ゲッサンmini プラス4 (ゲッサン201505別冊付録)
ゲッサンmini プラス4 (ゲッサン201505別冊付録) p1
泉尾アキ先生の表紙でした。色使いは結構綺麗ですね。
ツッコミどころとしてはちりとりの持ち方と花びらの軌道、残り方。
例えば、遠心力を考えれば外側に花びらが残るってのはねぇ...
ただ、こういうボロが出るって事は新しい事にチャレンジしてるという事なので、
新人漫画家ならむしろポジティブに評価したいです。
構造はかっちり決まってるので、ネタさえ続けばいくらでも続けられるようになってると思います。
それが故に、この構造の中でどう変化をつけるのか、塩梅が逆に難しそう。
あまりにも変化が無いとワンパターンに陥りますし、
変化し過ぎると「いつもの」を期待してる人から不満が出そうで。
ゲッサンmini 2 (ゲッサン201307別冊付録)
2話目の段階でこう書いてたのですが、今回変化が。
『からかい上手の高木さん』 ゲッサンminiプラス4(ゲッサン201505別冊付録) p18 山本崇一朗
ひょっとしたら気づいている人少ないのかもしれませんが、
高木さんが明確にデレたのはこれが初なんですよね。
笑顔の描き方にぎこちなさを感じるのもそのせいでしょうか。
個人的にはデレ無しの方がいいんですが(そもそもコメディ部分が好きなんですけども)
客観的に見ればデレアリの方が人気は出るでしょうなぁ。
作者本人が新婚ホヤホヤでラブラブな感じをも描きたいとなっているのでは...
という一抹の不安もありますが、これ以降デレが増量することはあっても、
あくまで西片くん視点では付き合っている感じではない所には留めて欲しいところ。
そこが駆け引きの源泉になってますし。
『からかい上手の高木さん』 ゲッサンminiプラス4(ゲッサン201505別冊付録) p7-8 山本崇一朗
ただまー今回、もう一つの変化として
初めてモノローグが一切存在しなかったのですが、
西片くんの直接的な心理描写を排し、その辺をぼやかしたかったのかもしれません。
あと、たまに出てきますが西片くんからかうの下手ね...w
西片くんと高木さんの対比になってますが、
ボツネタを使えるという意味でもオイシイですなぁ。
夕鶴と青写真 泉尾アキ
★★★★★
前作『オセロ』は個人的にもひとつでしたが、
今回はデビュー作『バロメーター』並に良かったんじゃないでしょうか。
但し、方向性は全然違っていて、個人的には今回の作品の方が好みですけども。
どう好みかと言えば、このブログでさんざん書いている「PDCAサイクル」「メタ的」
の2つで説明は一応事足りるのですが。
(いーかげんこの「メタ的」ってのをちゃんとした言葉で書きたい)
『夕鶴と青写真』 ゲッサンminiプラス4(ゲッサン201505別冊付録) p34 泉尾アキ
俺がお前の演技を撮影して分析。
完璧な演技が出来るようサポートする。
この辺りはPDCAっぽいですね。まぁ単に試行錯誤って事なんでしょうけども。
そしてメタ的でもあります。作者と編集者の関係と相似形です。
『夕鶴と青写真』 ゲッサンminiプラス4(ゲッサン201505別冊付録) p35 泉尾アキ
人に見てもらわなきゃ、
意見も評価もしてもらえないし…
それじゃ上手くならない…
……
このシーンもまたメタ的。正に漫画にも当てはまることです。
中道:
自分はゲームを完成まで作ってない(ので)無責任な発言なんですけど、
モノを作る上では、漫画もゲームも人に向けて発信するものじゃないですか。
漫画でもそうなんですけど、部屋でずっと描いてるうちは中々やっぱり
みんなに認めてもらえるモノは描けないんですよ。
読んでもらって色んな意見を貰うのが一番の成長の糧になるじゃないですか。
その辺の気持ちを込めましたね。ジョージのセリフには。
『ボードゲーム数寄語り。第48回「放課後さいころ倶楽部第4巻・その1』 4:39 〜5:03
『放課後さいころ倶楽部』 ゲッサン2014年8月号 p524 (4巻 p12) 中道裕大
以前The Structure of ”After School Saicoro Club” #4でも引用した発言ですが、
実際漫画を描いて実感したからこそ、こういう内容をテーマに据えたんでしょう。
個人的にはこういう事を描かれると、作家に対しても期待せずにいられません。
もうひとつ素晴らしいと感じたのは、絵の躍動感。
『夕鶴と青写真』 ゲッサンminiプラス4(ゲッサン201505別冊付録) p35 泉尾アキ
特に、必ずしも格好いいとは言えないポーズをちゃんと描けているのが素晴らしいなと。
『BE BLUES!』 週刊少年サンデー2014年28号 p303 田中モトユキ
意図的に身体を傾けることによって「横に倒れる」のではなく、動きを閉じ込めることができる。
ひいては絵の躍動感に繋げることができます。
全編キャラがほぼ正面棒立ちだった『ジオと黄金と禁じられた魔法』は例外中の例外でしょうし、
スポーツやアクション漫画ではあまりそういう事は無いのですが、動きが少なくても成り立つ漫画では、
基礎から脱却できず単に立たせてるだけの漫画が多い気がします。
からかい上手の高木さん
以前こう書きましたが、
『進め! 漫画道!!』 田中モトユキ先生 第2回
まぁこういう事ですね。
今回は写真の話だったので、連続した動きはほぼありませんでしたが、
本格的にスポーツ漫画描こうと思うと、そこにまた一つハードルがあります。
ただ、スポーツ漫画をこれから描かないにしても、今回の話は糧になったのではないでしょうか。
話が長くなっているついでに書きますが、
動きのある絵って、ラジオ体操と共通点があると思うんですよね。
まぁ動画見てもらっても何も伝わらないでしょうけどw
運動領野は、体を動かすのに先立って、動きの計画、組み立てを行っています。その際に必要となるのが「動きのカード」です。「動きのカード」とは、運動領野に蓄積されている「体の動きのプログラム」のことです。
私たちが体を実際に動かす際、運動領野は、そのために必要なさまざまな関節、筋肉の動きを組み合わせた上で、全身に向けて指令を送っています。何かにつまづいたり、不意にバランスを崩したりした時、転ばないように態勢を立て直すためには、運動領野になるべくたくさんの動きのレパートリーが備わっているほど、さまざまな事態に対処できると考えられます。
ラジオ体操は、たとえば腰を大きく曲げたり、腕を大きく上に伸ばしたりといった「日常生活ではほとんど行われない体の動き」を多く含むため、運動領野にさまざまなレパートリーの体の動きのプログラム(動きのカード)が備わり、その結果として、不意の事態でも体をとっさにコントロールできることにつながるのです。
ためしてガッテン シリーズ運動で若返り[1] 生死を分ける!健康体操ホントの効用
実際のラジオ体操の効果はこのようなものですが、
漫画だと「動きのカード」があればあるほど、結果として色んな体勢も描くことができる...
という事になると考えていたんですよ。
『アオイホノオ』 ゲッサン2013年8月号 p430-431 (11巻p42-43) 島本和彦
まぁこういう事ですよね。
で、出来れば
『ベイビーステップ』 1巻 p105 勝木光
構えと溜めとインパクトの3つの姿勢をセットで身体に染み込ませれば完璧なんじゃないかなぁと。
『夕鶴と青写真』 ゲッサンminiプラス4(ゲッサン201505別冊付録) p39 泉尾アキ
読切のうち内容的にみると2本は当たりだったので、あともう一本って所でしょうか。
課題は受賞時点から言われている事ですが、絵の見栄えだけですね。
動きをちゃんと描けている事からみても分かるように、画力自体は間違いなくありますし。
地球入星管理官 小林安曇
★★★★☆
ちと厳しめですが。
「よく出来てるけど面白くはない」典型的なパターンというか。
前作『HERO ACTOR』はメタ的な構造が上手く嵌った感がありましたけど、
今回はそういう所もなく。(それ自体は何も悪い事ではありませんが)
面白さに欠けたのは意外性があまりなかった事でしょう。
『地球入星管理官』 ゲッサンminiプラス4(ゲッサン201505別冊付録) p83 小林安曇
それとは別に、途中で主人公のやりたい事が変わるのにも関わらず、
心境が変化する描写を省いてしまっている所が致命的。
いかにキャラの願いを読者の望む展開とをシンクロさせ、共感させるかで
達成感が出るか出ないかに差が出てくるということを考えれば、
一発殴る前に主人公の怒った表情を見せておくべきだったんじゃないかと。
逆にあえて表情を伏せてますからねぇ。
他にも演出的に勿体無いシーンがいくつかあって、
『地球入星管理官』 ゲッサンminiプラス4(ゲッサン201505別冊付録) p78 小林安曇
逮捕するのではなく、亡命申請しようとしていたといった辺りは意外性はあるのですが、
それが面白さに繋がるようにはなってません。
所長がわざわざ出てきた事も、裏取引の話が出た時「そこまで重大でもないのに」と気づかせた方が、
より意外性を出せたんじゃないかと。
読者は最初から疑ってかかってしまってる...ミスリードではなく、リードしていますし、
アバンで課長が出てきていたら、課長ではなく所長が出てきたって所が伏線に使えたかも。
あと、前作にも言えた事ですが、どうもセリフが多いですね。
文章ネームで添削してるからなんでしょうか?
さくらじゅん | @GRGR_ 文字の面白さと絵の面白さは違うから文章ネームはやめた方がいいと編集さんにもよく注意されていたので(しかし不安でやめられず…^_^;)やり方を変えて正解だったのかも?ですねー | link |
渡辺三沙紀
第57回 GET THE SUN新人賞 『Bダッシュ』 選外佳作
第61回 GET THE SUN新人賞 『ポルックス』 佳作
第75回 新人コミック大賞 『しょうたくんとお父さん』 佳作
ちと甘め。
『すきなところ』 ゲッサンminiプラス4(ゲッサン201505別冊付録) p190 渡辺三沙紀
キャラはそれなりに見栄えしますけど、背景の少ないこと少ないことw
完全に少女漫画になっていて、男性に対するフックがまるで無し。
作者の「すきなところ」を盛り込んだ作品という風にも取れるので、
まずは自分の好きな事をきちんと漫画に出せるかどうかという段階なのでしょう。
次は、男性でも共感できる事ですきなところを出せるかどうかでしょうか。
『ちろり』はいかにも女性な作品ですが、それでも共感できるところはありますし。
『すきなところ』 ゲッサンminiプラス4(ゲッサン201505別冊付録) p190 渡辺三沙紀
唯一意外性があって面白かったのは、ひったくりを投げるシーンですが、
どうやって投げてるのかサッパリ分からないというw
右下のコマは背負い投げ風、左のコマは大外刈り風になっています。
背負い投げならひったくりの背腹が逆になるはずですし、
大外だと右手は相手の左奥襟を掴むのでこれまたおかしい。
柔道技ではなく、相手の背中を引っ張って倒したと解釈するなら、
ひったくりの身体は左肩が地面に落ちるようにならんと不自然です。
以前晴十ナツメグ先生の『バッタになってしまった』でも前後矛盾する動きがありました。
これは偏見かもしれませんが、特に女流作家さんにこういう動きの矛盾が多く、
一コマ一コマの見栄えだけに注意が向き、動きを考慮するという発想自体が無い
んじゃないかなぁと考えています。
たまにデッサンのポーズをアトランダムにやってる作家さんを見かけますが、
それよりもパラパラ漫画を描いて、「体の動きのプログラム」がどうなっているかを
頭のイメージと結びつけて描いていった方がよっぽど力になるんじゃないかなぁ。
バトルやスポーツ漫画以外ではあまり動きは必要無いと思われるかもしれませんが、
萌えの重要な要素である仕草も動きのうちの一つですから。