ケータイ漫画の未来

今日更新分のたけくまメモ 竹熊君、“紙”はもう、ダメだよ…(後編)が面白かったので、それに触発されて書いてみます。


とある漫画家さんは、一昨年は月収10万にまで落ち込んでたのが、携帯エロ漫画を描きはじめたら月収70万にまで回復した
という話を聞くと、なるほど儲かってるなーとも思いますし、そんな状況が永続はしないだろうなとは思います。
ただ、3年で終わるかと言われるとそうでもない気はします。
似たようなブームとしてケータイ小説がありましたが、『Deep Love』が2002年、衝撃(笑激)の『あたし彼女』が2008年。
ブームはその前に終わってるのかもしれませんが、少なくとも5年は続いてた訳で、携帯漫画もそのくらい続きそうな気はします。
ケータイ小説もブームが終わったからといって決して廃れた訳ではなく、以前は需要の伸びに供給が追いつかなかったが故にある特定の作品に
ファンが殺到して大ヒットになっただけで、今はむしろ供給過多で特定のヒット作が出なくなったが故に一般人からは見えなくなっただけ、
という風に解釈してます。
実際「魔法のiらんど」とかが潰れた訳ではないですしね。
携帯漫画も似たような状況になると思われます。
赤字になる前にコンテンツを他の業者に売り払って事業を畳むのが一番賢明な方法だと私も思いますが、
あえて生き残る戦略を考えてみます。
まぁモバサンでちょろっと見ただけなので携帯漫画コンテンツに関する知識はほとんど無いのですが。


1)ヒット作品の移植
大手がやってるのはだいたいこの路線だとは思います。まぁヒット作品に限らないのかもしれませんが。
携帯ゲームでも「DQ」や「FF」「桃鉄」「いたスト」等のヒット作が移植されてそれなりに軌道に乗ってるように見えるので、
携帯漫画でも今後一定の売上は見込めるでしょう。
まぁ著作権は出版社に囲われると思うので、新規参入組にとっては関係ない話でしょう。となると


2)携帯オリジナル作品
これが鍵になるでしょう。
ユーザーの多様なニーズに応えるように、さまざまなジャンルの漫画を用意する。
方向性としては携帯ゲームの「Gree」です。


最もニーズが多いのはBL含む「エロ」でしょう。
エロに特化するサイトが主流になるでしょうが、エロの中でも純愛、ハーレム、鬼畜、NTR、触手等、さまざまなジャンルを用意するサイトから
そのジャンルに特化したサイトまで出てくるかもしれません。
ただ、手軽にページにアクセスできるのが携帯漫画の売りになってると思うので、かなり探さないと辿り着けないようでは厳しいと思われます。
故にニッチへ向かっても成功しないとみます。
携帯エロ漫画がそれなりに浸透すると、恐らくゾーニングの問題が出てくるので、業界団体を作って自主規制の仕組みは作る必要あるでしょう。
携帯会社と組んで、生徒が所持する携帯ではアクセスできないようなソフト面での対応も求められるようになるかもしれません。


3)携帯に最適化した作品へ
また、携帯というプラットフォームに最適化された漫画を描く必要もあるでしょう。
私はモバサンで無料になってる2〜3作品を見ただけなので何とも言えませんが、やはり紙媒体用に描かれた作品を携帯漫画に移植するのは
かなり無理があると感じました。
例えば
銀塩少年』 #1 p1 後藤隼平

このシーン。モバサンではまず右下のモノローグを写し、次に顔のアップへとスクロール、最後に左下のフキダシへとスクロールしていきます。

移植する際にエディターの人がかなり頑張っている感はあるのですが、携帯漫画を読み慣れてないせいか、これがかなりのストレスになります。
最大の原因はどこにスクロールするのか先読みできないからだと思われます。
車酔いに近い感覚です。
酔いに関しては何かしら次にどちらへスクロールするのかを表示させればマシにはなるのかもしれませんが、
そういった工夫をしたとしても漫画をルーペで読んでるような窮屈な印象は拭えません。
あくまで作品は紙媒体で読まれることを前提に描かれてるのですから。
クラサンでもモバサンでも『銀塩少年』の#1が見れるようになってますので、確認してみるのもいいかもしれません。
クラブサンデー 銀塩少年
モバイルサンデー http://mobasun.com(携帯のみ,パケ放題必須)
無料立ち読み→クラブサンデーバックナンバーをもっと読む→銀塩少年


オリジナル作品には、後で紙媒体で単行本を出す予定が無ければ、この制約からは解放されます。
かなり適当に編集したのでアレですが、上の例も下のような編集ならストレスをあまり感じなくなるでしょう。
(→ 左から右へと読んで下さい。順番逆にすべきだったか...)

方向性としては、音声の代わりにフキダシがあるアニメへと向かうのが正しいと思います。
一番近いのがGIFアニメですね。
エロならピストン運動なんて2枚あればそれなりに雰囲気出ますし、紙媒体では出せない演出でもあります。
スクロールも紙媒体用の漫画のセリフ等を全部見せようとするから無理が出るのであって、
携帯漫画用の作品ならアニメのスクロールのような演出として表現できるでしょう。
また、フルカラー作品も増えてくると思われます。


逆に、携帯漫画に最適化された作品は紙媒体には向かないでしょう。
これは単行本で読む「あたし彼女」がチープと呼ぶだけでは物足りないくらいアレな作品となるのを見ても分かります。
実際「あたし彼女」は携帯というプラットフォームに最適化してることだけをみればよくできてると思います。
さすがに内容は評価しませんがねw


センテンスが短いのは限られた文字数しか表示されない携帯に適していますし、
やたらと展開が速いのも携帯では文字をスクロールさせる時間が掛かる分、小説よりテンポアップする必要があるからでしょう。
内容がぺらぺらなのは単に読者層を反映させたものだと思いますが、携帯漫画でもある程度ぺらぺらな方向へシフトする必要があるでしょう。
たけくまメモにもあるように、紙媒体の漫画を読む層と携帯漫画を読む層は必ずしも一致しないでしょうから。


携帯漫画オリジナルな作品を掲載する新規参入のサイトは、いずれこういった方向へシフトすると思われます。
まぁそういったサイトを見ていないので、既に最適化されているのかもしれませんが。


4)発展の可能性
たけくまメモの少し前のエントリーで触れられているように、web媒体は基本的に宣伝には向くがネット配信には向かないというのは
私も基本的には同意します。
ただ、携帯漫画はそこから収益を上げられる可能性は十分あると見ています。


主な理由は「いつでも、どこでも、手軽に(安く)」見られるという利点があるからです。アメリカでも電子書籍が軌道に乗りかけてますしね。
そして最大の理由は「課金徴収が容易」これに尽きます。
webなら電子マネーなりキャッシュカードのID入力なり手間が掛かりますが、携帯ならそんな手間も掛かりません。
参入障壁が低いがゆえに過当競争になり、いずれ収益は悪化するでしょうが、業界が潰れるという事はないでしょう。


作品がコピーされにくいのも利点です。web媒体ではコピー問題が常に付き纏いますが、携帯でも方法があるのかもしれませんけども
1作品50円くらいの単価なら正規に払った方が楽です。
この利点があるからこそ、海外進出の可能性も見えてきます。
但し国によって暴力的表現や性的表現のハードルの違いがネックになりますし、いずれ問題化すると思いますが。


需要があれば、音声やBGM入りのものも出てくるでしょう。こうなれば最早携帯漫画ではなく携帯アニメですが。
声優も新人ならかなり単価は低いですし、一日で2桁の作品を読めば1作品当たりの単価も抑えられるでしょう。
問題はそこに需要があるかどうかですがね。