FLAG.60

いやー、面白い。
前回、もう少し小ネタ入れてもいいんじゃね?と述べましたが、今回大ネタ入れてきました。
神のみぞ知るセカイ』FLAG.60 週刊少年サンデー2009年33号 若木民喜

これは卑怯だろw MAEDAXの「ファー」並みに。
さすがにこの展開は読めなかったわ。
ページ開いた位置に意表を突きたいコマを配置するというのは古典的かつ外せない手法ですが、
「さあ…さらけ出せ… お前の心の「一番」を!!」というセリフの後、1pも使って溜めを作ってるからこそ笑いが増幅されてると思いますね。

神のみぞ知るセカイ』FLAG.60

この表情もいいなぁw
展開遅くしてるから、こういう大ゴマ使う余地があるんでしょうかね。
バクマン。」でもこのくらいやりゃいいのになぁ...
お面が何を表してるかよく分かりませんが、上から無表情→驚きの顔 に変化していってるんなら上手いなぁと思います。
だとしたら補足入れてもいいかなぁとも思いますけどね。何かこういうコメントをされて作者が否定的だった記事見たような記憶がありますが。
その後の叫びが「ロードだー」ってのもワロス。魂篭ってます。
私ならリセットかなぁ。
神のみぞ知るセカイ』FLAG.60

血涙。これ色々やばい気がするなぁw
鍵っ子の人の反感買わないかどうかちょっと心配ではあります。
まーこの文脈だと「キャラに対する愛情」になるから許容範囲なのかな。
神のみぞ知るセカイ』FLAG.60

このシーンは取り上げない訳にはいかないでしょう。
FLAG58の「その頭のケガ……また地震ですか?」同様、TOYOTAの2番目のO「お兄ちゃん(弟)以上恋人未満での長期の関係」に掛かります。
BMWの「そしてMEMORY二人の思い出」の方が近いかもしれませんが、何にせよ絆の描写をさらっと一コマで綺麗に入れてます。
ぐっと来ますね。
この後、LCが天理の表情の変化に気づいてる描写をしている辺りも上手いなぁと感心。
神のみぞ知るセカイ』4巻 p8

4巻のレビューの時にも書きましたが、微妙な表情の変化を読み取る辺りは女性らしいですね。
こういうのは桂馬でなくLCにやらせるべきだと思うんですよね。5巻レビューでもこれについては触れるつもりです。


神のみぞ知るセカイ』FLAG.60


ここからが本題。
このやりとり、何気に重要です。
駆け魂を出す際、悪魔は基本的にバディのお手伝いだけって設定は、恐らく以前に3回出ています。
神のみぞ知るセカイ』 1巻 p31-32

「そこで人間の協力者(バディー)の出番です」
神のみぞ知るセカイ』 1巻 p39

「内側を変えられるのは神様にしか出来ません。」 上の「そこで人間の協力者(バディー)の出番です」とで1セットですね。
どうでもいいですが、この時のLC、おでこ広いなぁw
神のみぞ知るセカイ』 FLAG.49 週刊少年サンデー2009年第22号 p144

駆け魂は協力者(バディー)に任せるのが決まりだもん…」


この辺りは「神セカ」のコンセプトについて書いたThe Structure of "The World God Only Knows" #1の続編で触れようと思ってたんですが、
この漫画、結構な数の疑問点や矛盾点があります。
例えばバディは駆け魂を出すのが仕事ですが、契約の中身がまだ曖昧のままになってます。
他人に仕事させるにはアメとムチが必要なのはこの世の常。あの世でも恐らく同じでしょう。
無論契約内容によりますが、桂馬は今のところは優秀な成績を修めてるので、暫くサボタージュしても構わない可能性もあります。
一番の疑問は「バディーが死んだら悪魔も死ぬ」という設定。
300年以上も生きられる悪魔が、せいぜい寿命が80年そこそこの人間とバディーを組んで、自分の寿命を縮める意味が分かりません。


神のみぞ知るセカイ』 1巻 p28

また、首が飛ぶのは「契約を達成できなかった」「許可なく破棄した」となっているので、駆け魂を出すのに奔走するより
いかに契約を破棄してもらうかに腐心した方が最善である可能性もあります。
悪魔は優秀な成績を修めれば階級が上がったり表彰されたりするようですが、
今のところバディーにはアメが与えられるという表現はされていませんし。


こういった謎や矛盾を解消するのに有効なのが、「新しい設定」もしくは「設定の上書き」。
LCは駆け魂隊マニュアルさえ読んでないというのはハクア登場回で表現されているので、
LCの語った規則が絡んで矛盾が生じた場合に「設定の上書き」は特に有効です。
神のみぞ知るセカイ』 3巻 p96

あまりにもご都合主義だと読者に敬遠されるので、注意深く導入する必要はありますが。
ノーラの「原則禁止」も、矛盾を解決するための「設定の上書き」です。
神のみぞ知るセカイ』 3巻 p161

ハクア初登場シリーズは、ハクアがバディーがいない状態で駆け魂をスキマから追い出したものの、逃げられるという話でした。


極論すれば、設定というのは法律などの規制と同じです。変更があるとすれば規制強化か規制緩和の2通りだけです。
例外条項や、ノーラが話した「原則」という設定の上書きはもちろん規制緩和に入りますし、これらの削除は規制強化になります。
この漫画、設定に関しては実によく考えられていると思いますし、前作の反省もあって設定を小出しにしているので想像の幅が広くなってます。
これまでの疑問点や一見矛盾する点を探して、どう設定が追加されていくか考えるのもこの漫画の一つの楽しみ方かもしれません。


神のみぞ知るセカイ』 FLAG.60


HonyeDippedを読んでる人なら「おっ!」と思った人もいるかもしれません。

Q:駆け魂は男性には入らないんですか・・?
A:この質問については1巻の3話に既に答えが出ているのですが・・・今このことが敢えて気になる気持ちも、何となくわかります。もしかしたら、間違えて入ることもあるかも知れませんよ!いいや、きっと入る!後は、皆さんの想像力にお任せします!
::HoneyDipped:: 5/11:質問に答えます〜。 若木民喜

今のところ、駆け魂は隠れた女の子供として転生するという設定になってます。(1巻p106参照)
男性に駆け魂が入ってそれを出そうとするのを漫画にされてもBL好きなら狂喜乱舞するでしょうが、フツーの人からはブーイングの嵐でしょうから、
こういった設定を設けて女性に限定するのは当然です。


しかし、ノーラが言ってるように、桂馬に駆け魂が入っていても不思議ではありません。
神のみぞ知るセカイ』 3巻 p22

「スキマに関連した行動が極端に出る」という効果は、正に桂馬そのもの。
前作『聖結晶アルバトロス』で主人公のユウキは特殊な能力を持っていましたので、
桂馬が駆け魂が男性に入って、かつセンサーに引っかからない「例外条項」だという設定もありえます。


このコマは伏線にもなるので、もしそういう設定を導入した場合にはご都合主義な印象が消えますし、
さらっと書いてるので後で「あれが伏線だったのか!」と意表を突けます。
設定を導入しなくても単にノーラが半分ネタで喋ってることなので、回収されるべき伏線という訳でもありません。
「こいつこそ心のスキマがあるんじゃない? でっかいのが…」は、ノーリスクハイリターンなセリフだと言えるでしょう。


...まぁ、ここまで考えて描いてるかどうかは知りませんがねw


神のみぞ知るセカイ』 FLAG.60

悪魔と共生関係にあるみたいですなぁ。
もうさんがFLAG56感想で

実は天理は駆け魂の存在を自覚していて、ある程度駆け魂を受け入れてるんじゃないかとか…。

と書いてましたが正にそのとおり。私は一ひねりあると賭けて見事に外しましたなw
ここでも、設定の上書きがされそうです。
今のところ、地獄は「新悪魔」から見た歴史でしか語られてません。
神のみぞ知るセカイ』 3巻 p131-132

リアルの世界でも、例えば日帝36年の歴史が日本側と北朝鮮、韓国側から見たのとは違うのと同様、
次回「新悪魔」側からみた真実の歴史とは違う「旧悪魔」側からみた真実の歴史が語られるかもしれません。
新悪魔の革命、10年前の駆け魂大脱走、LCの姉...ひょっとしたら桂馬の父親も何らかの関わりがあるかもしれません。
『アルバトロス』でも、今闘ってる敵は実は味方だったり、全く描かれていなかった父親が実は重要なキャラだったりしました。(どういった設定だったかは忘れましたが)


こちらの設定変更は「男にも駆け魂」やノーラの「原則禁止」設定などとは違い、今までにない重要な設定の上書きである可能性が高いと思います。
「原則禁止」はノーラ以外の悪魔は今まで通りに行動するでしょうが、
こちらの設定の上書きは漫画の舞台設定全体を塗り替える、言わばパラダイムシフトです。
今まで駆け魂は単に捕らえられるだけの存在でしたが、『アルバトロス』のように駆け魂の中でも派閥のようなものがあり、
新悪魔や人間に対して好意的な立場の魂があったり、逆に旧悪魔に好意的な新悪魔(LC姉とか)がいる可能性もあります。
『アルバトロス』同様の、導入はあえて勧善懲悪ストーリーにしておいて、話が進むにつれ違ってくるといったパラダイムシフトも起こりえます。


何にせよ、次回は要注目かも。大した変更がなかったらごめんなさい。