ゲッサン201105

◎ 鉄楽レトラ
正直、絵だけだろうなと高をくくってました。
『鉄楽レトラ』 ゲッサン2011年5月号 p59 佐原ミズ

女性的な絵と内容とは言え男性でも十分読めますし、キャラの個性もかなり出せてます。
自分の才能をどう生かすかという内容は個人的にツボなので客観的に見る自信がないですが、
リズム、伏線、雰囲気とかなりいいセンス持ってるんじゃないかなと思いました。
『FULL SWING』がやりたかったのはこんな感じなのかな、とw


なんか『鉄楽サトレ』と間違って覚えてしまったんですけども、
letra = 手紙、フラメンゴの歌詞って意味でしょうか。英語で言うところのletter。
これで大丈夫もう間違えない。


リンドバーグ
レース後の展開は素晴らしいなと思ってたんですが、
リンドバーグゲッサン2011年5月号 p124 アントンシク

このシーンはその中でも白眉だと思いますね。
いかにも凶暴なリンドバーグに「キレイ」と言わせるとは。
リンドバーグを見慣れてるから恐怖心が無いというのはあるんでしょうが、
女王のリンドバーグに対する執着に近いものをティルダも持ってるって事なんでしょうか。
これを一言で表現する。内容が充実してる証だと感じました。


BULLET ARMORS
引き続き堅調。
以前『月の蛇』を批判した時にも書きましたが
ベイビーステップ』 1巻 p105 勝木光

漫画のシナリオと同様、絵にも溜めが必要だと思うんですよね。
上の画像で言うところの「サッと引く」シーンが少ないので、動きが硬いように感じます。
映画よく観てるみたいなんで、このDVDを観て溜めの重要性を知って欲しいですね。


○ ぼくらのカプトン
この天丼はやられたw
2回目のページ数を半分にしてテンポアップを図ってる辺りが密かに好印象。
全く同じテンポで描かれるとダレますからね。


◎ ハレルヤ オーバードライブ!
相変わらず神掛かってます。いつ書けるかは保障できませんが、単独で必ず記事書きます。


アオイホノオ
完璧にオッサンホイホイ。
ゲッサン連載開始当初と違って、30台までならギリギリ理解できる程度にオッサンホイホイなのがいいですね。


まねこい
ようやくまねこいサイコロが内容と上手く絡んだというか。
「骨折る」のミスリード覚悟完了する根拠になってます。
格闘漫画でもないのにやたらと格闘の理屈の筋が通ってるのは感心しました。


みてくれ重視(読切) 瀬戸ミクモ
この漫画自体のみてくれは良いんですけどね。
8pの難しさはあるでしょうけど、個人的には面白い漫画描けそうな感じはしません。
まぁTALI先生の前例があるので何とも言えないところですが。とにかく32pの読切読んでからですね。


○ アサギロ
殺陣がないとボチボチの面白さ。とは言えキャラ、時代の雰囲気も出せてます。
個人的には黒船のデカさは日本の船との比較で表して欲しかった気はしますが。


ここが噂のエル・パラシオ
まぁ陽向回はだいたいクオリティ高いんですけれども。
個人的には陽向のキャラがそんなに好きって訳ではないので、内容を評価してって事になってると思います。

もうちょい思考の差も出して欲しいかなと。要するに「モノローグ増やそう」。
各キャラのモノローグが増えて、それがバラエティに富んだものであれば
それをいかに纏めるか、仲裁するか、決裂するか、誤解するか...etc とシナリオの幅も広がってくるでしょうし。
まーあんまりやっちゃうと『ハレルヤ』と似た感じになるんですけどね。

前回の記事でこう書きましたが、今回モノローグ多目でよかったと思います。
多けりゃいいってもんじゃないですが、絵やセリフもキャラの心情がよりストレートに出てたかなと。


桜花と忠輔との間に何があったか?を探る展開もいいですね。
『ハヤテ』や『ハレルヤ』の記事で何度か書いてる「情報に差を付ける」です。


もう一つ良かったのはロールプレイ的要素。「対応に差を付ける」
基本的にキャラが違った時に対応の仕方が違うことでキャラの差を明確にするってのがパターンですが、
今回のように以前との関係性が変わった場合にも使えます。
ここが噂のエル・パラシオゲッサン2011年5月号 p484 あおやぎ孝夫

個人的にお色気シーンは単に肌の露出で決まるのではなく、
「恥じらい」「チラリズム」「身体のしなり」のいずれかもしくはその組み合わせがあってこそ
だと信じて疑ってないのですが、そういう意味でもいいシーンだと思います。(チラではないですが)
そういうのが書きたいのではなくて
ここが噂のエル・パラシオ』 2巻 p39 あおやぎ孝夫

これとの差ですね。二人の関係が少し変わったことで対応も変わる。
「関係の履歴」も関わってくる良い演出だと思います。
陽向にも同じ対応させてるのもまたいいですね。


桜花が窓から忠輔を見つめてるシーンも良かったですし、
前回ちょこっと書いたレフェリング向上の努力もちゃんと抑えてます。
桜花が飛び蹴りしてるシーンも良かったですね。
シリアスなシーン続けた所に急にギャグ入れてたので意外性がありました。
何にせよ、今までで一番良かった回だと思います。この水準以上のものを出し続けてくれればいいのですが。



◎ 月の蛇
個人的には王進が出てた回が一番好きですが、構造的に見れば今回が今までで一番のデキだったでしょうか。
それだけに実に惜しいなーと思っちゃうんですけれど。

いっそのこと扈三娘が寝返ったりしませんかね?

前回こう書きましたが、見事に寝返ってくれました。
パターン的には花栄にやられて飛虎が敵討ち、って感じになるんでしょうけど、今後扈三娘をどうするかが気になりますね。
水滸伝よく知らないんですが、wiki見たら当然ながら梁山泊の一員ですし、後で王英と結婚する事になるみたいですし。
まぁ元々水滸伝をベースにしてるだけで準拠してる訳ではないので、
どれだけオリジナリティを発揮しつつ原作のエッセンスを抽出するか、という感じでいいと思います。
王英も味方になるとかね。
何にせよ味方キャラ3人だとカプ厨取り込めませんから、味方増やして欲しいというのが個人的な要望です。


戦闘シーンは戦術性が如実に出てきました。
『月の蛇』 ゲッサン2011年5月号 p522 中道裕大

流れ的にはいいですね。
まず短刀で突撃(その際にも狙いはある)、あっさり跳ね返された後に策を考え、罠でしとめる。
井戸に落とす前に目潰ししてる辺りも説得力が増しますし、黒旋風の見せ場も作ってます。
惜しいなぁと思うのはもう一押し足りない点ですね。


あまり重要でない点からいくと、上の画像のクリフハンガー。個人的には斧を引っ掛けてた方が良かったかなーと。
黒旋風のアイコンになってますし、斧から手が離れることによって無力化した感じが出ますし。
土握った手に油かけるよりも、斧を握った手に油かけた方が滑りやすそうな感じが出るでしょうしね。


構造的に問題なのは意外性の面。
『月の蛇』 p515

水をトラップに使うことを思いついて、酢を使って目潰しにする。
さらに枯れ井戸、胡麻油と水に関連したトラップを使っていくという辺り非常に説得力があります。
が、これだと戦術的な内容の半分しか面白さに繋げられてません。
トリックを見せながら手品をしてるようなもんです。
このブログでの言い回しを使うと「ミスディレクション」の使い方です。


以前、『ハヤテ』考察 The Structure of "Hayate the combat butler" 4) ミスディレクションの項で書きましたが、
スリードの対象は漫画内のキャラと、読者の2つがあります。
今回の戦闘シーンだと、黒旋風に対しては意外性を出せてますが、読者に対しては出せてません。
そもそも戦術性を出す意味は、まず一つは説得力ですが、もう一つは意外性です。
読者にどういう手があるのか推理させた後「そんな手があったのか」と思わせることで面白さに繋げます。
作者的には意外性も出せてると思ったのかもしれませんが、
青慈が井戸の所で誘ってる時点でまだ策があると感じてしまいます。


例えば、上手いこと「水」をテーマにしたトラップを3つ用意できたのですから、
ベタな展開ではありますが、酢の段階で「まだ戦えるのかこいつは」的なことを言って
読者に対してもう策は無いものだとミスリードしておく。
『月の蛇』 p520

このシーンで青慈の服が切れるとかで絶体絶命のピンチかと思わせておいて、青慈は余裕というか勝ったような表情をする。
何故そんな余裕あるの?と思ったら井戸トラップ発動...とか。


何にせよ、構造的に以前よりレベルが上がってるので、このレベルは維持できそうです。
後は演出面でもう少しの工夫を。


マコトの王者
文句なし。素晴らしいです。
前にも書きましたがこの作品こそが「この漫画が凄い」に取り上げられるべきなんじゃないかなーと。
「ロールプレイ」に関してはJ・アーチャーの『ケインとアベル』(小説)の比じゃないくらい上手くやってると思います。


信長協奏曲
こちらも相変わらず素晴らしいですな。
史実を忠実に押さえるところは押さえ、フィクションにもそれなりの説得力、さらにgdgdな雰囲気。素晴らしいです。