エンゼルバンク #87-88
いやー、今回凄かったなぁw
内容に入る前に、農業問題を知るための参考文献を2冊紹介。
- 作者: 田代洋一
- 出版社/メーカー: 大月書店
- 発売日: 2003/02/01
- メディア: 単行本
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農業問題の入門書としては傑作。農業を語るならまずこの本を読んでから。
私は「なぜ日本では水稲栽培がメインなのか?」という、基本的な事も知りませんでしたがこの本を読んで納得。
- 作者: 神門善久
- 出版社/メーカー: NTT出版
- 発売日: 2006/06/24
- メディア: 単行本
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懐疑的思考から紡ぎだされる批判は素晴らしいの一言。特に2章を割いている農地問題は白眉。
どれだけ農地問題が深刻かというと、この本ではなく「たかじんのそこまで言って委員会」2009年4月5日放送に出演した際に述べられた話だが
畑が野球場に転用されてるにも関わらず畑のままで登録されてるという実態さえあることだ。
生産者寄りだったり経団連寄りだったりしないのもいい。唯一不満があるとすれば扱ってるのが国内問題だけだという点か。
で、中身ですが。まずは犯罪率。
『エンゼルバンク』 #87 モーニング2009年38号 p388 三田紀房
「ただ外国人の犯罪が急増してるってマスコミでよく聞くから…治安が悪くなるのはやっぱり不安ですから……」
この答えが
『エンゼルバンク』 #88 モーニング2009年39号 p300
「犯罪の全体数と比較すれば外国人による犯罪数はそんなに多くはない 日本にいる外国人の割合を考えると妥当と言える割合に過ぎない」
さらに
『エンゼルバンク』 #88 p300
「これらのことはネットで検索して犯罪白書で調べたらすぐに確認できる
しかしテレビのコメンテーターはそのような検証を一切せずに自分の印象だけをもとにコメントをする」
えーと...
それはギャグで言ってるのか?(AA略)
実のところ、概ね合ってます。
凶悪犯罪が激減してるのは確かで、未成年の犯罪も減少の一途なのも確か。
詳しくはこの本参照。
- 作者: パオロマッツァリーノ,Paolo Mazzarino
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2007/07/01
- メディア: 文庫
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ネットで検索すりゃすぐ分かるのもその通り。
ただね、「日本にいる外国人の割合を考えると妥当と言える割合に過ぎない」これは違うだろw
これこそ自分の印象だけをもとにコメントしてるんじゃないの?
とてもじゃないけど#76でA,K,4,5のカードをめくって云々の話をして、確証バイアスの罠に嵌らないようにと警告した作家だとは思えません。
犯罪の全体数と比較して、外国人の犯罪数が少ないのは、それだけ日本に外国人が少ないからに他ならない。
不法入国してる外国人の総数が把握できない以上、来日外国人(定住していない外国人)の方が犯罪率が高いという証明は難しい。
在日外国人に関する犯罪データも公表されていないので推測するしかない。
ただ、wikiにあるように概ね外国人の方が日本人よりも犯罪率がかなり高いというのがコンセンサスになっている。
詳しくはwiki「外国人犯罪」の項を参照。
wikiがソースとして確実か?という疑問は正当性を持つが、少なくとも外国人犯罪が妥当な割合と思える数字は見たことがない。
日本人に比べて3倍とか4倍が妥当と言われると「ああそうですか(苦笑)」と言わざるを得ないが。
念の為書いておきますが、#87には以下の本を参考文献として挙げています。
- 作者: 海老原嗣生
- 出版社/メーカー: プレジデント社
- 発売日: 2009/05/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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この本には「未成年による凶悪犯罪が増えている」のは間違いとは書いてありますが、
単純に「凶悪犯罪が増えている」が間違いとは書かれていませんし(これ自体は正しい)
「外国人の犯罪率がそんなに高くないから外国人受け入れても全然OK」のような記述はないので誤解しないように。
年間110万人の出生数を前提にして、出産率を上げることを考慮に入れずに移民が20万人必要だという論理や、
もう一つの暴論(雇用条件の見直し)もちょっとアレだったり、問題ある箇所がいくつか見受けられますが、
基本的に『エンゼルバンク』の海老沢のモデルになった人が書いた本だとは思えないほどマトモです。
「卒業後3年後の離職率のデータは、30年前も今も約3割」というデータは(28.4%と35.9%を同一に扱うのは少々問題あるとは言え)
『エンゼルバンク』で「日本人の若い奴らはやっぱり…だめなんです」といった論調とは全く違っていますし、
「若者はかわいそう」論はおかしいと勝間和代を批判しているのも見逃せません。
個人的には雇用と結婚率の関係を出して欲しかったけど、それに関する常識がある訳じゃないですしねぇ。
で、農業ですが...これもちょっとなぁ(苦笑)
『エンゼルバンク』#88 p305
上に「検査はゆるい」って書いてるのに、「国産も検査してると思ってた…」って...
タマネギ部隊のできそこないみたいな頭してる女、人の話を聴けw
日本は単位面積辺りの農薬投入量で見れば世界でも屈指の多さですが、残留農薬が多いというのは聞いたことないなぁ。
検査がゆるいかどうかは知りませんがね。
国内産が安全だというのは神話という点、日本人は食に対して過敏になりすぎているというのは同意。
ただねぇ、BSEと交通事故を同列に扱うのはちょっとw
まず、交通事故に遭わないようにするのは難しいけど、外国産の牛を食べないという選択は容易だという点。
次に、BESは科学で証明しきれていない不確実性(Uncertainty)の問題だが、交通事故は危険性(Risk)の問題だという違いを無視している。
「蒟蒻畑」の騒動が馬鹿馬鹿しいと思われてるのは、モチで咽を詰まらせるのと同じリスクの問題なのに
新しい食物だからと言って不確実性であるかのような対応をしてるからだ。
無農薬じゃないとダメというのが誤信というのはあながち間違ってないし、「見た目綺麗な方がいい」といった消費者のエゴが農業を歪めてるのも確か。
この辺りは参考文献にあげた『日本の食と農』序章を参考されたし。
ただ、むしろ慣行栽培でないとダメ、無農薬、減農薬は難しいというのも誤信だと思うけどなぁ。
依然コストなど解決すべき問題はたくさんあるけど、着々と減農薬や無農薬の技術は発達してるように思えるのだが?
日本の農業にとって最大にして最強の敵が何かは分かりませんが、
以前の記事で
結局のところ「いかに農協を通さないで売るか」という話になるんだけど、そういう内容書けるんですかね?
と書いた手前、JA批判を展開するならばその段階で一応の評価はします。
ただ、たぶん農業への株式会社参入を阻む存在とか、規制緩和論者に尻尾振るだけのお話で終わりそうな気はします。
余談:
前回の記事でも触れましたが、農業技術では地下かんがい法が中々面白いので、興味がある方はそちらもどうぞ。