!!!』も(その他の作品もですが)同時期に連載延長が決まったと見ていいでしょう。
ぶっちゃけ、『タッコク!!!』のAAA編も取ってつけた感があるのは事実です。


とは言え、そういった環境下ではかなり頑張ったと思います。
特に素晴らしかったのは#10と#20(最終話)。以前も書きましたがもう一度おさらいを。


#10が素晴らしいのは、#7の展開を伏線として使ってる点です。伏線がありゃいいって訳ではないですが。
銀塩少年』 2巻 p33-34 後藤隼平


このシーンを見れば、誰しも「マタタキが賞を取ってミライに告白する」という展開だと思うでしょう。
もちろん、マタタキはそのつもりです。
ところが、ミライからみれば話は違ってきます。
銀塩少年』 2巻 p154 後藤隼平

ミライ勧められて写真賞に出すような作品を撮ろうと頑張ってたらミライが倒れた。
これに反省して、少年時代のマタタキは懺悔の形として写真を廃棄します。


ミライはマタタキの写真がみんなに認められて欲しいと願ってますが、
自分が倒れたという過去があるためマタタキは賞を目指さなくなりました。
そのマタタキが賞を目指すということはすなわち、
結果的にマタタキの成功を阻んでいるというミライの重荷が解消される以上に、
ミライとマタタキの関係が清算されるということを意味します。
同じセリフで正反対の意味を持たせるという、この演出はまことに素晴らしいと思います。


まぁ、 「もう二度と見失わないよ。」とか言った癖に、マタタキはこの事覚えてないのかよ!
というツッコミはありますが...


#20は何と言ってもエピローグでしょう。
銀塩少年』 1巻 p3 後藤隼平

銀塩少年』のプロローグはこんな感じですが、
銀塩少年』 4巻 p162-164 後藤隼平


エピローグはプロローグの対比になってます。セリフも構成も実に美しい仕上がり。
#3の記事でこれを活かして欲しいとは書いてあるくらいなので、好みの表現なのは確かなんですが。