ゲッサン201312

ゲッサン 2013年 12月号 [雑誌]

ゲッサン 2013年 12月号 [雑誌]

それだけアンケートが良いって事なんでしょうけど、
作者が新人なのにも関わらず『ふだつきのキョーコちゃん』がイキナリの表紙。
ゲッサン2013年12月号 表紙

...ただまぁ、mini 2号では割と味になってた山本先生のカラーですが、
B5サイズになると粗が目立つかなぁという気はします。絵自体は良いと思うんですけども。
個人的にはこういうシンプルな絵柄はアニメ塗りに近い方が映えると思ってるんですが、
その辺りどうなんでしょうか。
あと、表紙に『キョーコ』のタイトルロゴをあえて使わなかったのは良い判断に見えます。
この表紙にあのロゴを入れると少し煩くなりそうで。

生え抜きの新人作家は漫画ブランドにとってかけがえのない「希望」です。
ゲッサン編集部こぼれ話 第47杯目 市原武法

でまぁイキナリ巻末の文章を取り上げるのもどうかと思いますが、
ニュースに繋がる事なので。
個人的に、生え抜きの新人作家の定義が正直よく分かりません。
山本先生は初受賞がヤンマガですけども、
初連載がゲッサンゲッサン生え抜きという事になるんでしょうか。


※追記:初受賞は恐らくIKKIですね。


それはともかく、生え抜きの表紙抜擢は新人にもチャンスが与えられるよという、
漫画家志望者に対する意思表示であり希望にもなりますし、
読者にとっても新人漫画家の表紙は新鮮味があります。
もう『MIX』の表紙には飽きたんや! (本音)
...とは言え、半分くらいはあだち充先生で持ってる雑誌でもあるので、
半年に1度、単行本が出る月には表紙にした方がいいんでしょうね。
私が飽きたかどうかはどうでもいい事ですし、あだち先生が表紙になると映える事は否定できませんから。

僕は新人育成こそがライフワークです。なのでゲッサンの使命もまた新人作家の育成・抜擢なのです。
(中略)
ただひたむきに新人作家育成に取り組む漫画ブランドだけがき残る時代が来ようとしています。
ゲッサン編集部こぼれ話 第47杯目 市原武法

『県立伊手高柔道部物語 いでじゅう!』 5巻 p185 モリタイシ

こういう事をやってた人だけに、「新人育成こそがライフワーク」という言葉には説得力はあります。
(他の担当さんがどうなのかは知りません)
「新人作家育成に取り組む漫画ブランドだけが生き残る時代が来ようとしてる」というのは
市原編集長の希望的観測だという気が個人的にはするのですが、
少なくとも新人作家育成を怠ったために衰退している雑誌が... ねぇ。
(その雑誌もここ半年くらいで多少変わりつつありますが)

なので僕はゲッサンルーキーたちの情熱にもっともっと応えなければなりません。すなわち彼らの活躍の「場」である「ゲッサンmini」の拡充です。来年のどこかのタイミングから、なるべく毎号付けたいと考えています
ゲッサン編集部こぼれ話 第47杯目 市原武法

...え?w
いやまぁ個人的には超絶嬉しいんですけど、編集部5人で大丈夫なんでしょうかw
作家側からすれば、それだけ他の雑誌だと未発表のまま埋もれてる読切がゴロゴロある
って事なのかもしれませんけど。


あと、これ毎月だと私が記事書くの大変だなーともw
まぁ好きでやってる事なんで、苦にはならないでしょうけど。


◎ ひとりぼっちの地球侵略
恐らくコチラのほうが人気があるであろう、日常モード。
色んなキャラを絡ませ、ロールプレイさせ、サービスシーンも入れて、
構成的によく出来てると思います。
何より、面白いと思わせるネタがバラエティ溢れてる辺り素晴らしいです。
『ひとりぼっちの地球侵略』 ゲッサン2013年12月号 p68 小川麻衣子

基本的にはどんなキャラか?の再描写がメインでしたが、
アイラ=マシェフスキー (ちゃんと名前覚えたよアピール) 回りだけは、
キャラの新しい一面を描いてる辺り俺得でした。


ふだつきのキョーコちゃん
表紙を任されるくらい人気が出たとは言え、個人的には1・2話と若干不安なスタートでした。
その後は単に個人的な好みへとより近づいてきたから評価が変わった、
という話も無くはないですがw


このブログではさんざん「ロールプレイ」という言葉を (というかすぐ上でも) 使ってますが、
同じ状況下でキャラがどう動くのか。
同じ動きをしたり、正反対の動きをしたり。この辺りが徹底されてるように見えます。
キョーコと同じクラスの男子は、キョーコにいい所を見せようと、
日々野さんと同じクラスの男子は、日々野さんにいい所を見せようと意気込む。
ふだつきのキョーコちゃんゲッサン2013年12月号 p88 山本崇一朗

日々野さんはケンジ (札月兄) を周りと馴染ませようとして、
ケンジは周りをビビらせようとする。
まぁ理屈だけ書いても何の面白みもありませんが、
こういうキャラの動かし方をすると、ギャップや天丼としての面白さが出てくるんだと思います。


で、天丼も時には少し捻ってる辺りがまた素晴らしい。
ふだつきのキョーコちゃんゲッサン2013年12月号 p90 山本崇一朗

一度目はただ単に凄い記録を出したとだけ。
(3話をちゃんと覚えていれば、この時点で何が原因かは読めます)
ふだつきのキョーコちゃんゲッサン2013年12月号 p94 山本崇一朗

そして、二度目はどういう経緯かをちゃんと読者に伝わるように描きながら。
こういう風に「情報に差を付ける」ことによって、単なる天丼より深みが増すと思います。
ふだつきのキョーコちゃんゲッサン2013年12月号 p90 山本崇一朗

二度目のシーンを見れば、もしくは二度目の展開を覚えてる状態で読みなおしてみれば、
恐らくこのシーンもキョーコがケンジと日々野さんのやりとりを見ていて嫉妬している
という事が分かるんじゃないかと。
漫画の中では描写されてはいませんが、行間を読む感じで想像を巡らせると、
ケンジがキョーコの事をいつも気にかけてるように、
キョーコもケンジの事をいつも気にかけてるのではないかと読み取れます。


こういう、「読み直すと新たな発見がある」タイプの漫画は、
少なくとも単行本を買った際の満足度が上がるような気がします。
ふだつきのキョーコちゃんゲッサン2013年12月号 p102 山本崇一朗

さらには、三度目はキョーコが倒れる展開にして、天丼した事をミスリードの材料に使う。


何にせよ、ただひたすら「シスコン」を連呼していた1話とは雲泥の差。
読者とちゃんと駆け引きが出来てる訳で、この漫画はもう大丈夫だと実感しました。
一番肝心の萌え要素は1話からちゃんと出せてたんで、人気はそう変わらないかもしれませんが。


◎ あやしや
マチ★アソビの時に『あやしや』の編集者☆野さんが「来月からは日常回に戻ります」と、
来月からどうなるかを聞いていないのにも関わらず話してくれてたんですが、
ナタリーの記事にもあったように、やはり日常回の方が反応がいいんでしょうなぁ。
かくいう私も日常回でハマったクチですが。
割合的には日常回の方が多い、というのはアリでしょうが、「かけがえのない日常」を描いてるため、
緩急以外の面でもバトルは必須なので、今まで通りバランス良くやってくれれば。


ただまぁハッとするようなシーンに日常回が多いのは事実で。
このシーンは男女の考え方の違いがきちんと描かれてるなぁと。
『あやしや』 ゲッサン2013年12月号 p135 坂ノ睦

 男は自力で問題が解決できると感じていたいし、他人と話しあうことは相手に負担をかけると考える。だから、自分より良い解決策を出してくれそうなとき以外は、親友にさえも悩みを打ちあけない。


  向こうから求められないかぎり、男にアドバイスしないこと。あなたならきっと解決できるはずよ、と信頼感を表すだけにとどめよう。


 どんな気持ちなのか、何を悩んでいるのか女が聞きだそうとすると、男は抵抗する。批判されていると感じるし、自分は無能で、彼女のほうが良い解決策を持っていると思うからだ。だが女の言い分は違う。アドバイスすることで彼の気持ちを楽にしてあげたいし、相手と信頼関係を築きたいだけで、男のことを弱虫だとはちっとも思っていない。
『話を聞かない男、地図が読めない女』 p156 アラン・ピーズ バーバラ・ピーズ著 藤井留美主婦の友社

文庫版 話を聞かない男、地図が読めない女

文庫版 話を聞かない男、地図が読めない女

このブログで何度も取り上げている本です。
女性から見れば恐らくカタルシスが得られるような展開でしょうし、
何より漫画的にみれば「どうやって解決するか?」を思案する際に、
ひたすらモノローグを続けられるよりも、コミュニケーションを通じて解決策を出していく方が、
キャラの役割も発揮できますし、何より絵的に描きやすくなります。
意外性があるシーンという訳でもないですが、
共感を喚び起こす描写というのは、大勢が体験した事でもあるので、必然的にベタになります。


これと対照的なのが、サンデーSで連載、クラサンでも公開されている『名無しは一体誰でしょう?』で、
『名無しは一体誰でしょう?』 サンデーS 2012年12月号 p547 原作:山田鐘人 作画:岡崎河童

ひたすら主人公の脳内を垂れ流す展開。ヒロインは横に居るだけに成り下がってます。

ロジック自体は『女子高生刑事 白石ひなた』に劣ってる訳ではないんですが、
ノローグ多すぎてご都合主義感が付き纏ってる印象。
もうちょっと演出で何とかならんもんでしょうか。

その時の記事でもこのように書きましたが、
多角的な視点に欠けるので、ご都合主義的な印象が増すという、さらなるデメリット付き。
絵的に突っ込みどころがいくつかある上でこれですからねぇ...
この辺りは男性が原作を書いて、作画が別の人だという問題点が顕著になってるんじゃないかと。


何にせよ、やはり『あやしや』は日常回の方が人気出るだろうなぁと実感する回でした。
最近はバトル回も面白いんですけどね。


◎ LES MISERABLES
ネームが1話分くらいだという事もあるんでしょうが、106pもあるとは思えないくらいにスラスラ読めます。
絵の迫力を出そうと考えると、このくらいのページ数が必要だという事なんでしょうなぁ。
編集部もかなり融通を利かせてるみたいですし、
こういう事をやりたいと思えば、週刊誌ではページの縛りが多くて無理でしょう。
てか、ページ数自体が週刊ペース超えてるのですがw


いやもう素晴らしいの一言に尽きます。
『LES MISERABLES』 ゲッサン2013年12月号 p234-235 原作:ヴィクトル・ユーゴー 漫画:新井隆広

泊めてもらった家から食器をちょろまかすだけの話なのに、この圧倒的な迫力。


ハレルヤオーバードライブ
後日談的な回ってのはどうしても面白さが落ち気味になるんですが、
そういう意味ではラブコメは構造的に強いですなぁ。
あと、割とコロコロ絵柄が変わる高田先生ですが、
個人的にはここ最近の絵柄が一番好み。


で、もひとつ個人的な印象ですが、今回一番気に入ったのがこのシーン。
ハレルヤオーバードライブ!』 ゲッサン2013年12月号 p307 高田康太郎

浅緋のリリィ脱退を防ぐためにハルの加入を賭けて対バンした訳ですが、
賭けに負けても結果的には浅緋のモチベーションが上がって目的は達成。
賭けがミスリードになっている、よく出来たシナリオだと思います。


前回のテーマが「未熟さすら武器になる」でしたが、技術が未熟だと、
かえってやる気パルス的なものが伝わり易くなる場合がままあるのではないかと。
新人の読切でも似たような事が言えますし。
もちろん、技術が高く情熱も伝われば完璧なのですが。
まぁ文章力が低くてやる気パルスもほとんど伝わらないこのブログで何書いても説得力が(ry


アオイホノオ
さすがに解説だけでは面白みはいつもより落ちたかなぁな印象。
キャプチャ並べて手抜きだと批判する人もいるでしょうが、
個人的にはあまり気になりませんでした。
アオイホノオゲッサン2013年12月号 p351 島本和彦

作品を書いてない私にとっても、こういう事はままありますw
シーンというより、テーマの方が多いですが。


○ 終末風紀委員会
悪くはないんですが、今のところ構造的には以前『ポップコーンアバター』の記事で書いたのと
似たような問題を抱えてるように思います。
『ぽぷこん』とは違って必殺技はしっかりしてますが、
バトルでの駆け引きが殆どなく、敵キャラも使い捨てです。
設定面を説明し終わる前に、まずは味方のキャラ紹介を優先した結果だと考えられなくもないので、
ある程度の留意は必要でしょうけども。
その辺りが整理し終わる2巻以降にならないと、ちょっと評価はし辛いです。
もちろん、イキナリ設定をズラズラ並べるよりは遥かにマシですし、
連載前に危惧していた「いかにシンプルにするか?」といった辺りは完璧にクリアしています。


◎ VANILLA FICTION
『VANILLA FICTION』 ゲッサン2013年12月号 p351 大須賀めぐみ

コメントするのが難しい漫画ですが、これはいいシーンでした。
...うむ、やっぱりコメントするのが難しいw


◎ ちろり
テンポ回に外れなし。
きちんと時代背景を描きながらってのがまたいいです。


放課後さいころ倶楽部
長くなるとしか思えないので後日別記事で。


◎ 鉄楽レトラ
この漫画も相変わらずコメントするのが難しい...w
まぁ新キャラは「何が正しいか」を示す為には必要なキャラですわな。
新約聖書の時代から、何が正しいかを示すには何かを否定するのが手っ取り早いですし。


◎ アサギロ


月曜日は2限から
分からん。特に22限目。


くちびるに歌を
「女の子の為に頑張るのがサンデーの漫画」 by ITTK
こっからが勝負なんでしょうか?
正直、ヒキ以外はパッとしない印象でした。


ぼくらのカプトン
1話目はまーまー、2話目は正直微妙、3話目は肉でもなく魚でもなく。


あおにの空に竜は哭く
店じまいモード。結局何がやりたいのかよく分からない作品に...


○ 切り裂きウォルター
こちらも店じまいモードで設定大放出。なのでちょいと説明過多に。
まぁキャラの魅力が乏しかったので (特に見栄え) 仕方がないのかもしれません。
とは言えキャラの作画は少しづつですが良化してますし、意外性の出し方は相変わらず。
作画もそうですが、キャラの魅力をどう引き出すか?というのを次回作の課題にすれば、
今回の連載は決して無駄ではなかったと言える日が来ると思います。


信長協奏曲
重要人物、いわゆる森蘭丸が登場。
史実では信長の側近中の側近 (と言うかむしろ側室と言った方 (ry ) ですが、
その蘭丸にサブローの秘密を知らせるってのはなるほど考えられてるなぁと。
こういう所がこの漫画の魅力の一つなんですよね。
でもってこの頃の氏真を登場させるってのも通な感じを受けます。


◎ ツール・ド・本屋さん
まずは横山先生、増刷おめでとうございます!

しかも「売り上げ絶好調作品」のマーク付きですよ。
部数の増減や増刷等は営業部が決めてると思われるので、編集部の意向とは無関係で、
書店から実際に注文とか来てるのでしょう。

非常に面白かったです。
横山先生はこの路線でいくべきなのかもしれませんね。
ゲッサン201109

面白くはあるんですが、駆け足杉。
最低でも倍、できれば3倍くらいのページ数は欲しいです。正直言って勿体無いです。
ゲッサン201110

と、1・2話の段階からポテンシャルの高さに注目し、
『ツール・ド・本屋さん』を結構な頻度でアンケートに入れ続けていただけに、
個人的にも感無量。
何だかんだ言って、程度の差こそあれ、質の高いものは認められる世の中だと思うですよ。


『ツール・ド・本屋さん』 ゲッサン2013年5月号 p734 (2巻 p66) 横山裕二

編集長にこんな事言われてましたが、これで見返すことが出来ますね!!1


...って、アレ? どうして2巻だけ増刷なんだろう?
ひょっとして、漫画が面白いから増刷掛かったんではなく、
単に『水曜どうでしょう』の出演者が出てるから売れたんでは...
もしくは、1巻が売れなかったので2巻で部数絞ったらちょっと絞り過ぎただけだったとか。


ま、まぁそれはともかく。


やー相変わらず面白楽しいです。
このブログではさんざん「ロールプレイ」という言葉を (ry
『ツール・ド・本屋さん』ゲッサン2013年12月号 p816 横山裕二

当たり前と言えば当たり前なんですけど、ルポ漫画でも通用するセオリーなんですね。
編集長やワタナベさんのキャラの違いが明確に分かりますし、
M上さんは最後のオチへの伏線になってます。
さらにはその後の書店巡りでポジティブモードへの変換と、
ホント構成が良く出来てるなーと感心します。


で、一つ気になったのがこのシーン。
『ツール・ド・本屋さん』ゲッサン2013年12月号 p823 横山裕二

以前、『放課後さいころ倶楽部』の記事でこう書きました。

今はまだ蜘蛛の巣の縦糸を張る段階ですが、
キャラがある程度増えていけば、横糸を張って網にしていく段階へと入っていけると思います。
キャラとキャラとが点から線に、線から面に...
人と人との関係性を築きあげ、その延長上でコミュニティを築いてゆく...
ボードゲーム業界に必要なのはこの「結束型」から「橋渡し型」への転換ですが、
放課後さいころ倶楽部』でもその辺りを描ければ、より面白い作品になると思います。

この文章自体は割と綺麗なイメージで書けたかなと個人的には思ってたんですが、
絵になるとハイライト入れて水滴を表現し、キラキラした感じを出しても
蜘蛛の巣だと結構グロい感じになっちゃいますね。
て言うか、ネタが参考にされてるような気がするのは気のせいでしょうか? (被害者妄想)


アオイホノオゲッサン2013年12月号 p351 島本和彦

まぁ単純にこういう事なんでしょうけどw


絵的に表現するなら、温かいという意味も含めて手編みのセーター的な方が良かったのかも、
と一瞬思ったものの、それだと縦糸横糸の関係を上手く表現できないわなぁと。
何にせよ、この後のページはコミュニティの広がりを端的に描写した、いいシーンでした。