神のみぞ知るセカイ 4巻

神のみぞ知るセカイ 4 (少年サンデーコミックス)

神のみぞ知るセカイ 4 (少年サンデーコミックス)

改めて読み直してみたが、面白いという言葉以外選びようがない。


#27 インターバル回(ハクア)
前回、前々回も書きましたが、主要キャラの役割の演じさせ方がいいです。

特にこのコマがいい味出してます。
女性特有の観察眼をLCも持っていることを印象付けつつ、いつものハクアの対応とは違うことの説得力を持たせ、
最後のページでLCがヤキモチを焼く前フリになってます。
始末書をビジュアル的にしてるのも漫画的に良い表現方法ですし、情報を一つ、桂馬の異能力っぷりを一つさりげに出してるのも素晴らしい。
ギャグにまで落とし込んでますし。
ハクアがずっと笑顔ですが、その中でも微妙に表情を変えてるのも良いですね。ハンコ絵の限界に挑んでる...訳でもないかもしれないが。


#33〜#35 インターバル回(LC、桂馬母、世界設定)
個人的にはインターバル回の方が好きなんですが、プロット的なこともあり逆に書くことがあまりないという。
この3回は全部真ん中に☆なんですが、何か意味あるのかしら。


#33はLCメインのギャルゲーオルグ回。

見落とされがちですが、この台詞は非常に重要です。
この漫画の目的のうちの一つに、ギャルゲーに対する理解を育むというのがあるような気がしてならないのです。
いずれ詳しく書くかもしれません。
その他に注目なのは「属性のワナ」「ハンコ絵」をネタとして書くくらいに自覚的なことですね。


#34は桂馬母メイン回。
#2で描かれた「妹の品質示すエンブレムBMW。」の母親版ですかね。
「家族ならではの質量揃った思い出!! これぞ兄妹の代えがたい絆!!」
現実の母親像が雪枝さんなら、桂馬母は理想の母親像なんでしょうかねぇ。


#35は世界設定。
一般的には評価低いようですが、○ンダムのパロディ含め、大好きです。
もちろんギャルゲーに対する応援という面もありますが、この漫画がギャルゲーを扱った漫画という意味でメタフィクション的なところがあるため、
この漫画自体の逃げ道を塞ぐという面もあります。


#36 長瀬編イントロ
5巻が出たときに、纏めて書くかもしれません。保障はしません。


#28〜#32
普通少女ちひろ攻略編。個性がないのもまた個性。
タイトルに雨がどこかしらに入ってますね。そういうシーンも多いです。


アイドルの世界では、「普通っぽさ」が売りの時代もありました。
ギャルゲーの世界ではどうか知りませんが、恐らく「妹」や「幼馴染」属性とのセットで使われてた、のかな。
同級生の鳴沢唯なんてそういうパターンじゃなかったっけか。ゲーム自体はやったがタイプじゃないのであまり記憶がない。


いずれこの漫画のコンセプトについては詳しく書いてみたいが、簡単に書くなら
ギャルゲーマーが現実の女性にカウンセリングするのを通じて、現実復帰へのリハビリをする漫画。」でしょうか。
まぁあくまで漫画内での現実なんで、仮想現実と言えますが。(そういう意味でもリハビリには最適)
このコンセプトからしても、現実を代表するような「普通のキャラ」を攻略対象として据える意義は大きい。
ただまぁ、ちひろ編でさんざんゲームと現実との対比が描かれている割には、この意義が作品を通して伝わったかと言えば微妙と言わざるを得ないが。
いつも通りと言えばいつも通りだからなw


「普通のキャラ」を出す意義はもう一つあって、これはカウンセリングに掛かるのですが、個性が無いことが悩みな人からの共感が得られるということ。
何故攻略キャラが読者の共感を得るような悩みである必要があるかは、コンセプトについて書くときにでも。


で、プロット上の問題としては、個性のないキャラをどう攻略していくか。

突出した個性で構成されてるゲームにおいて、こういうタイプの娘は中心に来ないんだ!!
(中略)
せめてもう少し情報がないと、ルートがわからん!! ないのか!! 実家が忍者とか−−!!

パターンの一つは、とにかく出会いの数を増やして、悪印象も好印象に変換可能な事を利用する。
まぁ全キャラでベースになってるとも言えます。


もう一つの方法は、

ファンタジーの世界では先生を落とすためのキラー展開として、「先生に恋人がいる→フラれるところに出くわす」という聖職属性無効化波動砲イベントがあるんですが・・・これは作者的には死んでもやりとうない!
::HoneyDipped:: 2/24

聖職者でさえ有効なこの方法、無論普通な人でも可能です。
何故作者的には死んでもやりとうないのかは分かりませんが、リハビリをするにしては負荷が高すぎるからと解釈します。
これでフラれるのがなければさらに負荷が掛かります。いわゆる寝取り/寝取られって奴ですね。
以前にもこの箇所引用して説明しましたが、このような負荷の掛けすぎで問題になったのが「かんなぎ」の休載と言えるでしょう。
ちひろ編ではこの聖なんとか砲を使いました。恋人がいるではなく、好きな人がいる、の違いはありますが。
但しそのままやっちゃうと、死んでもやりとうない、な展開なので、かなり工夫が凝らされています。


負荷の高い箇所は、桂馬に文句を代弁させることで緩和します。
「こんなゲーム作ったら…… 作った会社、燃えるぞ!!」
「すぐに忘れたり!!乗り換えたり!! そんなの恋じゃない!!」
好きな人がいる、という内容には、実際にその人がそんなに好きな訳ではないということに。
この表現は#32の「光ってる人に憧れちゃうのさ。憧れている間は、私も一緒に光ってる気がして…」にも掛かります。
そして「今まで告白に成功したことがない」ことを示し、さらに葛藤を薄めます。
かんなぎ」休載のときのスレの言葉を借りると、「中古じゃない」。 しかしコレ酷い言い方だなぁw
ここまでが地ならし。


ここまでやってもまだ(読者に)わだかまりが残ってる可能性があります。さらに工夫を凝らします。
ユータくん攻略の手伝いをするという形にして、攻略対象をちひろに向けないまま出会いを増やし、その過程で桂馬の真剣さに打たれて「本当の」恋が生まれる。

個人的にはこの表情が気に入ってます。


好きな人がいるというネックを軽い女ということで打ち消すも、今度はその軽さがネックになる。
その軽さを打ち消せば問題はクリアになる。
ユータくん攻略を無かったことにすればちひろ攻略へのルートが開ける、と。
後は個性が無いことのカウンセリングでエンディングとなる訳です。

以前攻略した歩美を登場させてるのもいいですね。
あえて恥を晒しますが、以前攻略したキャラも使うべきでは?ということを書きました。長瀬編始まる辺りで。
どんだけ俺は鳥頭なんだろうな(苦笑)
この漫画基本的に攻略キャラは使い捨てなんですが、攻略キャラに付いたファンをオミットしてしまうのが勿体ないと思いますね。
長瀬編でも歩美、ちひろを使ってましたが、同級生かつそれほど個性が強いキャラじゃないので比較的使いやすいんでしょうか。
できることなら他のキャラも使って欲しい所ですが、それが目的になって無理な展開になるのも避けて欲しいし...
やっぱり2周目しかないのかなぁとも思いますが、
「お前の扱った対象者は誰もスキマが再生してないし、安定してる。」という#47のハクアのセリフと矛盾するしなぁ。