揉み払い師

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だいぶ遅れましたが、「これ連載でやれんじゃね?」と言った手前、本当に連載始めたのにスルーする訳にはいかんので。
あと、第2回クラサン第2回新人王決定戦にエントリーしてなかった事に愚痴ったりしてましたしね。


まず、コレを連載しようという決断をした編集部を価したいです。
このテの作品は生理的に受け付けない人が相当数出るので、平均スコアを競うクラサン新人王では絶対勝ちあがれません。
例えアクセス数が多かったとしてもですよ。
なので、新人王決定戦にエントリーさせず(?)、連載決定した判断は間違ってないと思います。


で、連載になって読切とどう変わったかですが。
読切『揉み師』はどっちかと言うとアバター系バトルの範疇に入る漫画でした。
アバター系バトル自体には何も問題ないのですが、クラサンでやるには一つ問題がありました。
既に『ポップコーンアバター』『M・S DOLLS』の2作品がアバター系バトルなので被りまくるという点です。
時間が経てば状況が変わるかもと思ってましたが、幸か不幸かこの状況は変わってないので、アバター系バトルを
避けるしか方法は無いでしょう。
(幸=どちらも連載が続いてる 不幸=どちらも本誌に格上げされてない)


記事書いた時には気付いてませんでしたが、この漫画でアバター系バトルをやるのには一つ不向きな点がありまして、
パートナーが固定となると、揉む乳が常に同じということになります。
ストーリーがマンネリへと向かう原因にもなり、折角女性の新キャラ出しても揉まないという勿体無い事にもなります。
もちろんパートナー非固定にすりゃいいんですが、敵もアバターだとすると後者の構造は変わりません。


北斗の拳』3巻(愛蔵版コミックス) p99

「身体に触ってナニカする」漫画と言えば『北斗の拳』ですが、やれる事は限られてます。
「治癒する(強化する)」「倒す」の2つだけです。
なので、女性に憑いた悪霊を倒すという「除霊バトルファンタチチー」への変更は理に適ってます。
新キャラバンバン出してバンバン揉めますしね。
ということで、構造的には連載に耐えうるようにはなってます。


まー問題はここからなんですけれども。
個人的な好みの問題にも関連してくるので客観的な評価は難しいのですが、
現段階では問題点が二つあるように思います。


一つはギャグの質の問題。
読切『揉み師』はおバカ系のギャグを混ぜつつ色気も出す漫画でした。
この手の漫画は『To Loveる』など、枚挙に暇がないです。基本的に相性が良いからだと思います。
一方『揉み払い師』はシリアス系のギャグで攻めてきました。
色気あるなしはともかく、代表的な漫画は先にも挙げた『北斗の拳』でしょう。

作品の一部がギャグとして捉えられることについて原哲夫は必然的に表現していると語り、また原作者の武論尊もスプラッタ描写をカラッと表現するように求めたと語っている。アニメ版で監督を担当した芦田豊雄も、ほぼ同様の意図で制作していたという。
悪党達のあの手この手の悪事と、それに対するサディスティックなまでのケンシロウの拷問・制裁というパターンは、「絶妙のボケとツッコミ」の一種のギャグ漫画とも解釈出来ることが、評論家の夏目房之介岡田斗司夫らによって指摘されている。
wikipedia 北斗の拳 本作のギャグ性

この手のギャグとお色気とをミックスした作品があるのか知りませんが、少なくともマイナーなのは確かでしょう。
あえてシリアスなギャグと絡めたことについては評価します。
が、肝心のギャグに繋がってるか?と言えばかなり疑問です。(この辺りは好みの問題かもしれません)


どこに問題があるのかイマイチ判ってませんが、恐らく質の問題でしょう。
とは言ってもおバカ系か否かの質ではなく、レベルが低いという意味での質でもなく、
上記の引用にもあるような「カラッとした描写」に欠けるからではないか?と今の所考えます。
例えば、悶えるシーンをアニメ版『Mr.味っ子』的な演出にしてみるとか。
演出はギャグ系には寄せずに、あくまでシリアス描写のままってのが条件ですけども。


シリアスにしたおかげで、主人公の感情がほとんど出てこないという点も今のところマイナスなように思えます。
「これは断じてセクハラではない」という言い訳をするにはもってこいの設定ではあるんですけれども...


二つめは決めコマの問題。ここは読切の段階で指摘しておくべきでした。
『揉み師』 p28-29 空詠大智

『揉み師』p31

読切の段階では「揉むシーン」と「敵を倒す」シーンが別になってるので、盛り上げ所がブレてたんですよね。
アバター系バトルから除霊になったおかげで『揉み払い師』はこの問題から逃れられるはずなのですが...


なして敵の動きを止めた後、魔方陣描いて除霊するって設定にしたのかと。
揉み払い師』 #1 p37 空詠大智

確かに敵の動きを止めるところでは全く盛り上がってないので、ある意味盛り上げ所がブレてないんですが、
単にバトルのカタルシスを去勢しただけなんですよね。
まぁパートナーの小波の活躍の場を与えたいってのがあるんでしょうけども。


方陣描くのはもう設定的に固まってしまったので、これを保持しつつバトルのカタルシスを出そうとするとなると、
再三出してますが『北斗の拳』パターンでしょうかねぇ。
「お前の命は後1分」的な感じで。
揉みしごいた後に勝手に身体が魔方陣の方へ歩き出し、悪霊が命乞いやら悪態を付いたりした後除霊されるとか。
まぁこの辺りのパターンは『北斗の拳』で色々出てますから、詳しく書く必要もなさそうですが。
何にせよ、バトルと揉みと敵倒すタイミングをそろえる必要があるとは思います。


主な問題点はこの二つですが、逆にこの人の作品特有の一本調子な感じは若干薄れたかな?という印象。
伏線やらで意表を突く展開ってのは相変わらず無いんですけども。


まとめると、全体的な構成としてはきちんと連載に耐えうる構造として作り直したこと、
あえてシリアス系のギャグにトライした事は評価します。
問題は面白さへと繋がる最後のツメが甘く、その辺りに課題が残るってことでしょうか。
生理的に受け付けない人やアンチが出てくるのは必然なので、そういう人に妥協するとこの作品ダメになるとは思います。