ポップコーンアバター

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ポップコーンアバター

ポップコーンアバター

星野倖一郎
(C)Kouichiro Hoshino/Shogakukan 2009

不登校児の和田蔵人は、学校も行かずに今日も街をさまよう。そんな蔵人の前に現れたのは金髪の超カワイイ女子、リサ・ヴァーユ。ラブストーリーは突然に…ってなことはなく、自ら「神[ディーバ]」であると宣言したリサは、蔵人を魔族[アスラ]との戦いに巻き込んでいく。訳もわからぬ蔵人だが、不思議な能力が発動して…? ドSな女神様とちょいM少年が織り成す、バトルラブファンタジー!!

posted with EmbedSunday on 2009-12-19

かなり批判的に書いてるので、作者本人やファンの方は読まない方がいいですよとだけは言っておきます。

クラサンのみの連載はこれを含めて13作品ありますが、『銀塩少年』『M・S DOLLS』がサンデー超との掛け持ちなるので、
本誌から都落ちの『アーティストアクロ』『やおよろっ!』と並んで看板になってもらわないと困る作品。
今の所私が最初から読んでるのは『銀塩』『MS』『夏草ホームベース』とこの作品です。
『夏草』が地味なのは絵柄とマッチした味とも取れますが、『ポップコーンアバター』は派手な絵とは対照的で、ミスマッチな印象は拭えません。
このままだと人気で『DCD』に抜かれかねないんじゃないかとさえ思います。まぁ『DCD』次第ですが。


なぜ地味なのか。
前作『MARΩ』もそうですが、バトル漫画なのにも関わらずバトルが非常に地味だからでしょう。


1) 必殺技がとても地味
一つ目は「スパルサナ」。要はハイジャンプ、単なる移動技ですので地味です。
『ポップコーンアバター』 #9 p20 星野倖一郎

二つ目は「アニラ」。風でふっ飛ばします。
『ポップコーンアバター』 #9 p19

これまた地味。
せめてアニラ連発で何かしらの技名になればいいんですが、
『ポップコーンアバター』 #1 p31

それもありません。
ONE PIECE』ならゴムゴムのパンチ→ゴムゴムのガトリング になるのにね。
敵も手が6本になって金属バット持ってるとか、触手出してくるとか、とにかく地味です。
ゲームでも昔は『ストリートファイターII』でウケてた時代はありましたが、コンボや必殺技はどんどん派手になっていきました。
(まぁ『ストI』では昇竜拳なんかほとんど出せない、当てたら勝ちな超必殺技でしたけれども)
最近の仮面ライダーが「ジャンプ」「キック」「パンチ」だけで流行ると思いますか?
漫画も同じでしょう。
HUNTER×HUNTER』のヒソカように運用面の工夫で見ごたえを出す、というなら話が別ですが、それも無いですしね。


2) 駆け引きがほとんどない
バトルのほとんどが、最初やられる→励まされてやる気だす→相手やっつける というだけの構成。
これでバトルが面白い訳がなく。
フェイントの一つも無いですからねぇ。
内面の葛藤はそれなりに描けてるんですが、バトルシーンに迫力がありつつ葛藤も描けてた『トガリ』でさえ打ち切られた訳で。
ゲームに置き換えるなら、大斬り一発入ったらほぼ終了な『侍スピリッツ』を初心者がプレイするようなものです。
シャルロットがひたすらジャンプ大斬りしてる「サルロット」と言った方がいいかもしれません。
(どれだけの人間にこの表現で伝わるか謎ですが)
まぁ『侍スピ』は達人同士の戦いになると、その一発をどう入れるか?という間合いの見極めがもの凄くシビアで面白くなるのですけれど、
5秒に一回技を出すペースでちょこちょこ動いて体力満タンで時間切れという、初心者が見ればツマラナイものになります。


というか、そもそも作者がバトルモノをやりたいと思ってないんじゃないか?とさえ見えます。
こんなに地味なのに担当から何も言われないのも不思議です。
セカイ系にありがちな個人的葛藤の描写はそれなりに、見栄えのする絵は高く評価できるのですが、
(漫画とは関係ないけどシェリル絵は秀逸でした)
こんな中途半端なバトルやるくらいなら、いっそバトルやらない方がよっぽどマシじゃないか。とさえ思いますね。


3) キャラが使い捨て
まぁ設定上やむを得ない面もありますが、(そもそも負けたら即消滅という設定が問題)
キャラ使い捨てだとバックボーンが貧弱になるため「あ、またなんか来た」という感じです。
ライバルや宿敵といった、物語を盛り上げる要素をあえて捨てているというか。
うえきの法則』も最初は敵キャラ使い捨てでしたが、後の方で変えてきました。やはりバトル漫画には必須の要素だと思います。
使い捨てするにしても、例えば『PEACE MAKER』のようにバトルに入る前に敵との因縁を描く、という風にしないと淡白すぎます。


で、どうすれば良くなるか?ですが、当然ながら
1) 必殺技を派手に
2) バトルの駆け引きを描く
3) キャラ使い捨てにしない
は改善点。


ここはあくまで想像ですが、これらの問題点が出るのは
ほぼ一話完結の構成にしつつ主人公の内面をきっちり描こうとすると、バトルシーンを淡白にせざるを得ないから、
だと思われます。
なので、基本一話完結を止めて、序破急の3話構成くらいにすることが第一。


必殺技を派手にするのは新技出せば済む話なので何も難しいことはないでしょう。
個人的にはバトルの駆け引きに重点を置いて欲しいです。まぁ私の好みなんで必ずしも読者ウケが良くなるとは限りませんが。
『ポップコーンアバター』 #1 p27

一応、「能力が出せるのはアバターから半径37.5mの範囲」という設定があるので、これは使って欲しいです。
特に敵が近接攻撃しかできない格闘系なら距離を取ればそれだけで勝てそうですし。
いかに敵との距離を取りつつ、アバターからの距離が離れないようにして戦うか。
ほら戦術性が出てきた。
まぁリサを抱えて飛び回れば済む話なのかもしれませんけども。


例えば敵を狙ったように見せかけて敵アバターを吹っ飛ばして無力化したところに近接でアニラぶち込むとか、
アニラを地面に当てて砂埃を起こして目くらましにし、そのスキに敵アバターにを掻っ攫うとか。
この設定だけでいくらでも戦術的に戦えるアイデアは出てくると思います。
今のところタイマンバトルですが、団体戦にすると格闘系や間接攻撃、支援系、回復系といった風に能力にもバラエティが出せるでしょうし、
MARVEL VS. CAPCOM』のヴァリアブルコンビネーション的な演出も可能でしょう。
まぁ『エム×ゼロ』のクラス対抗マッチのように、ややこしいルール付けるのは少し問題ですけれども。


何にせよ、今の状態を続けても限界があると思います。
『M・S DOLLS』のように「格闘をウリにしないバトル漫画」にするなら、それなりの工夫は必要でしょうし。
励まされてやる気でたらスーパーモード突入とか。
今の所は「バトル描写がおぼつかないバトル漫画」でしかありません。
絵のクオリティに負けない、充実した内容を伴って欲しいです。