銀塩少年 #9



銀塩少年

銀塩少年 - shot09

後藤隼平
(C)Junpei Gotoh/Shogakukan 2009

一か月。やっとミライが帰ってくる。そしていよいよ、マタタキに運命の日が訪れようと…!?

posted with EmbedSunday on 2009-12-11

公開後「銀塩少年」でググッて飛んできた約30名の方々、記事の更新が遅れたことを軽くお詫びします。


今回は賛否両論だろうなーと思ったら案の定でした。
その箇所は後回しにして、まずは重箱の隅から。


銀塩少年』 #9 p28 後藤隼平

腰から上の辺りから落としただけでこんなに壊れるかなーというのが。
個人的にはあまり好きではないんですが、演出考えたらアリだとは思います。


銀塩少年』 #9 p33 後藤隼平

ただ、ここで上のコマと壊れ方が違うのが気に喰わないんですよね。整合性がないというか。
さすがにここに文句を付ける人ほとんどいないとは思いますけど。


逆に評価したいのはここ。
銀塩少年』 #9 p14 後藤隼平

例えば、置きピンは最初未来視の演出として出してましたが、ミライが出国する際に伏線として回収してました。
写真のテクニック的なものなら別に回収すべき伏線にはなりませんし、後々演出を絡めて伏線にし易いでしょう。
単なるトリビアとしても有効なので他にも何かしら出していいような気がします。

#7の記事でこう書きました。これはトリビアではなく、テクニック的な表現でもありませんが、写真マニアなら恐らくニヤリとするような描写。
カメラに関しては全く分からないのであくまで想像ですが。
恐らくミライのキャラクターをカメラの機種でたとえるとこのカメラという事なんでしょう。
こういう「知らなくても何ら問題ないけれど、知ってる人が見たらより楽しめる」演出は大事だと思います。
せっかく写真やカメラに関する漫画なんですしね。





で、問題の賛否両論になったシーン。
銀塩少年』 #9 p26-27 後藤隼平

個人的にはよくぞやってくれたという感じではあります。
#5の記事で、ミライがテニヌとフランス行く展開についてこう苦言を呈しました。

個人的な感想だけど、この展開は承服しかねるなぁw
はじめてのあく』#29 週刊少年サンデー2009年36号 p350 藤木俊

「愛は馴れアイ」!
こわしや我聞』果歩の名台詞ですが、この法則に反するんですよね。

承服しかねるのは、あくまでミライがテニヌとくっ付かずに帰ってきて、マタタキとくっ付く展開を予想してたのが前提。
なので、今回の展開は納得の一言。
ぶっちゃけて言えば、唇どころか膜も(以下自粛)
まぁこの漫画でそれを表現するのは間接的だとしてもNGでしょうが。

ハッキリと断言はできないんだけど、原作ではおそらくキャリーが皆本の初体験の相手かなあと。ただし、アニメではそんなヒマはなかったみたいね。その後キャロラインともしばらくは関係があったはずだから、そっちかもしれません・・・・まあどっちも体は同じか(笑)。
 もっと前、15〜6で向こうの女性と関係を持った可能性もあって、でも真面目な皆本が特に引きずってる様子がない。まわりは年上のおねえさんばっかりだし、事故に近いような短い関係だったのかもですね。しばらくつきあった後、なんとなくお互いなかったことに、みたいな・・・・リアルだ(笑)。
 ちなみにワタシの周りの女性によると、コメリカ時代に何もなかったというオプションはないそうです。「だってそんなのキモチ悪いから」 いやワタシも三十手前で薫が初体験とかいう皆本はキモチワルイので賛成ですけど、「ファンタジーとして童貞がいい!」という発想をする女性はいないっぽい。それは単に<女性と関わるスキルのないダメ人間>ということなのね。
アニメ第43話: 完成原稿速報・ブログ版

絶対可憐チルドレン』同様、『銀塩少年』を読んだも女性も同じ意見じゃないかなと思います。
そうでないと恐らく女性はリアリティを感じてくれないんじゃないかなと。


銀塩少年』 1巻 p134

それに、この漫画はバッドエンディングに向かいそうなのをいかに跳ね除けるかというのは基本線な訳で。
だから現像した写真を通して未来が見えるという能力が付与されているんですから。
故にミライとテニヌが付き合うことになるというのは必然でしょう。少なくともフランスに一緒に行くことになった時点で。
まぁ、最後までミライと付き合わないとなれば私も暴れますけどw



その点を考慮に入れても、問題は男性がこの展開をどう思うかです。
商業漫画である限り、いかに読者から支持されるかが最優先条項なわけで、『銀塩少年』は少年漫画ですから
最も気にしなければならないのは男性からの支持がどうなるか、です。
個人的は『神セカ』の記事でさんざん書いている、「現実へのリハビリ」という観点から見てもこのような展開はあるべきなんですが、
負荷をかけ過ぎたらリハビリにならないのと同様、鬱な展開もまた負荷の塩梅が重要になってきます。
最近の傾向として、ちょっとでも負荷を掛けるとダメージを受ける人が多いのが気がかりなんですよね。


本来の、そして狭義の「寝取られ(NTR)」とは彼女が別の人と性的関係を結ぶことですが、
最近では広義で好きな相手が別の人と付き合うことも含まれます。たとえ性的関係が無くても。
NTRが好きで堪らないという人も中にはいますが、それ以上に嫌われることが多いです。
先日の『超弩級少女4946』(サンデー超連載)『GE〜グッドエンディング〜』(週刊少年マガジン連載)でもこの展開でしたが、
ここ最近で最も問題になったのはやはり『かんなぎ』でしょう。

かんなぎ 1 (REX COMICS)

かんなぎ 1 (REX COMICS)

ここではその経緯には触れません。代わりに本田透先生の『電波男』から引用したいと思います。
こちらでは『下級生2』の顛末について語られています。
NTRがなぜ嫌われるのか、そしてどのようにすれば読者から逃げられるのを最小限に留められるのかといった事まで書いてあるので、
付け加えることはあまりないんですが、一つだけ付け加えるとするなら
『SEX FRIEND』はタイトルの時点で好き嫌いが選別されてるので、『同級生2』と全く同列では語れないという事くらいでしょうか。
まー『銀塩少年』においては作者や編集者もこの辺りをある程度念頭には置いてるはずなので、杞憂だとは思うのですけれども。
電波男

電波男

 ただし、うっかり三次元の嫌なリアリズムを取り入れてしまったことで、エライ騒ぎになることもある。例えば二○○四年にエルフがリリースしたPCゲーム『下級生2』は、学園(たぶん高校)を舞台にした同級生・下級生・女教師との恋愛をテーマとした王道的な恋愛アドベンチャーゲームだったが、登場する女の子キャラの「非処女率」がやたら高いことがユーザーの間で話題となった。


 これは、『下級生2』が「女子高生の非処女率が高まっている」という三次元におけるリアリズムを取り入れた結果だと思われるが、ユーザーの多くは、
「三次元に処女がいないからこそ、二次元に処女のヒロインを求めているんじゃないか!」
 と憤ったのだ。特に、メインヒロインにして主人公の幼馴染という鉄板的王道キャラのたまきたんが、どこの誰とも知れないイケメン医学生に寝取られてしまい、処女を奪われたばかりかヤリまくられるという衝撃的な「ネトラレ」展開が一部ユーザーのひんしゅくを買った。


 萌えワールドでは、「姉萌え」や「母萌え」など、年上属性のキャラに対してはあまり処女性は求められないが、「妹」や「幼馴染」といった同年代・年下属性のキャラにおいては、処女性がひじょ〜うに重視される。『下級生2』のたまきのネトラレぷりは、そのような従来の萌えワールドの文法を壊すものだった。
 故に、2ちゃんねるのゲーム板を中心に、ネット上で「たまき非処女祭り」が開催されるという事態になった。ついには憤りのあまり『下級生2』のDVD−ROMを叩き割る勇者まで現れた!自分で購入したゲームを「中古の不良品(たまきが非処女だったから中古品!)」という理由で叩き割る漢の中の漢ッ! 大山倍達の自然石割り以来の衝撃だったYO!
 さらに、嘆き悲しむ大勢のユーザーが、ネット上で首を吊ってバーチャル自殺した!

 かくゆう俺も、プレイ前はたまきたんのビジュアルに萌え萌えだっただけに、たまきたんが馬鹿医大生と乳繰りあっているのを目撃してしまったときには、主人公に完全にシンクロして「くっ…なんか、すげー悔しい感じがするぜ。」と歯噛みしてしまった。
 なんか、この台詞だけ読むとあまり悔しそうに見えないかもしれないが、血の涙を流し、唇を噛み切って地団駄を踏んでましたYO! しかし、萌えが三次元の嫌なリアリズムを取り入れることによってより雄々しく(女々しく?)進化していく過程において、
「もはや、同級生の幼馴染といえども、処女ではない!」
 という三次元の法則を二次元に取り入れることもまた、必要なのである。ただし、その方法論を決して間違ってはいけない。


 同じく、同級生のヒロインがヤリマンに近い非処女という設定のゲームに『SEX FRIEND』(コードピンク)というそのまんまなタイトルの作品があるが、こちらは同じ設定でもファンに支持されまくった。というのは、ちゃんとヒロイン早瀬美奈ちゃんがどういう過去の経緯によって非処女になり、いろんな男とセックスを重ねてきたか、という背景が設定されており、美奈ちゃんの心理描写が丁寧に描かれているからだ。美奈ちゃんはある事情で性的なトラウマを抱えていて、恋愛することができなくなり、わざと男とセックスフレンド関係を結んでせつな的な快感に溺れているのだ。
 しかし、主人公の俺が頑張れば、美奈ちゃんの心を溶かして、身も心もラブラブになれる!
「美奈ちゃんの暗い過去もひっくるめて、全部が、好きだあああっ! 癒してあげたいっ愛してあげたいっ! 美奈は俺の奥さんッ!」
 と萌え狂った人も多かった。っていうか俺は死ぬほど萌えたね!


 つまり、実は非処女かどうかが問題なのではない。『下級生2』が失敗したのは、たまきのネトラレルートをどうやっても回避できない(いくら努力しても報われない)という設定、そして、相手の馬鹿医大生と対決するチャンスがない(いくら嫉妬しても復権の機会がない)ということ、そして、なによりも、たまきに「純真な愛情」が感じられない、ということにあった。ありていに言えば、三次元にいっぱいいそうな、むかつく女なのだ。
 なにしろ、どうゲームを進めてもたまきはDQNにネトラレる。そして、DQNはたまきとさんざんセックスしたあげく、飽きて捨てて去っていく。すると手ぶらになったたまきが主役のところにやってきて「テコキは嫌い?」などと言い出すのだ(まあ、よく考えれば、三次元だと「幼馴染がDQNにネトラレ、そのまま彼女は帰ってこなかった。終わり」というのが関の山なので、それを思えば、贅沢な怒りなのかも……)。
電波男』 p281-284 本田透三才ブックス