ハレルヤ オーバードライブ! #12

毎回似たようなこと書いてる気がしますが、今回もそんな感じです。


いやー素晴らしい。(前回、前々回と同じ導入。次回も同じ。)


以前ハヤテ考察でキャラを描写する為に必要な要素として
ロールプレイ」「カップリング」「ミスディレクション」の3つを挙げましたが、
いつもの事ながらその点はしっかり押さえられていますね。


タンポポと麗のカップリングに関しては#13がメインですが、
愛葉と小雨のカップリングで久々に愛葉の2面性をだしつつお色気も。まぁこの辺りまでは普通です。


今回素晴らしいのはハルさんの描写ですね。
「ロールプレイ」は結局のところ絵だけでは記号になりがちなキャラクターを、立場の違うキャラと絡ませ複眼的に表現することによって、
キャラの多面性を引き出し、これによってオリジナリティを出していくのが目的です。
若木先生の言う「記号からキャラへ」の一つの手段ですね。
今回は同じ相手(ハルと小雨)でも、状況の違いで多面性を引き出そうとしています。


具体的にいきましょう。
『ハレルヤ オーバードライブ!』 ゲッサン2010年6月号 p331 高田康太郎

ハルさんがお姉さん面してる場面です。
下に画像貼りますが、膝枕してるシーンもやはりお姉さん面してるシーンでしょう。


この時に各キャラがどう見てるのかを示してるのがまた素晴らしい。
麗の「しきりたい…」はどういうキャラかの描写ですし、
タンポポが「めんどくせー」と言ってるにも関わらず、すぐ後に麗を引きずりながら「ベースを一から叩き込んでやる」とやる気なのも
キャラの良さが出てるように思えます。
鷹木さんは客観的に見つつ、愛葉は普通のノリ。
そして小雨が「ハルさんがめずらしくテキパキしてる……」冬夜が「はじめて見た…」と、ハルとの付き合いの差による印象の微妙な違いを出してます。
ハルに惚れてる二人がハルの態度を見てるってのもミソです。
まぁここまで考えて高田先生がこういうセリフ書いてるのかは分かりませんけれどもw


『ハレルヤ オーバードライブ!』 p341

そして子供っぽいハルさんの描写。
正直『ハヤテ』のナギにえらいそっくりなんですけどもw 絵も態度も。
何にせよ、普段とのギャップを出してるのはいいですね。


『ハレルヤ オーバードライブ!』 p343

先輩ぶる理由が「小雨バンドができたから」。
小雨のバンドが出来たことを喜んでる取れますし、冬夜の「はじめて見た…」にも掛かってます。


『ハレルヤ オーバードライブ!』 p345

そして、いかにハルさんのキャラを豊かに表現しようかというのを今回のテーマに据えた、という作者の意図が直接的に読み取れる場面。
作者の意図はともかく、普段のハルさんがどういうキャラなのかを説明してる丁寧なモノローグだと思います。
キャラの多面性を出す際には、こういう表現を入れないとメインの性格がどれなのかがブレがちになるんですね。
以上、今回のハルさんの描写に関して。


今回は他にも語りたいことがあります。次はギャグについて。
以前、高田先生がこういうつぶやきをしてました。

Richard D. James Albumをネタで使いたいんだけど分かりにくいですよね。どうしよう。

それがこのシーン。
『ハレルヤ オーバードライブ!』 p358

音楽知ってる人間にとってはかなりメジャーなネタなんですが、私は知りませんでした。
でも大丈夫。知らなくてもググって元ネタがどんなのか見れば十分笑えます。
『キングクリムゾンの宮殿』も同様なので、調べてない人はぜひググって欲しいところ。
以前から「音楽ネタをどう漫画に織り込むか」について考えていたようですが、一つの解決方法じゃないでしょうか。
まぁ同じパターンは使いにくいでしょうけども。


最後に、やはりこのセリフでしょう。
『ハレルヤ オーバードライブ!』 p349

いやー素晴らしい。
思わず高田先生に

#12非常に良かったです。「音楽は記憶をとじこめることができる」が最高。個人的には写真も一緒だなーとか思いました。

とつぶやきました。
念頭に『銀塩少年』の最初のページを置きつつ客観的な表現にした発言だったんですが、そのリプライに驚きました。

ありがとうございます!銀塩とハレルヤは表と裏ですよw本当はもっと先に出てくる予定の台詞でした。

いやー素晴らしい。
こう考えると、『銀塩』も『ハレルヤ』もいかに思い出を写真や音楽に絡めて、印象に残るシーンを紡いでいくかという漫画なのかもしれません。
キャラの描写には関係の履歴が重要なので、そういう意味でも漫画として成功する要素がここにあると感じます。


ちなみに『銀塩』のシーンはこちら。
銀塩少年』#1 p1 後藤隼平

一瞬と永遠は同じものだ。うつりゆく一瞬に永遠の輝きがひそんでいる。